市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

墜落した防災ヘリの残骸回収・・・懸念される原因究明と責任所在明確化及び再発防止策

2018-10-17 23:14:00 | オンブズマン活動
■搭乗員9人全員が死亡した群馬県の防災ヘリコプター「はるな」(全長17.1m、重さ5.4トン)の墜落事故をめぐり、群馬県は3548万8800円(税込み)を投じ、昨年の長野県消防防災ヘリ墜落事故でも機体を引き上げた航空事業会社の朝日航洋(東京都)の大型ヘリを使って現場から機体を10月15日に回収しました。機体はその日のうちに陸路で群馬ヘリポート(前橋市)の県防災航空隊格納庫に運ばれ、国土交通省運輸安全委員会や県警が調査し、事故原因の解明を進めるものと見られます。
 一方、当会では、いち早く墜落の原因を究明すべく、群馬県に10件の情報開示を求めていましたが、残念ながら秘密体質の行政だけに、開示されたのは今年の4月から修理や調整をしていた経緯を示す不適合報告書など4件のみで、肝心の運航管理関連情報については5件すべてが開示拒否されてしまい、1件が不存在とされました。

 この群馬県防災ヘリ墜落に関するブログ記事は次を参照ください。

〇2018年8月14日:防災ヘリ墜落事故の原因究明を裏付ける情報開示を群馬県に請求
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2726.html
〇2018年8月16日;【速報】防災ヘリ墜落事故で明らかになった群馬県の航空法違反のズサン管理で国交省から厳重指導
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2727.html
〇2018年8月24日:防災ヘリ墜落事故の原因究明を裏付ける情報開示請求に対し県が早くもよこした2か月の開示延長通知
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2736.html
〇2018年10月15日:防災ヘリ墜落事故の情報を2か月ぶりに一部分のみ開示してきた群馬県
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2780.html

■今回は、具合の悪かったエンジンの整備や調整に関する2件の不適合報告書を詳しく見て行きたいと思います。


 その前に、ヘリコプターの飛行特性とエンジンの仕組みについて、少しおさらいをしましょう。次のURLをご覧ください。
※参考URL:ヘリコプターが飛行する仕組みとは?↓
https://www.youtube.com/watch?v=NqOgC2Mycf0&t=4s
※参考URL:ヘリコプターのエンジンを理解する「ターボシャフトエンジン」↓
https://www.youtube.com/watch?v=CR0voZGgMis&pbjreload=10

 それでは、不適合報告書を見てみましょう。

*****エンジン サージ不適合報告書*****
<表紙>
                          H30.5.7 MESCO 計-30012
                        MHIエアロエンジンサービス㈱
            群馬防災殿
          東邦航空株式会社殿
      PT6T-3Dエンジン サージ不適合報告書

       MHI Aero Engine Service Co., Ltd.

<P1>
                          H30.5.7 MESCO 計-30012
   群馬防災殿 PT6T-3Dエンジン サージ不適合報告書
1.目的
 群馬防災殿 PT6T-30エンジンにおいて発生しましたサージ不適合につきまして、御報告致します。

2.対象エンジン
(1) ENG S/N:PCE-TG0006 (No.1 P/S:CP-PSTH0015,No.2 P/S:CP-PSTH0016, RGB:CP-GBTJ0008) ⇒当会注:「P/S」動力部(Power Section)。本エンジンは2基のタービンから構成。
(2) 使用時間:23:00/7,150:26 hr (TSO/TT) ⇒当会注:「TT」装備換を行った時の発動機の製造後の総使用時間(Total Time)、「TSO」装備換を行った時の管理に必要な前回オーバーホール後の使用時間 (Time Since Overhaul)。
(3) 前回作業: O/H(オーバーホール)
(4) 出荷日:H30.2.26

3.経 緯
(1) 東邦航空殿で当該エンジンを機体搭載後のグランド・ランにてNo.1P/Sのサージが発生しました。その後、ブリード・バルブを予備品と交換して不適合は解消したため、ブリード・バルブの機能不良と判断しました。 ⇒当会注:「ブリード・バルブ」抽気(air bleed)の為の弁のこと。コンプレッサの中段や後段に抽気弁を設け、低速回転のときに弁を自動的に開き,たまった圧縮空気の一部を大気中に放出させてエンジン・ストールを防ぐ。
(2) H30.3.31 機体運航を開始し、H30.4.6のフライト中にNo.1P/S及びNo.2P/Sの両エンジンでサージが発生しました。
(3) 故障探究にてブリード・バルブの閉位置の点検、その後、No.1P/Sのブリード・バルブの調整/変換、AFCUの減速調整/交換を実施しましたが事象は解消されませんでした。
(4) H30.4.10 群馬防災殿より現地での確認要請があり、H30.4.11 群馬防災殿へ出張致しました.

4.調 査
(1) 機上運転試験
 H30.4.11 機上にて以下の運転試験を行い、サージ発生状況を確怒しました。
 ① グランド・ランでNg:約85%、Nr:100%(両P/Sフルオープン)からNo.2P/Sをグランド・アイドルまで減速したところ、No.1P/S でサージが発生(パン・パン・パンと連続音)し、ITTが上昇(300℃以上)しました。⇒当会注:「Ng」Gas Generatorの回転数(rpm)、「Nr」Main Rotorの回転数(rpm)。
 ② 機上にてブリード・バルブを交換した際、バルブの閉位置を目視のみで確認し、専用治工具にて記録していなかったため、当社より持参した治工具にてNo.1P/Sのバルブの閉位置を点検しました。その結果、閉位置は規定値(Ng:90.2~92.3%, OAT:21℃)より高め(Ng:92.5%)にセッ卜されており、遅く閉じる側でありました。今回のサージ領域はNg:83~84%であり、バルブが速く閉まる側はサージが発生しにくい側となるため、影響はないと判断しました。 ⇒当会注:「OAT」外気温(Outside Air Temperature)。
 ③ No.1P/Sフルオープン(Ng:約96.5%)、No.2P/Sアイドル(Ng:約61.0%)でNo.1P/Sをアイドルへ減速時(スロットル操作ゆっくり)にNg:83~84%付近(ブリードバルブ:オープン状態)でサージが発生し、ITTが上昇(800℃超過)しました。 ⇒当会注:「ITT」タービン内部温度(Inter Turbine Temperature)。
 以上の結果より、エンジン内部の問題と考えられたため、エンジンを取り下し、工場へ総入することを決定しました。
(2) 社内運転試験
 H30.4.18 テストセルでNo.1P/SとNo.2P/Sに対して以下の運転試験を行うと共にサージ発生有無を確認しました。
 ① リード・バルブ動作確認
  作動規定値内でクローズしており、正常に動作しておりました。サージの発生はありませんでした。
 ・No.1P/S 実測値:Ng 91.7% 規定値:Ng 90.23~92.33% OAT:20.9℃
 ・No.2P/S 実測値:Ng 90.6% 規定値:Ng 89.60~91.70% OAT:16.5℃
 ②加速/減速試験
  エンジンの加速/減速試験を行いましたが、サージの発生はありませんでした。
 ③ 性能評価試験
  エンジンの性能試験を行いましたが、サージの発生はありませんでした。
  なお、エンジンの性能はマニュアル要求値を満足しておりました。
(3) 故障探求試験
 上記(2)項での運転試験後、以下の故障探求試験(機上再現試験)を行い、サージ発生有無を確認しました。
 以下の試験はブリード・エア・ケース取外し状態(ブリード・バルブのブリード・エアが吸入され易い状態〉で行いました。(添付1参照)
 ・No.2側Ng:約50%、No.1側Ng:約70%から約90%まで加速した結果、No.1P/Sでサージング発生。(5回中、1回)
 ・No.2側Ng:約70%、No.1側Ng:約70%から約90%まで加速した結果、No.1P/Sでサージンク発生。(5回中、1回)
 その他以下の試験を実施しましたが、No.1P/S、No.2P/Sの何れもサージは発生しませんでした。
 ・No.2側Ng:グランド・アイドル(約53~55%)、No.1側Ng:約70%から約90%まで加速。
 ・No.1側Ng:グランド・アイドル(約53~55%)、No.2側Ng:約70%から約90%まで加速。
 ・No.1側Ng:約50%、No.2側Ng:約70%から約90%まで加速。
 ・No.1側Ng:約70%、No.2側Ng:約70%から約00%まで加速。
(4) 分解検査
 No.1P/SとNo.2P/Sに対して、分解検査を行った結果、以下のとおりでした。
 ① ブリード・バルブの空気系統点検
  ブリード・バルブの開閉に使用する空気系統に異物/閉塞等の異常はありませんでした。
 ② コンプレッサから燃斜コントロールの空気系統点検
  コンプレッサ出口(P3)から燃料コントロール(AFCU)への空気系統に異物/閉塞等の異常はありませんでした。
 ③ パワータービンガバナー(PTG)、トルクコントロールユニット(TCU)から燃料コントロール(AFCU)への空気系統(Pgライン)に異物/閉塞等の異常はありませんでした。 ⇒当会注:「AFCU」自動燃料管制装置(Automatic Fuel Control Unit)。
 ④ Gas Generator Caseのボアスコープ点検にてディフューザー入口部に形状異常/閉塞等の異常はありませんでした。

5.エンジン・メーカー(P&WC社)見解
 エンジン・メーカーへ機上運転試験、社内運転試験及び故障探求試験における試験データ等の情報を提供し、本不適合の対応方法について情報を得ました。
(1) 空気通路面積
 メーカーよりPT6T-3DエンジンでGas Generator Caseを交換した際の標準的なCT VaneとPT Vaneの空気通路面積は、CT Vane:6.50in2、PT Vane:15.55in2で組み合わせているとの情報がありました。この情報は、マニュアル等に記載されていないものであり、今回初めて開示された情報です。⇒当会注:「CT Vane」コンプレッサタービン羽根、「PT Vane」パワータービン羽根。
(2) サージ対応方法
 当該エンジンのO/H時の性能検討においては、過去にGas Generator Caseを交換した実績が少なく、又、この部品を交換することで回転数と温度がどのくらい変化するか技術情報がない状況において、O/H作業でGas Generator Caseを交換したことから、CT VaneとPT Vaneを当該エンジンのメーカー製造時に近い値(No.1P/S:6.41 in2、No.2P/S:6.41 in2)のものを組込みました。その後、運転試験を行なった結果、マニュアルの要求を満足する性能が得られ、エンジンを出荷しておりますが、結果的に上記のメーカー標準値よりは狭いCT Vaneとなっておりました。
 今回のサージ対策として、CT Vaneの空気通路面積を広げることでサージを解消できるか確怒したところ、CT Vaneを広げることは、コンプレッサ圧力(P3)を減少する方向であり、有効であるが、排気温度が高くなり規定値を越える可能性があり注意が必要、との回答を得ました。 ⇒当会注:CT Vaneを広げると、コンプレッサ圧力も減ることがわかるが、なぜ排気温度が高くなるのかが理解できない。空気が圧縮されれば温度が上がるのでは。

6.考察
 サージ発生要因につきましては、以下のとおりと考えます。
(1) 当該エンジンは、前回出荷時(H23年)に、回転数と温度のどちらもO/H出荷規定値内ではあるものの、上限に近い値にて出荷となっておりました。これは部品の継続使用により性能余裕が減っていたためと脅えます。
(2) このため、今回のO/H作業にて、エンジン出力に影響する部品(Gas Generator Case, CT Vane, PT Vane)を交換し、回転数と温度の余絡を確保することと致しました。
(3) このときの性能検討にて、CT Vane,PT Vaneの空気通路面積を当該エンジン新製時に組込まれていた値に近いものを組込み、その後、当該エンジンの運転試験にて、マニュアルに規定される性能を満足していること、又、サージがないことを確認して出荷しております。
(4) 当該エンジンは、性能に影響する主要部品を交換したことで、コンプレッサの圧縮効率が回復しましたが、P3が規定値の上限側となりました。P3が高くなる要因としては、CT Vaneの空気通路面積が相対的に狭いことが考えられます。
(5) コンプレッサの空気流量/空気圧力に対してCT Vaneの空気通路面積が狭いと、空気流量が小さくなり、サージマージンが少ない側になります。一般的に、このような状態で外部からの空気の乱れ(エンジン入口に対する流入空気の流速や温度などの不均一)等を受けると、サージが起こり易くなります。
(6) 社内での故障探求試験にて、ブリード・エア・ケースを取外してサージが発生したのは、ブリード・バルブからの空気を再吸入したことによるものと考えます。この状態は、機上での運転試験でサージが発生した環境に近いものとだと考えます。

7.推定原因
 当該エンジンは、サージマージンが少ない側であるため、ブリード・バルブのブリード・エアを再吸入したことにより、サージが発生したと推定します。

8.対応処置
 今回のサージ不適合に対して、5.(2)項のメーカー回答に基づき、以下の処置を行います。
(1) CT Vaneの調整
 No.1P/SとNo.2P/S共にCT Vaneの空気通路面積を広げる方向に調整(交換)します。その後、エンジンの性能試験及び故障探求試験(4.(3)項)を行います。
(2) PT Vaneの調整
 上記(1)項にて、サージの再発及び/又は性能が満足しない場合は、PT Vaneの空気通路面積を広げる方向に:調整(交換)します。

9.スケジュール
 当該エンジンの復旧スケジュールは以下の通りです。
・・・表が不明瞭の為、表示できず・・・

=====添付1=====


通常試運転状態(ブリードエアーケース取付け)


故障探求試運転状態(ブリードエアーケース取外し)

=====エンジン不適合報告書=====
<P1>
                          H30.2.13 MESCO 計-29065A
   群馬防災殿 PT6T-3Dエンジン不適合報告書
1.目 的
 群馬防災殿PT6T-3Dエンジンの領収運転において発生しました不適合につきまして、御報告致します.

2.対象エンジン
(1) ENG S/N
 ・PCE-TG0008 (No.1 P/S:CP-PSTH0015, No.2 P/S:CP-PSTH0016, RGB:CP-GBTJ0008)
(2)使用時間/Cycle
 ・No.1 P/S 2,462:30/7,127:26Hr (8,021/25,653 cyc)
 ・No.2 P/S 2,462:30/7,127:26Hr (8,021/25,653 cyc)
 ・RGB   2,462:30/7,127:26Hr (-----/-----)
(3) 整備作業
 ・O/H(オーバーホール)

3.不適合内容
 H30.1.31 当該エンジンの領収運転において、以下の規定値外れが発生しました。
(1) 性能規定値外れ
 ①タービン温度(@970SHPのみ)
 項目      回転数(Ng) 回転数(Ng) タービン温度(TS) タービン温度(TS)
          (rpm)    余裕(rpm)   (℃)      オーバー(℃)
マニュアル規定値 38,500     ――     1,900       ――
No.1P/S実測値  37,600     -900    1,923      +23
No.2P/S実測値  37.540     -960    1,911      +11
 ②コンプレッサ圧力(@Ng37,800 rpm)
 項目     入口空気流量(W1) コンプレッサ圧力(P3) コンプレッサ圧力(P3)
           (pps)       (psla)         (psla)
No.1P/S規定値    7.00       111.8          
No.1P/S実測値    7.00       113.5          1.7
No.2P/S規定値    7.00       112.4          
No.2P/S実測値    7.00       114.0          1.6
 ③トルクメーター・インデックス表(Mo.1P/SとNo.2P/Sの差)
 項目        インデックス値     インデックス差
マニュアル規定値   1.0以上~9.0以内    3.5以内
No.1P/S実測値       1.6
No.2P/S実測値       7.5        5.9

4.エンジン性能検討(添付1参照)
 今回のO/H作業にあたり、前回出荷時の運転試験データを確認したところ、エンジン回転数/タービン温度のどちらも規定値内ではあるものの、上限に近い値にて出荷となっておりました。これは部品の継続使用による劣化が進んでいたためと考えます。
 そのため、今回のO/H作業にて、エンジン出力に影響する部品(Gas Generator Case, CT Vane, PT Vane)を交換(Exchange)し、エンジン回転数/タービン温度の余絡を確保することと致しました。

5.運転データ比較(添付2参照)
 前回出荷時と今回運転時の運転データを比較すると、前回出荷時よりエンジン回転数/タービン温度のどちらも規定値上限に対して余裕があり、エンジン性能は回復しておりました。
 今回の事象は、エンジンの性能を評価するポイント3箇所のうち、1箇所(@970SHP)がエンジン回転数は規定を満足しているものの、タービン温度が規定を超えておりました。それ以外の2箇所(@1100SHP, @1130 SHP)は、エンジン回転数もタービン温度も規定を満足しておりました。

6.検討及び処置
(1) 性能規定値外れ
 当該エンジンは、性能評価ポイント1箇所のみタービン温度が規定を超えておりますが、エンジン回転数は規定に対して十分な余裕(No.1P/S:900rpm, No.2P/S:960rpm)があります。
 今回のO/H作業にて、エンジンの性能は大幅に回復しましたが、性能回復のために主要部品を交換したことで、エンジンの性能特性が大きく変化したため、出カが低いポイント(@970SHP)でエンジン回転数は十分に余裕があるものの、タービン温度のみが規定を外れたと考 えます。
 これは、タービンノズル(PT Vane)の空気通路面積が狭い側にあるため、エンジン内の燃焼ガス温度が高い側に調整された形となっていることが原因と考えます。
 タービン温度を下げるため、以下のとおりタービンノズル(PT Vane)を空気通路面積の広いものに交換することで、エンジン回転数の余裕をタービン温度へ振り向け、タービン温度を規定値内に納めることができると考えます。
 また、空気通路面積を広げて回転数が上がることで上流側の圧縮空気の流速も速くなるため、コンブレッサ圧力が低くなりコンブレッサ圧力も規定値内に納めることができると考えます。
PT Vane   当該品  交換品  フローエリア  回転数   温度  回転数  温度
      フローエリア値 フローエリア値  変化量  変化量  変化量  余裕   余裕
       (in2)  (in2)   (in2)  (rpm)   (℃)  (rpm)   (℃)
No.1P/S   13.612  13.997  +0.385  +323    -27  -577    -4
                              (=-900+323) (=+23-27)
No.2P/S   13.642  13.989  +0.347  +291    -24  -669    -13
                             (=-960+291) (=+11-24)
(2) トルクメーター・インデックス(添付3参照)
 ア.履歴調査
  トルクメーター・インデックスに関係する部品について、今回O/H時と前回出荷時の部品履歴を調査したところ、今回のO/Hにて、いくつかの部品を新品に交換しておりました。また、今回運転時と前回出荷時のインデックス値を比較したところ、No.2P/Sに比べて、No.1P/Sのインデックス値に大きな変化が見られました。
 部品名称      今回O/H時       前回出荷時
         No.1P/S  No.2P/S   No.1P/S  No.2P/S
10.5 BRG      ×     ×     〇     ×
12.5 BRG      〇     ×     ×     ×
クラッチギヤ     〇     〇     ×     ×
No.13 BRG      〇     ×     ×     〇
No.14 BRG      〇     ×     〇     ×
ヘリカルキヤ    〇     ×     ×     ×
×:継続使用、〇:交換  ⇒当会注:「BRG」ベアリング(Bearing)
 インデックス    今回O/H時       前回出荷時
         No.1P/S  No.2P/S   No.1P/S  No.2P/S
 実測値      1.6     7.5     4.6     6.6
No.1/No.2差       5.9            2.0

 イ.分解調査
  トルクメーター・インデックスの値は、ギヤボックス内に組み込まれているヘリカルギヤのスラスト力に比例するものであり、今回の事象(No.1側とNo.2側のインデックス値の差)は、双方のヘリカルギヤの軸方向へのスラスト力に差があることが要因として考えられます。
 分解検査にて、ギヤボックスのアウトプットシャフトを手回しにて回転させ、双方のヘリカルギヤのスラスト力を確認したところ、No.2側に比ベてNo.1側のほうが軸方向へのスラスト力が弱い状態であり、差が見られました。
 また、双方のヘリカルギヤを入れ替えて手回ししたところ、No.2側に事象が移りました。更に、No.1側(新品)を在庫品(O/H品}と入れ替えて手回ししたとこる、双方のスラスト力は同程度でした。
 これらのヘリカルギヤについて歯面の表面粗さを計測したところ、No.1側:4.0μin、No.2側:4.9μin、在庫品:4.3μinであり、表面粗さに差が見られました。(添付4参照)
 各々のインデックス値はマニュアルの規定値(1.0以上~9.0以内)を満足しているが、双方のインデックス値の差(3.5以内)が規定値を満足していないことから、個々のヘリカルギヤは良好であるが、アウトプットシャフトと組み合わせた際にヘリカルギヤの個体差(歯菌の表面粗さ、歯当たり面積、歯面角度等)により、双方のスラストカが異なったため、インデックス値に差が生じたものと考えます。
 上記より、No.1側のヘリカルギヤを在庫品と入れ替えることで、双方のスラスト力がほぼ同じとなり、インデックス値の差が規定値を満足すると考えます。
 なお、分解検査にて、トルクメーター・インデックスに関係する部品(BRG,ギヤ,パッキング,シール等)の外観検査/寸法検査等を行いましたが、マニュアルに規定される要求を満足しておりました。

7.今後の予定
 今後、当診エンジンについて、以下の作業を実施致します。日程は別途、御調整させて頂きますようお願い致します。
(1) エンジン性能不足(タービン温度/コンブレッサ圧力)
 No.1P/S及びNo.2P/Sのタービンノズル(PT Vane)を空気通路面積の広いものに交換致します。
(2) トルクメーター・インデックス
 上記6.(2)項の調査結果より、No.1側のヘリカルギヤを在庫品(O/H品)と交換致します。

=====添付1=====
Gas Generator Case/CT Vane/PT Vane説明



Gas Generator Case


CT Vane


PT Vane

=====添付2(2/3)=====




No.1 P/S 性能グラフ比較(前回出荷時/今回運転時)

=====添付2(3/3)=====




No.2 P/S 性能グラフ比較(前回出荷時/今回運転時)

=====添付3=====
トルクシステム機構説明図


原理:ヘリカル・ギアは、歯が斜めのため、動力(トルク)を伝達するときに軸方向にも力を発生させる。この力を油圧で釣り合わせ、その油圧(トルク圧力)を計測することで間接的にトルクが計測できる。トルクインデックスは、力と油注の関係を示す数値で、数値が小さいほど油圧(トルク圧力)が小さい側であることを示す。

=====添付4=====
群馬防災向けPT 6T3D ヘリカルギア 表面粗さ計測結果









=====PRATT & WHITNEY CANADA=====
<COMPRESSOR STALLS (Surge)>
Compressor Stalls (Surge)
Possible Contributors & Maintenance
コンプレッサ・ストール(サージ現象)
想定される要因とメンテナンス


<COMPRESSOR STALL>
Definition
定義

In a turbine engine, compression is accomplished aerodynamically as the air passes through the stages of the compressor. The air flowing over the compressor airfoils can stall (the same as the air over the wing of an airplane can). When this airfoil stall occurs, the compressor is less effective thus allowing high-pressure air behind the stall, to escape forward through the compressor and out the inlet.
This occurs suddenly and is often quite audible as a loud bang.
Instruments may show high T5 in multiple stalls but, in single stalls, the event is often over so quickly that the instruments do not have time to respond.
タービンエンジンでは、空気が圧縮機の各段を通過する際に空気力学的に圧縮される。コンプレッサのブレード上を流れる空気は失速する可能性がある(飛行機の翼の上の空気と同じ)。 このブレードにストールが発生すると、圧縮機の効率が低下し、ストール箇所の後方にある高圧空気が圧縮機を通って前方に逃げる現象が起きる。これは突然発生し、多くの場合、大きな音として聞こえる。計器は複数のストール発生で高い温度を示すことがあるが、単一のストールでは、事象はしばしば非常に早すぎるため、計器が応答する時間がない。


P&WC Proprietary Information

<COMPRESSOR STALL CONTRIBUTORS>
Compressor FOD, cleanliness, erosion
<コンプレッサ・ストールの発生要因>
コンプレッサへの鳥の衝突など外部要因ダメージ(Foreign Object Damage :FOD)、コンプレッサ構成部品の摩耗、汚れ、腐食.



Issue
課題

Dirty, eroded or damaged blades reduce efficiency of compressor
Higher compressor stall risk
Poor fuel efficiency
Reduced ITT margins
汚れ、腐食、破損したブレードは圧縮機の効率を低下させる。
 ・圧縮機失速のリスクが高い
 ・燃費が悪い
 ・ITT(タービン排ガス温度)マージンの削減


Solutions
解決策

Performance Recovery Washes per EMM
Make it a point to inspect inlet for cleanliness following engine washes
May have to adjust wash schedule when using new environment friendly cleaning products

 ・Every Monday Matter(毎週月曜日毎)の機能回復洗浄
 ・エンジン洗浄後の吸気口の清浄度の点検実施
 ・環境に優しいクリーニング用新製品を使用する際には洗浄スケジュール調整が必要



Refer to Maintenance Manual for damage
損傷についてはメンテナンスマニュアル参照

Compressor inspection requirement
Min requirement 300 hrs/12 mth + every inlet screen removal.
Inspect more often if operating in highly erosive or impact laden environments
Compressor must be clean for proper inspection
コンプレッサ検査要件
 ・最小必要条件300時間/12カ月+すべてのインレットスクリーン除去
 ・高度に腐食され易い環境や影響の大きい環境で運転する場合は、より頻繁に点検すること
 ・適切な検査のためにコンプレッサーは清潔であること



Remove Rough (Feathered) Edges
エッジ部分が粗くなったら(毛羽立ったら)交換が必要


Compressor Blade Erosion
コンプレッサブレード腐食
COLD SECTION 2.6
**********

■エンジン・メーカーの資料に明記されている通り、ターボシャフトエンジンは、内部の汚れや摩耗、腐食などでタービンブレードの表面が粗くなると、エンジンのストール現象を発し易くなるため、小まめに洗浄し、点検する必要があるようです。

 果たして、群馬県や東邦航空ではどの程度きちんとメンテナンスをやっていたのでしょうか。老朽化した機材であれば尚のこそ、丁寧な保守作業が求められます。

 もうすぐ新しい機材を導入するから、あまり手を掛けずにおこう、などと、よもや考えてはいなかったでしょうが、事故の真相究明には、ぜひ予断を許さない公平、公明な立場で、第三者による調査を粛々と進めてほしいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考記事「墜落した防災ヘリの回収作業」
**********産経2018年10月15日 (月) 10:48配信
墜落の群馬県防災ヘリ 機体をつり上げて回収

群馬県の防災ヘリコプターが山中に墜落し、機体残骸を調べる県警の捜査員ら=9月11日午後1時13分、群馬県中之条町

梱包された墜落ヘリの機体=15日午前、長野県山ノ内町(糸魚川千尋撮影)

梱包には、機体のどの部分かラベルが貼られていた=15日、長野県山ノ内町(糸魚川千尋撮影)

梱包された機体をつり上げるヘリコプター=15日午前、群馬県中之条町

梱包された墜落ヘリコプターの機体を降ろすヘリ=15日午前、長野県山ノ内町(糸魚川千尋撮影)

トラックに積み込まれる墜落したヘリの機体=15日午前、群馬県中之条町
 群馬県の防災ヘリコプター「はるな」が8月に墜落し、搭乗員9人全員が死亡した事故で、県は15日、中之条町の横手山付近斜面に残されたままだった機体をつり上げて回収した。
 機体は険しい山中に墜落したため、回収に時間がかかっていた。県は降雪前の回収を目指し、委託業者が10月初旬から現場の木を伐採し、機体を切断して8個の梱包(こんぽう)に分けていた。
 午前8時30分ごろから梱包を大型ヘリでつり上げ、現場から南に約1・3キロ離れた駐車場に降ろし、トラック4台で群馬ヘリポート(前橋市)に運搬。今後、県警や運輸安全委員会が機体を詳しく調べる。
 県保安課の福島計之次長は「無事に機体を回収することができた。今後の調査で、一日も早く事故の原因が究明できることを期待している」と話した。

**********読売新聞2018年10月15日 11時49分
墜落したままの防災ヘリ、雪降る前に残骸を回収

ヘリを使って回収される、8月に墜落した群馬県防災ヘリ「はるな」の機体の残骸(15日午前8時53分、群馬県中之条町で、読売ヘリから)=守谷遼平撮影
 群馬県中之条町の横手山(2307メートル)の東麓に8月、県の防災ヘリ「はるな」が墜落し、乗員9人全員が死亡した事故で、県は15日午前、大型ヘリを使って現場の山中に残ったままになっていた事故機を回収した。
 機体の残骸は、水平方向約60メートルにわたって散乱していたため、事前にシートで8個に分けて梱包(こんぽう)県が委託した航空会社の大型ヘリが15日午前8時半過ぎから約30分かけ、現場からつり上げて、約1・3キロ離れた国道292号沿いの駐車場までピストン輸送した。機体は大型トラックで群馬ヘリポート(前橋市)の格納庫に運んで保管し、県警と国の運輸安全委員会が事故原因究明のため調べる。
 事故は8月10日午前に発生した。現場は急峻(きゅうしゅん)な斜面で木々も生い茂っていたことから、県は今月2日から周辺の樹木を伐採する作業を進め、降雪期前の回収を目指していた。

**********朝日新聞デジタル2018年10月15日12時58分
墜落した群馬の防災ヘリ、機体回収 原因解明に向け調査

墜落した群馬県の防災ヘリ「はるな」の機体の一部を搬送する大型ヘリ=2018年10月15日午前8時45分、群馬県中之条町、仙波理撮影

梱包されて回収された群馬県の防災ヘリ「はるな」の機体の一部を調べる運輸安全委の係官ら=2018年10月15日午前9時5分、群馬県中之条町、仙波理撮影

墜落現場から回収され、トラックに積み込まれる群馬県の防災ヘリ「はるな」の機体の一部=2018年10月15日午前9時19分、群馬県中之条町、仙波理撮影
 8月に墜落した群馬県の防災ヘリコプター「はるな」の機体が15日朝、墜落現場の同県中之条町の山林から回収された。事故では、山岳遭難に備えて視察中の消防隊員ら乗員9人全員が死亡した。今後、国の運輸安全委員会や県警などが事故原因の解明に向けて機体を調べる。  (森岡航平)

**********日経2018/10/15 13:22 (2018/10/15 13:23更新)
墜落防災ヘリの機体回収作業 群馬の9人死亡事故
 群馬県の防災ヘリコプター「はるな」が8月に墜落し、9人が死亡した事故で、県は15日、同県中之条町の山中に残されたままだった機体の回収作業を始めた。

梱包された機体を運ぶヘリコプター(15日午前、群馬県中之条町)=共同
 現場であらかじめ切断、梱包された機体を別のヘリでつり上げて約1.3キロ離れた場所まで搬送し、トラックに積み込んだ。同日午後に前橋市の群馬ヘリポートにある県防災航空隊の格納庫へ移し、その後に運輸安全委員会や県警が墜落時の状況や原因を詳しく調べる。
県消防保安課の福島計之次長は報道陣に「一日も早く事故原因が究明できることを期待している」と述べた。
 機体は険しい山中に墜落したため、回収に時間がかかっていた。県は降雪前の回収を目指し、委託業者が10月初旬から現場の木の伐採や機体の切断、梱包作業を進めていた。
防災ヘリは8月10日、群馬、長野、新潟県境の稜線(りょうせん)の視察に向かい墜落。搭乗していた県防災航空隊と吾妻広域消防本部の9人全員が死亡した。〔共同〕

**********NHK NEWS WEB 2018年10月15日 17時30分
9人死亡の防災ヘリ事故 機体を回収 原因解明へ 群馬
 ことし8月、群馬県中之条町の山中に県の防災ヘリコプターが墜落し9人が死亡した事故で、現場に残されていた機体が15日、別のヘリコプターによって回収されました。警察が回収した機体などを調べて業務上過失致死の疑いで捜査するほか、国の運輸安全委員会も事故原因の解明を進めることにしています。
 ことし8月、群馬県中之条町の山中で登山道の視察のため飛行していた群馬県の防災ヘリコプター「はるな」が墜落し、乗っていた県の防災航空隊の隊員と地元の消防署員合わせて9人が死亡しました。
 県は、現場に残された機体をシートで包むなどして回収作業に向けた準備を進めてきました。
 そして、15日午前8時半ごろから県の委託を受けた民間のヘリコプターが機体をつり上げて回収する作業を始めました。
 作業は複数回にわけて行われ、機体は1キロ余り離れた山あいの駐車場にいったん下ろされたあと、トラックに積み替えられ前橋市内の保管場所に運ばれました。
 この事故では、GPSの位置情報の記録などから、防災ヘリが低空飛行を繰り返したあとUターンするように急旋回し、山の斜面に衝突したと見られています。
 今後、警察は回収した機体や当時、乗員らが撮影していたカメラの映像などを詳しく調べて、業務上過失致死の疑いで捜査する方針です。
 また、国の運輸安全委員会も16日、改めて航空事故調査官を派遣して、機体の損傷状況などを確認し、事故原因の解明を進めることにしています。
 群馬県消防保安課の福島計之次長は「警察の捜査や国の運輸安全委員会の調査で、一日も早く事故原因を究明してほしい。遺族が要望している機体の公開については今後、検討していきたい」と話していました。

**********東京新聞2018年10月16日
県防災ヘリ回収 急斜面での作業 無事終了に安ど

回収した機体の一部を降ろすヘリコプター=中之条町で
 県の防災ヘリコプター「はるな」が八月、中之条町の山中に墜落し乗員九人が死亡した事故で、県は十五日、現場に残っていた機体を別のヘリで回収した。同町の渋峠駐車場では、梱包(こんぽう)した機体をトラックに積み込む作業が行われ、県職員らが作業の様子を見守った。 (市川勘太郎、菅原洋)
 午前八時二十五分ごろ、回収を委託されたヘリ運航会社「朝日航洋」(東京)のヘリが、墜落現場の調査飛行のため待機場所の志賀高原総合会館98(長野県山ノ内町)を離陸。作業が可能な天候だったことから同三十一分から回収作業を始めた。
 ヘリは現場と同駐車場を計六往復し、ブルーシートに包まれた大小八個の機体の一部を搬出。午前九時二分に降ろす作業を終え、作業員らがクレーン付きのトラック四台に積み込んだ。
 県消防保安課の福島計之次長は「現場で霧が出ていたので、状況を見ながら作業を進めた。無事に終わりほっとしている」と話した。
 委託業者は機体回収のため、十月一日に入山し、同二日から作業を開始。七人ほどの作業員が木の伐採や機体をブルーシートで梱包し、七日にすべての作業を終えていた。福島次長は機体回収で困難だったのは「現場の傾斜が三五度もあったこと」と振り返った。事故の遺族から機体の公開を求める声があることについては「(遺族からの)意向は聞いている。ただ、県警の捜査もあるので現状では何とも言えない」と話した。
 一方、前橋市下阿内町の群馬ヘリポートには十五日午後二時十分ごろ、機体の一部を複数に分けて積んだトラック四台が到着。県防災航空隊の格納庫へ順番に入り、作業員たちが約五十分かけてクレーンで荷台から一つずつ降ろした。

**********上毛新聞2018年11月16日一面
墜落機体を回収

 県防災ヘリコプター「はるな」が8月に中之条町の山中に墜落し、9人が死亡した事故で、県は15日、墜落現場に残されたままだった機体を回収した。機体は陸路で前橋市の群馬ヘリポートに運ばれた。今後、運輸安全委員会や県警が詳しい事故原因を調べる。〔関連記事21面〕
 大型ヘリが同日午前8時半ごろから、現場であらかじめ切断、梱包(こんぽう)された機体を搬出した=写真。ヘリが現場から約1・3キロ離れた駐車場まで運び、その後、4台のトラックがヘリポートに搬送した。
 県防災ヘリは8月10日午前、「ぐんま県境稜線(りょうせん)トレイル」の視察に向かい墜落。搭乗していた県防災航空隊と吾妻広域消防本部の9人全員が死亡した。

防災ヘリ 日誌搭載せず運搬 県、航空法違反疑い報告
 県防災ヘリコプター「はるな」の墜落事故で、事故機が当日、気体の整備状況を記録した航空日誌を搭載せずに運航していたことが15日、関係者への取材で分かった。操縦士が資格を持つことを示す技能証明書などを飛行中に所持していなかったことも判明。県は日誌の搭載や証明書の携帯を義務付けた航空法などに違反する疑いがあるとして、国に報告する。
 防災ヘリを巡っては、事前に国に提出した飛行計画と異なる運航を、昨年4月から事故機を含め約290回行っていたことが判明している。運航委託先の東邦航空(東京)とともに、改めて安全管理体制の不備が問われそうだ。
 航空日誌は突然の機体の故障など緊急事態に備えるため、航空法に基づき飛行中は機内に常備するよう義務付けられている。東邦航空は昨年11月、上野村で自社機が墜落事故を起こした際、航空日誌に機体の不具合などを記載しておらず、国土交通省から事業改善命令を受けている。
 関係者によると、航空日誌は事故後、県の事務所内で見つかった。技能証明書や操縦に必要な心身状態かを示す航空身体検査証明書、無線を使うのに必要な無線従事者免許証は当日の担当操縦士のカバンに遺されていたという。
 東邦航空は取材に「事実関係を調査しているが、現段階では何も答えられない」、県は「コメントできない」とした。

**********上毛新聞2018年11月16日社会面
墜落ヘリ回収 原因究明へ調査加速 遺族、機体公開を要望

 山岳救助の経験豊富な県防災航空隊員ら9人の命が失われた県防災ヘリコプター「はるな」の墜落事故から約2カ月。中之条町の山中に残されたままになっていた機体は15日、墜落現場から引き上げられ、群馬ヘリポート(前橋市)にある同隊の格納庫に移された。遺族からは改めて、原因究明を求める声や機体の公開を望む声が上がった。
 引き上げ作業は、気温2度と真冬を思わせる寒さの中で行われた。立ち会った県消防保安課の福島計之次長は「無事に回収することができた。今後は運輸安全委員会と警察による調査が行われる。一日も早く事故原因が究明できることを期待している」と述べた。一部の遺族から機体公開の要望が出ていることについては、「意向があるとは聞いているが、捜査などがある。現時点では何とも言えない」とした。
 事故当時、警察や消防の捜索拠点となった渋峠ホテル(長野県山ノ内町)の男性経営者(80)は作業を見つめ、「墜落時は指揮本部ができて大変だった。もう2カ月たったのかと思う」と振り返った。
 トラックに積まれた機体は午後2時すぎ、群馬ヘリポートに到着。荷台からクレーンでつり上げられ、県防災航空隊の格納庫に搬入された。国の運輸安全委員会や県警は今後、機体を詳しく調べるとともに、隊員らが身に着けていたカメラの映像などを分析し事故原因を調べる。
 亡くなった吾妻広域消防本部の消防隊員の親族の男性は「機体が回収されたからといって、つらい気持ちはなくならない。事故原因はすぐには判明せず長期戦になるだろうが、原因究明を求めていきたい」と話した。別の遺族の男性は機体について「見たいような見なくないような複雑な気持ち。見たいという遺族には公開しても良いのではないか。県には遺族の思いをくんだ対応をしてほしい」と要望した。
 ヘリは険しい山中に墜落したため、機体の回収に時間がかかっていた。県は降雪前の回収を目指し、委託業者が今月初めから周囲の木を伐採するなどして準備を進めてきた。

**********産経2018年9月25日 20:52
群馬・防災ヘリ墜落、飛行計画と異なるフライト293回 不適切な運航体制が常態化
 搭乗員9人が全員死亡した群馬県の防災ヘリコプター墜落事故で、県は25日、昨年4月から事故直前まで、ヘリが国に提出した飛行計画と異なるフライトを293回行っていたと明らかにした。県が業務委託していた東邦航空(東京都)社員らへの聴取などから判明。県は同日、国土交通省に報告した。
 県によると、不適切な飛行計画の提出は、同期間のフライトの約76%で行われていた。計画の作成、提出やヘリの到着通知などの運航管理業務は主に東邦航空社員3人が行っていた。
 このうち60代の男性社員は県防災航空隊が発足した平成9年から、「(ヘリが)途中経路上の離着陸場所でエンジンを停止しない場合は、当該場所を飛行計画に記入する必要はない」と誤認し続けていた。
 社員は事故当日の8月10日、ヘリが実際には群馬ヘリポート(前橋市)に到着していないのに、独断で国交省に対して到着通知を行っていた。
 県は、不適切な運航体制が常態化していたと認め、今後の防災航空体制のあり方を検討する委員会を設置。安全管理について全面的に検証する方針だ。
**********

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東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…アセス文書不存在審査請求で2年かけて県の言い分だけ認めた仰天審査会

2018-10-17 01:18:00 | 前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災
■東電グループの関電工を事業主体とする前橋バイオマス発電施設は、群馬県が定めた環境アセスメントを行わないまま、昨年末迄に事実上竣工し、本年2月から本格運転が開始され、4月24日には行政関係者を招いて完成披露式=開所式まで開かれてしまいました。この暴挙を食い止めようと、当会は地元住民団体とともに、発電施設に隣接する木質チップ製造施設に対する補助金交付の「差止」もしくは「処分の取消」を求める訴訟を2016年7月15日に提起し、10月26日(金)10時30分から前橋地裁で第11回弁論準備が開かれます。こうした時期に、突然、群馬県が関電工との間で環境アセス免除に関する密約を示す文書が存在しないと主張したことは「正しい」とする審査会の判断をもとに、群馬県知事から、住民の審査請求を棄却する旨の通知が送られてきました。その内容を見てみましょう。


*****審査請求裁決書*****PDF ⇒ 201810161srrp17.pdf
201810162srrp814.pdf
                         県セ第40-54号
                       平成30年10月12日
羽鳥 昌行 様
                   群馬県知事 大澤 正明
                   (県民センター)

  平成28年10月13日付け審査請求に対する裁決書謄本の送付について

 あなたから平成28年10月13日に提起のあった審査請求について、別添謄本のとおり裁決をしたので送付します。

              担当:生活文化スポーツ部県民センター
                 情報公関係
              電話:027-226-2271(ダイヤルイン)

=====裁決書=====
<P1>
            裁 決 書
                 審査請求人
                    住所 前橋市鼻毛石町1991-42
                    氏名 羽鳥 昌行
                 処 分 庁 群馬県知事

 審査請求人が平成28年10月13日に提起した処分庁による群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号)第18条第2項の規定に基づく公文書不存在決定に対する審査請求について、次のとおり裁決する。

            主   文
        本件審査請求を棄却する。

第1 事案の概要
1 公文書開示請求
 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「処分庁」という。)に対し、平成28年9月26日付けで、「前橋バイオマス発電に関し、環境アセスメントの実施の協議に関電工が来た日待及び協議内容。また、アセスメントを実施しなくても良いと報告した、報告手段と通告日、県通告者、関電工被通告者」の開示請求(以下「本件請求j という。)を行った。
2 処分庁の決定
 処分庁は、平成28年10月7日、本件請求に係る公文書について存在しないことを確認し、公文書不存在決定(以下「本件処分」という。)を行い、不存在の理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
 (不存在の理由)

<P2>
 環境影響評価は、「群馬県環境影響評価条例」及び「群馬県環境影響評価条例施行規則」に定める事業の種類ごとに、「群馬県環境影響評価条例」及び「群馬県環境影響評価条例施行規則」で定める規模要件等を勘案し、環境影響評価を行うべき事業に該当するか否かを事業者が自ら判断する制度となっている。したがって、環境影響評価に関する手続きの要否について、県に対して書類を提出することや協議することは必要とされていないことから、当該請求に係る文書を保有していないため。
3 審査請求
 請求人は、処分庁に対して、本件処分を不服として平成28年10月13日付けで審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
4 弁明書の送付
 処分庁は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項の規定に基づき、平成28年11月18日付けで弁明書を作成し、その副本を請求人に送付した。
5 反論書の提出
 請求人は、行政不服審査法第9条第3項において読み替えて適用する同法第30条第1項の規定に基づき、平成28年12月23日付け反論書を作成し、処分庁に提出した。
6 諮問
 処分庁は、条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成29年1月13日、本件審査請求事案の諮問を行った。
7 意見書の提出
 請求人は、条例第32条の規定に基づき、平成29年1月25日付け意見書を作成し、審査会に提出した(諮問庁の閲覧に供することは適切でない旨の意見が提出されており、諮問庁に対して写しの送付はされていない。)。
8 諮問に対する審査会の答申
 審査会は、処分庁に対して平成30年9月28日、本件処分は妥当であり取り消す必要はない旨を答申した。

第2 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求書における請求人の主張要旨
(1)不存在決定通知書で「環境影響評価を行うべき事業に該当するか否かを事業者が
自ら判断する制度となっているJという主張は、まさに自ら定めた条例や規則を自

<P3>
ら無視したかたちとなり、県民を愚弄する考え方である。
(2)(2)株式会社関電工(以下「関電工」という。)らが事業の事前報告として、平成27年6月下旬ごろに群馬県に提出した文書によると、「平成27年1月に群馬県と環境アセスメントの実施の有無について協議を開始し、同年3月に『実施しなくてよい』と群馬県から回答を受けた」と記載されている。群馬県環境影響評価条例で示された排ガス量が基準を超えたことで、第1種事業に該当する事業であるにも関わらず、環境アセスメントを回避したい関電工は、群馬県と協議を開始したことになる。
(3)これほどまでに重要なテーマに関する話し合いが、関電工と群馬県の聞で何の文書も交わさないで行われたこと自体、我々県民にとって驚きであり、あり得ないことである。
2 弁明書における処分庁の主張要旨
(1)請求内容から、対象公文書は、関電工が前橋市に建設を予定している前橋バイオマス発電施設の環境影響評価に関して、群馬県環境政策課(以下「環境政策課」という。)と関電工が行った協議についての公文書と判断したが、存在しない。不存在決定をした文書は、作成または取得していないものである。
(2)環境影響評価は、環境影響評価法や群馬県環境影響評価条例に定める規模要件に該当する対象事業を実施しようとする事業者が、同法や同条例に基づく環境配慮、手続を履行することで、自主的に環境保全上の適正な対応を行う制度である。したがって、対象事業ごとの規模要件の該当の有無についても、同条例及び同条例施行規則に定める事業の種類ごとに、同条例及び同評価を行うべき事業に該当するか否かを事業者が自ら判断する制度となっている。
   そのため、環境影響評価に関する手続きの要否について、県に対して書類を提出することや協議することは必要とされておらず、同条例及び同条例施行規則にもそのような規定はない。
(3)事業者から、訪問や電話等により、環境影響評価の対象事業や規模要件等に関する問合せがあった場合にも、通常は口頭による説明で解決するケースが多く、全ての問合せについて対応記録を作成しているものではない。
(4)平成26年度、関電工から環境政策課に対し、建設を予定している発電施設に関して、群馬県環境影響評価条例及び群馬県環境影響評価条例施行規則で定める規模要件等について問い合わせがあった模様であるが、これら問い合わせ内容については、口頭にて説明したのみであり、「環境影響評価を実施しなくてもよい」と伝達

<P4>
したわけではなく、また、その際の対応記録は作成しなかったものである。
3 反論書における請求人の主張要旨
(1)開示請求公文書の特定について
 ア 「無いものは無い」と言われてしまうと元も子もない。しかし、「無いことはないハズである」。それは群馬県が行っていることが、全て関電工の行動にリンクしているからである。したがって、公文書がないという事自体が、役人として問題であるとしか言えないのではないか。関電工の行動を時系列で追うと、平成27年1月に環境政策課と環境アセスメントの実施について協議を開始したと、事業計画書に明記されているからである。そじて、平成27年3月に環境政策課から、「環境アセスメントを実施しなくてよろしいJと回答をもらっている。
 イ これを受け、群馬県は、平成27年3月30日に群馬県環境影響評価条例の運用の変更を起案し翌31日に決裁されているが、その内容は、木質バイオマスに限っては、排ガス量を2割減で計算できるようにし、前橋バイオマス発電所が環境アセスメントを実施しなくても良いように画策している。しかも、この文書には担当者の印と日付印しか押印されておらず、協議状況、公印、施行年月日等何も記入されておらず、これが本当に公文書の体を成しているのか、後から作成された文書である可能性だって考えられる。そして、前出のように、関電工だけに、運用開始前に情報を提供し、どこにも審議、報告のないまま、ファイリングされた。したがって、この工作作業は、環境政策課と関電工しか知らない話である。
(2)不存在の解釈について
 弁明書によると、「公文書を保有していない」ことの類型のうち、「作成又は取得していない」という類型に該当しているから、非開示の決定になったことのようであるが、環境アセスメントを実施するかどうかの、重要なテーマで何度かにわたり協議をしているのだから、役人のメモだって重要な政策判断になるはずであるが、「公文書に該当しない」という類型には、一切触れていない。メモはあるのかどうか、あっても出さないのか、はっきりとさせるべきである。
(3)公文書が存在しない理由に対する意見について
 ア 群馬県環境影響評価条例及び群馬県環境影響評価条例施行規則のどこを見ても、環境影響評価の実施について、事業者自らがその要否も含め、自主的に判断できる制度である旨は書かれていない。同条例第3条には、「群馬県の責務」が書かれている。群馬県は、この責務を全く果たしておらず、果たそうともせず、環境影響評価の重要性の認識が欠知している。

<P5>
 イ ここで、群馬県環境基本条例の基本理念を確認しておく。それは、第3条に書かれている。そして、第4条には、群馬県の責務が書かれている。つまり、同条例の3条、4条を見ても、実施対象事業者が、環境影響評価を実施しないことは有り得ず、その指導を行っている群馬県には重大な過失がある。さらに、同条例の6条には事業者の責務が書かれている。したがって、前橋バイオマス発電株式会社は、群馬県環境基本条例の基本理念を無視し、第6条で定めた事業者の責務を全く果たしていない。
 ウ 群馬県環境影響評価条例施行規則の別表第1によると、「6 工場又は事業場の新設又は増設の事業については、・・・第1種事業の規模要件については、総排出ガス量・・が4万立方メートル以上・・」とはっきりと明記されている。この時点で、関電工が、環境アセスメントの実施の必要性について群馬県と協議をすること自体が非常に不自然であり、前橋バイオマス発電の排ガス量は、環境政策課からのメールでの回答によると42,000m3/hであり、第1種事業となることは明白である。
 エ 群馬県環境影響評価条例の第3章には、「第一種事業に係る環境影響評価に関する手続等」が書かれ、「方法書」の作成義務や、環境影響評価の実施義務が明文化されている。この条文のどこをとっても、事業者が自ら判断できる制度にはなっておらず、群馬県と実施事業者の癒着そのものである。
 オ 「環境アセスメント制度のあらまし(環境省)」を見ると、環境影響評価法と条例との関係が示されている。そこには、「条例で環境アセスメントの義務付けができる」とはっきり明記されており、これを見ても、事業者自らの判断に委ねるということは、環境影響評価法に違反している。
 カ 関電工と群馬県との関係について、癒着ではないかという疑問について整理しておく。まず、平成27年6月下旬頃に群馬県に提出された事業計画の事前資料によると、関電工は、「平成27年1月に群馬県と環境アセスメントの実施の必要性について協議を開始した」と書かれている。そして、同年3月に群馬県より「環境アセスメントは実施しなくてよい」と回答を得ている。また、弁明書には、「平成26年度、関電工から環境政策課に対し、建設を予定している発電施設に関して、群馬県環境影響評価条例及び群馬県環境影響評価条例施行規則で定める規模要件等」について問い合わせがあった模様であるが、これら問い合わせ内容については、口頭にて説明したのみであり、「環境影響評価を実施しなくてもよい」と伝達したわけで、なく、また、その際の対応記録は作成していなかったものであ

<P6>
る。」とあり、群馬県は白を切っているが、ここでいくつか疑問が起こる。
(ア)なぜ関電工は、条例により環境アセスメントを実施しなければならないのに群馬県と協議したのか。その協議はいつ、どのような内容だったのか。
(イ)群馬県は、結論を出すのに、どうして2ヶ月もかかったのか。
(ウ)群馬県は関電工より「問い合わせがあった模様」と他人事のように言い、また、「口頭で説明した」とあるが、だれが、いつ、どのような内容を説明したのか全く分からない。
(エ)環境アセスメントの実施については、事業者の自主的判断でよいとするものを、運用まで変更し、関電工を守ろうとしたのか。このようなことは、記録メモや口頭でのやり取り全てをまとめ、公開されるべきである。
4 .審査会での口頭説明における処分庁の主張要旨
 処分庁と関電工との間で、以下の応対があったとのことである。
(1)平成27年の1月頃に関電工の担当者とその上司が2名で来課して、県の担当者と係長の2名が対応した。
   やりとりの内容は、事業の概要を聞いて、その当時の県の条例アセスメント制度の内容及び、関電工の事業内容は条例施行規則の別表第1のどこに該当し、規模要件がどうなっているのかということを説明した。
(2)未利用の木質バイオマスを燃料とする場合、排ガス量の計算にあたり、乾量基準含水率を20%として計算できる、とする運用が3月31日に決裁され、1月からのやりとりを踏まえて、県の担当者が関電工の担当者に電話で連絡を取り、運用の内容を伝えた。なお、事業の内容に関してアセスメントの実施の要否等の判断は県で、は行っていない。
(3)時期についての記憶は確かではないが、関電工から前橋バイオマス発電施設に係る資料を、県の担当者が参考として受け取った可能性がある。
   受け取った時期については平成27年1月の来課時かもじれないし、そうではないかもしれず、記憶が暖昧である。
 メールで資料を受け取ったという可能性もあるが、現在、メールも資料も存在していない。また、担当者にははっきりとした時期や手段についての詳細な記憶はなく、資料がメールへのPDFなどの添付によるものか、直接受け取ったのかについては、定かではない。なお、通常の事務としては、個人のメールボックスの容量が一杯になると削除することもあるので、メールで受け取っていたとしても、その後に削除した可能性がある。

<P8>
(4)運用に基づいて関電工が計算した結果、排出ガス量は3万9千m3/時余りであり、条例アセスメントの規模要件に該当しないということを県が知ったのは、詳細は定かではないが、平成27年4月以降に関電工の担当者から電話連絡をいただいた時である。
(5)上記(1)、(2)、(3)、(4)、以外に、関電工と協議なり情報のやりとりがあったということについて、担当者には詳細な記憶はない。関電工が他の所属を訪ねた折に、環境政策課に立ち寄ったということもあったようであるが時期ははっきりしない。あるいは、電話をいただいたこともあったかもしれないとのことだが、時期、回数等についての記憶は定かではない。
   話の内容も定かではないが、事業概要についての話をしたのではないかとのことである。
(6)県と関電工の担当者とのやりとりについて、県の担当者が個人のノート等にメモ書きした可能性はあるが、ノート等は既に廃棄をしてしまい、内容等を含めて確認することはできない。
(7)一般的に環境アセスメントについての問い合わせがあった時、書類を残す場合と残さない場合の違いは、当時の判断がどうだったかは分からないが、現状では、条例施行規則別表第1だけでただちに判断できずに確認や検討した上で対応する必要がある場合など、制度の案内だけでは対応できないような案件があった場合に、今後の参考とするためにメモを残すようにしている。
(8)運用に関して、各都道府県・関係市あてにアンケートを行ったのは平成26年の7月だが、木質バイオマス発電に係る条例アセスメントの適用についての検討は、アンケートを行う前から始めており、関電工の来課以前から検討は開始していたものである。
   運用が決まってから、県の担当者が関電工の担当者に伝えたが、これは、その時期に相談があった関電工に伝えたということである。

第3 裁決の理由
1 審査会の判断
 本件審査請求に対する審査会の判断(平成30年9月28日付け答申第205号)は次のとおりである。なお、以下において実施機関とは処分庁のことをいう。
(1)争点(本件請求に係る公文書を不存在とした決定について)
 ア 本件請求に係る公文書が、関電工が前橋市に建設を予定している前橋バイオマ

<P7>
ス発電施設の環境影響評価に関して、環境政策課と関電工が行った協議についての公文書であることについて、双方に争いはない。
   請求人は、これほどまでに重要なテーマに関する話し合いが、関電工と群馬県の聞で何の文書も交わさないで行われたことはあり得ないことである等と主張している。一方、実施機関は、本件請求に係る公文書を作成文は取得していないと主張しているので、以下、本件請求に係る公文書が実施機関における事務処理において作成又は取得されたのか否かを検討する。
 イ 本件請求に係る公文書が作成文は取得されたかの検討
(ア)本件請求に係る公文書が作成又は取得されたとすれば、関電工の木質バイオマス発電事業の実施に関して実施機関と関電工が協議又は報告を行ったことが前提となる。
   実施機関の説明によれば、前記第4 4(1)から(5)のとおり、関電工の木質バイオマス発電事業の実施に関して実施機関と関電工の担当者の間で接触が複数回行われたとのことであるが、公文書は作成又は取得していないとのことである。
(イ)前記第4 2(2)の実施機関の説明によれば、環境影響評価の要否を判断するに際して、群馬県環境影響評価条例及び同条例施行規則では、事業者が県に対して協議することや書類を提出ずることは必要とされていないとのことである。また、同条例では、県が環境影響評価の要否を判断することを求められてはおらず、必要な手続きではないことから文書も作成されていないとのことである。
   群馬県環境影響評価条例及び同条例施行規則を見分すると、県が事業者から資料等の提出を受けてその要否を判断すると読み取ることはできないから、実施機関の説明に不合理な点はない。
(ウ)請求人は、群馬県は、群馬県環境影響評価条例の運用の変更を起案し、木質バイオマス発電事業に限っては、排出ガス量を2割減で計算できるようにし、前橋バイオマス発電所が環境アセスメントを実施しなくても良いように画策している等と主張するが、実施機関の説明では、水蒸気量の算定に関する運用を定めるに当たっては、関電工から事業実施についての相談が行われた平成27年1月より前の平成26年7月に全国の都道府県に対し文書による照会を行い検討を開始したとのことである。審査会としても環境政策課においてこの全国への照会に関する文書の検証を行い、そういった状況にあったことを確認した。

<P9>
このことから、関電工からの事業実施についての相談は、運用を定めるための端緒となったと認めることはできず、その内容を記録に残す必要性は低かったとする実施機関の説明に不合理な点はない。
 ウ メモについて
   請求人は「メモはあるのかどうか、あっても出さないのか、はっきりとさせる
べきである」と主張する。
   このことに関して、実施機関の口頭説明によれば、事業者から、環境影響評価の対象事業や規模要件等に関する問合せがあった場合には、口頭による規則の説明だけでは済まないような案件など、後の参考となる事案の場合には、メモを残すようにしているとのことである。今回の案件について個人で使用していたノート等にメモを作成した可能性はあるが、メモを記載した可能性があるノート等は既に廃棄をしてしまったとのことである。
   廃棄が行われたことに関しては、個人のノート等に作成されたメモであることや、当時の担当者が既に他部署に異動していることを考慮すれば、メモが記載されたノート等を廃棄したとの実施機関の説明に不合理な点はない。
 エ 審査会の調査について
   本件審査請求を受け、当審査会は、実施機関に対して条例第30条第4項に基づく調査を実施し、本件請求に係る公文書が作成又は取得されたのか否かを確認するため、環境政策課において公文書の確認を行ったが、本件請求に係る公文書として改めて特定すべき文書の存在は認められなかった。したがって、本件請求に係る実施機関が作成又は取得した公文書が発見できない以上、当審査会としては実施機関が当該文書を作成文は取得していると判断することはできない。
 オ 以上のことから、本件請求に係る公文書を不存在とした実施機関の決定に、特
段の不合理な点は認められない。
(2)結論
   以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
   また、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。
2 当庁の判断及び結論
 当庁の判断の理由は、前記1の審査会の判断と同じであることから、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

<P10>
                     平成30年10月11日

                     審査庁 群馬県知事 大澤 正明

<P11>
            教   示
1 この裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以(訴訟において群馬県を代表する者は群馬県知事となります。)、裁決の取消しの訴えを提起することができます。
  ただし、この裁決の取消しの訴えにおいては、不服申立ての対象とした処分が違法であることを理由として、裁決の取消しを求めることはできません。
  処分の違法を理由とする場合は、この裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に、群馬県を被告として(訴訟において群馬県を代表する者は群馬県知事となります。)、処分の取消しの訴えを提起することができます。
2 ただし、上記の期間が経過する前に、この裁決があった日の翌日から起算して1年を経過した場合は、裁決の取消しの訴えや処分の取消しの訴えを提起することはできなくなります。なお、正当な理由があるときは、上記の期間やこの裁決があった日の翌日から起算して1年を経過した後で、あっても裁決の取消しの訴えや処分の取消しの訴えを提起することが認められる場合があります。

<P12>
この裁決書の謄本は原本と相違ないことを証明する。

平成30年10月12日

                      群馬県知事 大澤 正明
*********

■今回の裁決書に先立ち、群馬県公文書開示審査会から処分庁に対して出された答申内容は次のとおりです。
※PDF ⇒ 20180928_asses_jouhou_fusonzai_sinsakai_toshin.pdf

 群馬県のHPで、公文書開示審査会の会議の開催状況をチェックしましたが、9月28日の会議で答申案が採択されたことは、まだ記事として載っていないようです。
※参考URL「群馬県公文書開示審査会」↓
http://www.pref.gunma.jp/07/c0110028.html

 現在の群馬県公文書開示審査会の構成メンバーは、次のとおりです。本件を審査したのは第二b会です。

<委員>
人数 6人
任期 2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

<氏名等>
公文書開示審査会委員名簿一覧
氏名       職業・役職          担当
青木 美穂子   群馬県スクールカウンセラー  (第二部会委員)
久保田 寿栄   弁護士(会長)        (第一部会長)
宮武 優     弁護士            (第一部会委員)
村上 大樹    弁護士(職務代理者)     (第二部会長)
茂木 三枝    中小企業診断士        (第一部会委員)
山崎 由恵    弁護士            (第二部会委員)
※ 五十音順 敬称略 (男性3名、女性3名)
(※注):「崎」は「山へんに竒」だが、機種依存文字のため「崎」と表記
(任期:平成28年10月15日~平成30年10月14日)

■この公文書開示審査会が2年間を費やしてたどり着いた結論というのが、次の内容だというのですから、なんともはや。

「公文書が作成又は取得されたとすれば、木質バイオマス発電事業の実施に関して実施機関と関電工が協議又は報告を行ったことが前提となる。」⇒この大前提に争いは無い。

「実施機関の説明によれば、事業実施に関して実施機関と関電工の担当者の間で接触が複数回行われたが、公文書は作成又は取得していないとのことである。」⇒関電工にも確認したのか??

「実施機関の説明によれば、環境影響評価の要否を判断するに際して、群馬県環境影響評価条例及び同条例施行規則では、事業者が県に対して協議することや書類を提出ずることは必要とされていないとのことである。」⇒いったい何のための条例なのだ??

「また、同条例では、県が環境影響評価の要否を判断することを求められてはおらず、必要な手続きではないことから文書も作成されていないとのことである。」⇒県が要否を判断せずに誰がする??

「群馬県環境影響評価条例及び同条例施行規則を見分すると、県が事業者から資料等の提出を受けてその要否を判断すると読み取ることはできないから、実施機関の説明に不合理な点はない。」⇒環境アセスの要否の判断が事業者なら、アセス条例は無用の長物を意味する。

「実施機関の説明では、水蒸気量の算定に関する運用を定めるに当たっては、関電工から事業実施についての相談が行われた平成27年1月より前の平成26年7月に全国の都道府県に対し文書による照会を行い検討を開始したとのことである。審査会としても環境政策課においてこの全国への照会に関する文書の検証を行い、そういった状況にあったことを確認した。」⇒この照会は水蒸気量とは無関係なのにどうやって確認できたのか??

「このことから、関電工からの事業実施についての相談は、運用を定めるための端緒となったと認めることはできず、その内容を記録に残す必要性は低かったとする実施機関の説明に不合理な点はない。」⇒運用について関電工のみに伝えた事実については、わざと棚上げ。

「メモについて、実施機関の口頭説明によれば、事業者から、環境影響評価の対象事業や規模要件等に関する問合せがあった場合には、口頭による規則の説明だけでは済まないような案件など、後の参考となる事案の場合には、メモを残すようにしているとのことである。」⇒行政の都合の良しあしでメモを廃棄!!

「個人で使用していたノート等にメモを作成した可能性はあるが、メモを記載した可能性があるノート等は既に廃棄をしてしまったとのことである。」⇒証拠隠滅の追認!!

「個人のノート等に作成されたメモであり、当時の担当者が既に他部署に異動していることを考慮すれば、メモが記載されたノート等を廃棄したとの実施機関の説明に不合理な点はない。」⇒笑止千万!!

「環境政策課において公文書の確認を行ったが、本件請求に係る公文書として改めて特定すべき文書の存在は認められなかった。」⇒証拠隠滅を追認!!

「公文書が発見できない以上、実施機関が当該文書を作成文は取得していると判断することはできない。」⇒行政べったりの審査会!!

■アセス条例の特例運用がなされ、その裨益に預かった事業者(関電工ら)とのやりとりに関する情報が存在しなければならないのに、「廃棄したから無い」とする役所の言い分をそのまま鵜吞みにして、「無いものは無い」という判断を中立の立場の審査会がしたこと自体、既に審査会の存在意義を自己否定したことを意味します。

 これでは行政の事務事業の正当性を検証する術がありません。こうした行政システムがまかり取っているのが現在の実態です。こんなひどい組織に税金を払わされているかと思うと、情けなくなります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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