■保守王国群馬県が生んだ自民党の上野宏史・厚生労働政務官が秘書に激怒して発した言葉が録音され、これをネタに外国人労働者の在留資格認定証明書の交付をめぐる口利き疑惑が8月20日に週刊文春により報じられてから9日目の8月28日、上野氏は政務官を辞任しました。同日公表したコメントでは「法令(あっせん利得処罰法)に反する口利きをした事実はない。報道は大変遺憾だ」とした上で、辞任の理由を「政務官の立場にあることで誤解を招きかねない」などと説明しました。この間、直接説明する記者会見などは一切開かれず、結果として説明責任を果たさないまま政務官を辞任しました。これで事が済まされてはますます政治とカネの構図が蔓延ってしまいます。呆れた辞任劇を報道記事から見てみましょう。
**********上毛新聞一面2019年8月29日
上野政務官が辞任 口利き疑惑「誤解招きかねない」
自民党県連所属で厚生労働政務官の上野宏史衆院議員(比例南関東)は28日、外国人労働者の在留資格を巡る週刊文春の口利き疑惑報道を受け、政務官を辞任した。上野氏が辞表を提出し、政府が持ち回り閣議で決定した。自民党幹部によると、9月の内閣改造まで後任は置かない方向だ。上野氏は事務所を通じてコメントを発表し、違法な口利きをした事実はないとした上で「誤解を招きかねないと」して辞任を決意したと説明した。【関連記事2面】
野党は、事実関係の説明が不十分だと批判。安倍晋三首相の任命責任を含め、秋の臨時国会で追及する構えだ。
上野氏はコメントで、週刊文春の報道に関し「法令に反する口利きや、あっせん利得処罰法に触れる事実はない」と強調。辞任理由は「政務官の立場にあることで誤解を招きかねないとの指摘もある」「体調を崩し役所に出ることがままならない」とした。
厚労省関係者によると、上野氏は8月16日を最後に登庁していなかった。
週刊文春によると、上野氏は東京都内の人材派遣会社が関わった在留資格認定証明書を迅速に交付するよう法務省に働き掛ける見返として、同社から現金を受け取ろうと計画したとされる。
上野氏は外国人労働者の技能実習を巡り、業界団体や地域の要望を聞く厚労省内の検討チームのトップを務めていた。
県連の星名建市幹事長は「残念の一言に尽きる。辞任本人の判断だろう。県連にも説明はなく、今後の推移を見守りたい」と述べた。根本匠厚労相は辞任を受け「政治活動については一人一人の政治家が国民に不信を持たれることのないように常に自らが襟を正し、説明責任を果たすべきもの」とのコメントを出した。
上野氏は衆院当選2回、参院当選1回。2010年に参院選比例代表で旧みんなの党から初当選し、12年衆院選で日本維新の会から群馬1区へ出馬し当選。14年は無所属で1区に出馬したが、落選。17年に比例代表南関東ブロック単独候補として自民が擁立し、当選した。18年10月から厚労政務官を務めていた。義父は上野公成元官房副長官。
**********上毛新聞二面2019年8月29日
野党 上野氏に説明要求 口利き疑惑首相責任も追及
野党は28日、外国人労働者の在留資格を巡る口利き疑惑を週刊誌で報じられた自民党の上野宏史厚生労働政務官の辞任に関し、上野氏自ら事実関係を説明するように求めた。安倍晋三首相の任命責任も含めて徹底的に追及する方針で、速やかな臨時国会の開催が必要だと訴えていく。
立憲民主党の長妻昭代表代行は「なぜ辞任なのか判然としない。記者会見を開いて説明してもらう必要がある。徹底的にうみを出し切らなければならない」と国会内で記者団に語った。逢坂誠二政調会長は取材に「事実をはっきりさせないで、ただ辞めればいいというものではない」と述べ、上野氏の対応は不十分だと批判した。
国民民主党の玉木雄一郎代表は党本部で記者団に「辞任は当然で遅すぎる」と言明。疑惑解明へ秋の臨時国会を前倒しするよう与党に要求する考えを明らかにした。
共産党の小池晃書記局長は取材に「疑惑が全て事実なら、政務官辞任にとどまらず議員辞職すべきだ。自民党の対応も問われる」と強調した。
日本維新の会の馬場伸幸幹事長は「早期に自ら釈明すべきだ。政務官を辞めるのはその後だ」と指摘した。社会党の吉川元・幹事長は「あっせん利得の可能性がある。何があったのか、本人が説明しないといけない重大な問題だ」と語った。
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「違法口利きない」
○上野氏>>>>>
上野宏史厚生労働政務官による外国人在留資格の申請を巡る口利き疑惑は、先週発売の週刊文春が報じた。人材派遣会社の申請が認められるよう法務省に問い合わせ、見返りに金銭を得ようとしたとの内容だ。上野氏はこの報道後、公の場に姿を見せず、辞任した28日に「法令に反する口利きをした事実はない」とコメントを出しただけだった。識者からは対応を疑問視する声も上がる。
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「金銭求めようと」
○週刊文春>>>>>
週刊文春によると、東京都内の人材派遣会社が今年2~6月に外国人の187人分の在留資格を認定するよう申請。上野氏側は、速やかに申請が認められるよう法務省外局の出入国在留管理局に問い合わせ、その見返りに金銭を求めようとした疑いがあるとしている。
文春が根拠としたのは、6月19日に録音された上野氏と秘書が交わしたとされる会話の内容だ。上野氏とされる男性は、申請のうち13件の許可が出たと知ると、「じゃあ26万戻ってきてください」「(人材派遣会社から)お金をもらう案件になっている」と秘書とみられる男性に指示。これに対し、秘書とみられる男性が「あっせん利得罪になる」と抵抗する会話が残っていた。
日大の岩井泰信教授(政治学)は「(報じられた内容だけでは)あっせん利得に当たると判断するのは難しい」としながら「音声内容は国会議員としてふさわしくない。政務官を辞任したとしても疑惑は残る。自ら事実関係を明らかにし、国民への説明責任を果たすべきだ」と批判した。
**********毎日新聞2019年8月29日 14時14分(最終更新 8月29日 15時15分)
政務官辞任の上野氏について公明・北側副代表「記者会見すべきだ」
公明党の北側一雄副代表は29日の記者会見で、自民党の上野宏史厚生労働政務官が辞任したことについて「(本人が)会見の場にきちんと出てきて説明責任を果たすべきだ」と述べた。辞任は、週刊文春で外国人労働者の在留資格を巡る口利き疑惑を報じられたことを受けたもの。上野氏は「法令に反する口利きをした事実はない」と疑惑を否定するなどのコメントを発表したが、公の場での説明はしていない。
一方、菅義偉官房長官は会見で「政治家は、国民に不信をもたれることのないよう、常に自らの襟を正し、説明責任を果たすべきだ」と述べたが、上野氏が説明責任を果たしているかどうかの判断は避けた。【村尾哲、高橋克哉】
**********朝日新聞2019年08月29日23時39分JST
口利き疑惑の上野宏史厚労政務官 辞任は「誤解招かぬため」
「法令に反する口利きをした事実はない。報道は大変遺憾だ」とした上で、辞任の理由を「政務官の立場にあることで誤解を招きかねない」などと説明している。
↑口利き疑惑の上野厚労政務官 辞任は「誤解招かぬため」↑
自民党の上野宏史・厚生労働政務官(48)=衆院南関東ブロック=は28日、外国人労働者の在留資格認定証明書の交付をめぐる週刊文春の口利き疑惑報道を受け、政務官を辞任した。同日公表したコメントでは「法令(あっせん利得処罰法)に反する口利きをした事実はない。報道は大変遺憾だ」とした上で、辞任の理由を「政務官の立場にあることで誤解を招きかねない」などと説明した。
上野氏は経済産業省出身で、参院当選1回、衆院当選2回。昨年10月から厚労政務官として労働政策などを担当していた。報道を受けて直接説明する記者会見などは開かず、説明責任を果たさないまま辞任した。
政府は9月に内閣改造があることから後任は置かず、もう一人の厚労政務官に兼務させる方針だ。国民民主党の玉木雄一郎代表は「辞任しても事実関係が消えるわけではない。説明責任をしっかり果たすべきだ。(安倍晋三首相の)任命責任もある」と記者団に語った。
**********時事通信社2019年08月28日18時59分
上野厚労政務官が辞任=在留資格で口利き疑惑
↑上野宏史厚生労働政務官↑
政府は28日の持ち回り閣議で、自民党の上野宏史厚生労働政務官(48)=衆院比例代表南関東ブロック=の辞任を決めた。上野氏には外国人労働者の在留資格取得をめぐり口利きした疑惑が浮上。責任を問う声が強まり、関係者に辞意を伝えた。
野党は国会で追及する構え。7月の参院選に勝利し、安倍晋三首相が長期政権の総仕上げに入ろうとするタイミングだけに、自民党には「政権運営にマイナス」(幹部)と影響を懸念する声が出ている。
上野氏は辞任後に文書を発表。「法令に反する口利きをした事実はない」と反論しつつ、「誤解を招きかねないとの指摘があり、体調を崩し役所に出ることもままならない」と辞任の理由を説明した。
↑記者団に囲まれながら、首相官邸に入る根本匠厚生労働相=28日午後、東京・永田町↑
根本匠厚労相も談話を出し、「国民に不信を持たれることのないよう常に襟を正し、説明責任を果たすべきだ」と強調した。内閣改造・党役員人事を9月半ばに控えるため、後任は当面置かない。
週刊文春は先週、東京都内の人材派遣会社が在留資格を申請した外国人に関し、上野氏側から法務省に問い合わせる見返りに金銭を求めたなどと報道。野党から批判が上がり、自民党内にも「説明できないなら辞めさせるしかない」(中堅)と突き放す意見が出ていた。
上野氏は経済産業省出身で衆院当選2回。2010年参院選で旧みんなの党から初当選。12年衆院選で日本維新の会からくら替え当選を果たし、その後、自民党に移った。昨年10月の第4次安倍改造内閣発足時に厚労政務官に就いた。
最近の政務三役では、4月に不適切発言で桜田義孝五輪担当相と塚田一郎国土交通副大臣(いずれも当時)が辞任している。
**********週刊文春2019年9月5日号(8月28日発売)
口利き疑惑で辞任 上野厚労政務官がコーヒーぶちまけ金銭要求
「週刊文春」(8月29日号)が報じた外国人在留資格を巡る口利き疑惑を受けて、辞任を表明した上野宏史厚生労働政務官(48)。この口利きの際、上野氏が、コーヒーの入ったカップを床に投げつけるなどして、お金を要求するよう、秘書に強要していた疑いがあることが、「週刊文春」の入手したメモでわかった。
上野氏の「口利き疑惑」とは、人材派遣会社「ネオキャリア」(本社・東京都新宿区)が派遣する外国人の在留資格について法務省に口利きすることで、同社からカネを得ようと画策したもの。小誌が先週号で入手、公開した政策秘書A氏との打ち合わせの録音データには「100人だから(1件2万円で)200万円」「ネオキャリアからお金もらう案件でやってんだから」などの生々しい音声が含まれていた。
↑上野宏史厚労政務官(右) ©共同通信社↑
なぜ、このような録音があるのか。A秘書から相談を受けた永田町関係者が新事実を明かす。
「問題の音声は今年6月19日のものですが、実はその前日にも、上野氏は『1件回答するごとに2万円もらう契約をしているんだ』などとA秘書に告げているのです。その際、上野議員はかなり高圧的に秘書に、金銭を要求した。あっせん利得処罰法に抵触する行為を平然と指示するのみならず、秘書にも金銭を要求することにAさんは衝撃を受け、事務所退所を決意。その日は録音していたわけではなく、即座にやり取りを備忘録として詳細にメモした。自らの身を守るため、翌日は上野氏とのやり取りを録音したのです」
メモには「こっちは相手と1件回答するごとに2万円もらう契約をしているんだ、これではとれないじゃないか!」などと激高する様子が記されている。
↑6月18日のメモ↑
上野氏が「何件回答しているんだ?」と問い詰め、A秘書が「11件程度」と答えると上野氏は「11件×2万円の22万円Aさんが払ってください」とも主張し、「もしこれがうまくいかなかったら、全体で100件だから200万円払って下さい」と言っている。
上野事務所に、「1件につき2万円」発言などの確認を求めたが、個別の事実確認には答えず、「あっせん利得処罰法に触れる事実はありません」との旨、回答した。
↑投げつけられて割れたカップ↑
上野氏の強圧的な金銭要求が1回だけではなかったことが明るみに出たことで、上野氏の議員としての資質を問う声が上がりそうだ。
8月29日(木)発売の「週刊文春」では、官邸主導の上野氏への事情聴取の模様や、表舞台から姿を消した上野氏の最近の言動などについても詳しく報じている。
**********日刊ゲンダイDIGITAL 2019年08月29日 15時00分
口利き疑惑で辞任も…“雲隠れ”上野厚労政務官に詐欺未遂の可能性
↑どこが「しかるべき対応なのか(左から根本厚労相、上野議員)/(C)共同通信↑
外国人労働者の在留資格をめぐって、法務省への「口利き」疑惑が浮上し、28日、厚労政務官を辞任した上野宏史衆院議員。問題が発覚してもロクに説明しないで逃げ回り、次は「体調不良」を理由に雲隠れ。
そして、いよいよ逃げ切れないと分かったら要職を辞任してチョンだ。
公選法違反の疑いで経産相を辞任した小渕優子衆院議員、UR(独立行政法人都市再生機構)をめぐる口利きワイロ事件で経産相を辞めた甘利明衆院議員など、自民党はいつもこのパターンで「疑惑隠し」しているが、今回こそ逃げ得は許されないだろう。
週刊文春によると、上野氏は6月、都内の人材派遣会社が在留資格を申請していた外国人について早期に認定が下りるように法務省に求め、1人当たり2万円の報酬を会社から得ることを画策していたという。疑惑が報じられると、上野氏は厚労政務官でありながら役所に姿を見せず、沈黙を貫いていたが、文春が9月5日号で音声テープに続き秘書が残していたメモの存在を報じた途端、逃げ切れないと思ったのだろう。「誤解を招きかねない」などと言って根本厚労相に辞表を提出した。
上野氏は27日に公表された年金の「財政検証」の担当だ。それなのにナ~ンも仕事せずに行方をくらましていたなんて冗談じゃない。根本厚労相は「しかるべく対応する」なんてのんきなことを言っていたが、すぐに上野氏を引っ張り出してメディアの前で説明させることが「しかるべき対応」だろう。このままノラリクラリはぐらかし、結局、問題ナシとか結論付けるのだろうが、国民を愚弄するにもホドがある。
上野氏の行為はあっせん利得処罰法違反との指摘もあるが、逮捕することはできないのか。元特捜検事で弁護士の郷原信郎氏がこう言う。
「甘利氏のケースでは、巨大な政治的影響力を背景に口利きをしたことが明らかで、あっせん利得処罰法違反の可能性が高いと言える。しかし、上野氏に甘利氏ほどの影響力があるかというと疑問です。むしろ、自らに影響力があるかのように見せかけ、人材派遣会社からカネを受け取ろうとしたのなら、詐欺未遂の可能性がある。倫理上の問題も大きく、議員辞職が妥当でしょう」
仮に上野氏がN国党入りなんて事態になったら、もはやマンガだ。
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■前回の記事で当会が示唆したこと、すなわち出身政党の「みんなの党」と最近会派を組んだN国党に入党したら、原点回帰となるわけで、日刊ゲンダイもこの茶番劇が起こる可能性について言及しています。
こうした事件があとを絶たないのは選ぶ方の国民にも責任があります。官僚出身の政治家の素行には、選挙民として特に今後も注意が必要です。
【9月26日追記】
上野宏史衆院議員の口利き疑惑のその後の報道記事です。
**********産経新聞2019年9月2日
【主張】厚労政務官辞任 説明なき雲隠れ許されぬ
厚生労働省の政務三役という要職にありながら自らの所掌分野で不適切な行為に手を染める。言語道断の所業である。
政務官を辞任した自民党の上野宏史衆院議員のことだ。外国人労働者の在留資格取得で口利き疑惑が浮上した。辞任は事実上の更迭だろう。
報酬を得ることを目的とした国会議員による公務員への口利きは、あっせん利得罪に問われかねない行為である。
ましてや上野氏は、外国人労働者の在留資格のあり方を研究する同省検討チームのトップを務めていた。この問題に対する不信を高めた責任も極めて重い。
やましいところがないというのなら、まずは国民の前に出てきて記者会見し、公人として当然の説明責任を果たすべきである。
発端は週刊文春の報道だ。上野氏は、在留資格をめぐって口利きを行う見返りに、外国人の派遣企業に金銭を求めていたとの疑惑が報じられた。上野氏は辞任後のコメントで「法令に反する口利きをした事実はない」と釈明した。
法令に反しない口利きとは何かを聞いてみたい。捜査当局が事実関係を調べるのは当然である。
上野氏は辞任理由について「誤解を招きかねないとの指摘があり、体調を崩し、役所に出ることがままならない」としている。
有権者を愚弄している。この既視感は何なのか。明確な説明もなく、言い訳だけして体調不良を理由に雲隠れするのでは、ただの逃げ口上にしかみえない。国会議員の進退は自らが決めることだとしても、この一点だけで議員の資質に疑問符がつく。野党には国会で厳しく追及してもらいたい。
今年4月、外国人労働者の受け入れ拡大を図る改正入管法が施行され、新たな在留資格が設けられた。法務省の入国管理局も出入国在留管理庁へと格上げされた。
その前から、外国人技能実習生への低賃金や違法残業、賃金未払い、暴行が発覚していた。悪質ブローカーによる人身売買まがいの所在不明事件も多い。この是正が上野氏の役割だったはずだ。自ら悪質ブローカーまがいのことをして国民が納得すると思うのか。
安倍晋三首相の任命責任は大きい。首相は9月に内閣改造と自民党役員人事を行うが、議員の資質をしっかりと見極めるべきだ。もはや政権内の不祥事は許されぬと厳しく認識すべきである。
**********週刊文春2019年9月12日号(9月5日発売)
ZIP ⇒ 20190905ttlicj.zip
ワイド「9月はさよならの国」
竹内まりやの名曲「September」では、振られた女心を「♪そして九月は さよならの国」
と歌うが、今の日本もさよならに満ちている。口利き議員は役職と、フィギュアの新星はコーチと、ギャルの教祖は「M」なる男と……。小誌は秋になってもスクープと別れません!
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特捜部が重大関心 上野宏史全政務官の悪だくみ音声
「通常、四、五カ月かかるやつを一カ月半ぐらいでこれ出しました。ということでいいですか?」
「むしろ次から次にジャンジャン新規案件をもらったほうが通る可能性ある」
この新たな音声データの声の主は、自民党の上野宏史衆院議員(48)。小誌が外国人在留資格を巡る口利き疑惑を報じてから一週間後の八月二十八日に突如、厚生労働政務官を辞任すると表明したが、口利きを巡る闇は深まるばかりだ。
↑ネオ社が上野氏に送った申請一覧表↑
↑言い訳の「文書」↑
小誌が直撃取材をした八月十六日以降、仕事を他の政務三役に押し付け“登庁拒否”していた上野氏は、最後まで雲隠れ。辞任の理由をA4一毎の文書で公表したが、《法令に反する口利きをした事実はありません》と主張しながらも、〈体調を崩し役所に出ることがままならない〉から辞任するとした。
「公明党の北側一雄中央幹事会会長が『記者会見の場に出るべき』と批判するなど、与党内にも庇う声は一切ありません。十月からの臨時国会で野党が攻勢を強める前に、今後、離党や、最悪、議員辞職もありえるでしょう」(政治部デスク)
上野氏の疑惑は、人材派遣会社「ネオキャリア」(以下ネオ社)が派遣する外国人の在留資格について法務省に少しでも早く許可がでるよう口利きすることで、同社からカネを得ようと画策したもの。小誌は、上野氏が政策秘書A氏との打ち合わせの席で「ネオキャリアからお金もらう案件でやってんだ」「一件につき二万円」などと語る生々しい録音データを入手、公開した。検察担当記者が語る。
「今、特捜幹部が注目しているのは上野氏とネオ社をつないだ女性経営者N氏です。上野氏がネオ社から直にカネをもらわず、N氏の会社を経由して金銭を得ようとしていた可能性をにらんでいます。森本宏特捜部長は、以前、上野氏の義父・上野公成氏の官房副長官秘書官を務めていて、上野氏側の人脈や事情に通じていることも追い風です」
既に、ネオ社からN氏にカネが渡っていることは小誌も確認済みだ。取材に対し、ネオ社は「今年六月一日、(N氏の会社と)コンサルティング契約をしました」と答え、N氏も、「(ネオ社が)私にお金を払ってくれている」と認めている。そのN氏が上野氏と“悪だくみ”する音声をさらに小誌は入手した。これはすでに公開した六月十九日の録音の翌日、上野氏がN氏を議員会館に呼び、打ち合わせを行った際のものだ。冒頭の上野氏の発言もその一部である。
N氏は口利きの手間をネオ社に伝えることで、金額を吊り上げようと画策する。
N氏「私、手間がすんごいかかるって、ちょっと、わざと(ネオ社に)言っていて(笑)。言った方が値上でできるんで~。(略)高値で売りたいですよね」
上野氏「 許可も極力速やかに出すようにするので、そこで二万ずつ手数料もらうだけでも、 まあ月に百万でも入れば」
N氏「そう。私ももうちょっと値上げとか取れる所があると思ったんで(後略)」
上野氏「三とか五(万円)にするとか」
まさに口利きをして利得を得るための計画の一端だ。上野事務所は「(以前)貴誌からの取材にお答えした通り」とだけで、 個別の質問には答えない。N氏は新たな音声データのやり取りは「事実です」と認めた上で、値上げの話などは「ネオ社に請求するコンサルティング報酬について」と言い、「上野議員に、パーティー券購入も含め金銭の提供をした事実もなく、その予定もない」と答えた。
安倍政権の看板政策を政務官自らが食い物にしようとした悪質な問題。上野氏は疑惑について、記者会見を開いて説明すべきだろう。
**********NHK政治マガジン2019年9月11日
【注目の発言集】
口利き報じられた上野議員 離党や議員辞職しない考え
外国人労働者の在留資格をめぐって口利きを行ったなどと報じられ、厚生労働政務官を辞任した自民党の上野宏史衆議院議員は、記者団に対し、違法な行為はしていないとして、離党や議員辞職をする考えはないことを強調しました。
自民党の上野宏史衆議院議員は、先月、「週刊文春」で、外国人労働者の在留資格の認定をめぐって、法務省に口利きを行う見返りに東京都内の人材派遣会社に金銭を求めていたなどと報じられたのを受けて、厚生労働政務官を辞任しました。
上野氏は、11日、辞任後初めて自民党本部を訪れ、党幹部と面会したあと記者団の取材に応じ、「地元の支援者や周りの方々に心配をかけ、大変遺憾に思っている。党側からはしっかり説明責任を果たすよう話があった」と述べました。
一方で、「違法な口利きをしたり金銭を受け取ったりした事実はない。違法なことをしているわけではない」と述べ、離党や議員辞職をする考えはないことを強調し、引き続き議員活動を続ける意向を示しました。
**********週刊プレジデント2019年9月25日09:00
悪徳政治家と"出稼ぎ留学生"をつなぐ利権の闇
政務官辞任は氷山の一角でしかない
8月に厚生労働政務官を辞任した自民党の上野宏史氏は、外国人労働者の在留資格を1件2万円で口利きしようとした疑惑が報じられた。ジャーナリストの出井康博氏は「外国人労働者の急増に伴い、政治家たちの利権も膨らみ続けている。今回の疑惑は、氷山のごく一角が露呈したにすぎない」と指摘する――。
↑厚生労働政務官を辞任する原因となった口利き疑惑について記者の質問に答える自民党の上野宏史衆院議員=2019年9月11日(写真=毎日新聞社/アフロ)↑
★外国人のビザ審査をめぐり、疑惑が浮上
『週刊文春』のスクープで、厚生労働政務官を務めていた上野宏史・自民党衆院議員の“口利き疑惑”が発覚した。外国人の在留資格審査に関して法務省に口利きをし、見返りとして民間の人材派遣会社からカネを受け取ろうとしたとの疑惑である。1件の口利きにつき「2万円」といった秘書らとやりとりの録音まで暴露された。
国会議員や秘書が公務員への口利きによって報酬を受け取れば、「あっせん利得処罰法」に問われる。また、口利きに効果があったように装ってカネを取った場合は、詐欺罪の対象となる。上野氏は疑惑を否定したが、政務官を辞任することになった。
問題の案件は、人材派遣会社とコンサルティング契約をしていた女性経営者から上野氏に持ち込まれたという。文春の取材に対し、人材派遣会社は在留資格を申請した外国人のリストを上野氏に送ったことは認めたうえで、口利きの依頼はしていないと強調している。
一方、同誌に載った上野氏と女性経営者の会話からも、2人にはこの会社からカネを取る目的が明らかにあったと思われる。
★口利きの“余地”がある入管行政の実態
在留資格の申請をしていたのが人材派遣会社であることから、案件は外国人の就労ビザ取得に関するものだったのであろう。人手不足の深刻化によって、日本で働く外国人は急増中だ。厚生労働省の調べでは、外国人労働者は2018年10月時点で146万人を超え、過去5年間で倍増している。
就労ビザの発給基準も大幅に緩んでいるが、審査する入国管理当局に一律の基準があるわけではない。現場担当者の裁量で、発給の可否や審査期間が左右されることも少なくない。そこに口利きの“余地”が生まれる。
政治家による口利きが、実際に効果を発揮するのかどうかは不明だ。だが、外国人労働者の受け入れ現場を取材していると、政治家の陰が見え隠れすることはよくある。外国人の就労ビザ取得の現場で何が起き、いったいどんな外国人たちがビザを得ているのか――。
外国人労働者の受け入れに着目し、利権にしようと試みる政治家は上野氏に限ったことではない。多くの政治家はもっと巧妙に、合法的なやり方で利権を手にしている。例えば、外国人技能実習制度を通じた実習生の受け入れ事業である。
法務省によれば、外国人実習生の数は18年末には32万8360人に達し、やはり過去5年で2倍以上に増えている。実習制度に関しては、実習生の職場からの失踪をはじめ、数々の問題がメディアで頻繁に報じられる。同制度の根本的な見直しを求める声も多いが、逆に制度は拡大していく一方だ。その背景には、政治の利権が関係していることは間違いない。
★実習生を仲介するだけで「毎月3万~5万円」
政府は実習制度の問題に関し、実習生から多額の手数料を取っているような「悪徳ブローカー」の排除が必要だと強調する。だが、政治家自身がブローカーの役割を果たしている実態については、政府、そして大手メディアも全く触れない。
実習生の受け入れは、送り出し国と日本の双方に存在する仲介団体を通さなければならない。日本側では「監理団体」が、中小企業や農家といった受け入れ先への仲介を担う。監理団体は営利目的の仲介が禁じられていて、民間の人材派遣会社などの参入も認められていない。「事業組合」といった、一見公的な看板を掲げる団体しか監理団体にはなれないのだ。
しかし実際には、実習生の仲介はビジネスそのものだ。監理団体は「監理費」として、実習生1人につき月3万~5万円程度を受け入れ先の企業から徴収できる。仲介するだけで継続的に手数料が入るわけだ。その運営には、人材派遣会社や日本語学校などの経営者が関わっていることもよくある。
さらには、落選・引退した政治家の関与も目立つ。実習制度は1990年代初めにつくられたが、当初は「中国人実習生の受け入れは社会党、その他のアジア諸国は自民党」という利権の棲み分けもあったほどだ。利権は何も自民党関係者だけが独占しているわけではない。
★元閣僚や現職議員などが監理団体を統括
実習生の受け入れは、問題が起きれば入管当局とのやりとりが生じる。また、送り出し国側との交渉においても、「元国会議員」といった肩書が威力を発揮する。
実習生が急増しているあるアジアの国からの受け入れでは、つい最近まで監理団体を統括し、収入を得ている組織もあった。監理団体はこの組織にカネを払わなければ、実習生の仲介ができなかったのだ。
この組織のトップは閣僚経験もある元国会議員で、理事には与野党の現職議員から関係省庁の事務次官経験者、元大使まで名を連ねている。関係者の間では知られた組織だが、錚々そうそうたる理事たちの顔ぶれを前に、監理団体は従うしかなかった。
『週刊文春』2019年9月12号には、上野氏と問題の案件を仲介した女性経営者のこんなやりとりが載っている。
上野氏「(就労ビザの=筆者注)許可も極力速やかに出すようにするので、そこで二万ずつ手数料をもらうだけでも、まあ月に百万でも入れば」
経営者「そう。私ももうちょっと値上げとか取れる所があると思ったんで(後略)」
上野氏「三とか五(万円)にするとか」
人材派遣会社が外国人の就労ビザを取得できれば、彼らを取引先の企業に派遣して定期的な収入が見込める。その一部を上野氏らはハネようと考えたのだろう。しかし、口利きは完全な違法行為である。
そんなことをせず、上野氏も実習生の受け入れに裏で関与していれば、合法的に利権を手にできたかもしれない。だが、知り合いの経営者から持ち込まれた案件に飛びつき、結果として政務官の地位を失うことになった。
★人材派遣会社がビザ申請をしていた謎
さて、今回の案件では、人材派遣会社が外国人のビザ申請をしていた。一般の企業ではなく、なぜ人材派遣会社だったのか。
外国人労働者の増加は、人材派遣業界にとって大きなビジネスチャンスとなっている。今年4月から始まった新在留資格「特定技能」による受け入れ制度では、人材派遣会社は「登録支援機関」として、実習制度の監理団体に似た役割を果たせる。
「特定技能」は実習制度と同様、人手不足の職種に外国人労働者を供給するためにつくられた。介護や建設、外食、農業などの14業種において、当初の5年間で34万5000人の受け入れが見込まれる。人材派遣業界が色めき立つのも当然だ。
そして、すでに同業界の参入が目立つのが、ホワイトカラーの仕事に就く外国人の就職斡旋あっせんである。ホワイトカラーの外国人が日本で就労ビザを得る場合、経営者や医師、大学教授などを除き、多くは「技術・人文知識・国際業務」という在留資格(通称・技人国ビザ)を得る。技人国ビザは原則、日本で専門学校か大学を卒業、もしくは海外の大卒以上の学歴がある外国人に限って発給される。
今回、上野氏が関わった案件に登場する人材派遣会社の場合、海外の人材をリクルートしていたのだと思われる。就労や留学で新たに入国する外国人のビザ取得に必要な「在留資格認定証明書」を申請していたからだ。一方、人材派遣業界が海外人材にも増して注目しているのが留学生である。
★「口利き疑惑」は氷山の一角でしかない
近年、日本で就職する留学生は増え続けている。法務省によれば、2017年には前年から約15パーセント増えて2万2419人と、過去最高を更新した。5年前と比べて2倍以上の急増だ。安倍政権が16年に発表した「日本再興戦略」(成長戦略)で、留学生の就職率アップを掲げたことが大きく影響した。当時は約35%だった就職率を5割まで引き上げようという政策である。
この政策によって、技人国ビザの発給基準が大幅に緩んだ。前回の拙稿「外国留学生急増の裏で進む“偽装就職”の闇」(5月24日)で詳しく書いたように、技人国ビザで認められるホワイトカラーの仕事に就くように見せかけ、実際には弁当工場などでの単純労働に従事する“偽装就職”も横行している。
そもそもホワイトカラーの仕事では人手不足は起きていない。外国人労働者を欲しているのは、日本人の嫌がる単純労働の職種なのである。そうした“偽装就職”の斡旋に、人材派遣会社が関わることが少なくない。留学生から数十万円の手数料を取ってのことだ。
もう一つの「成長戦略」である「留学生30万人計画」達成のため、政府は留学ビザの発給対象にならないはずの外国人の入国を認め続けてきた。結果、ベトナムなどアジア新興国から、出稼ぎ目的の“偽装留学生”が大量に流入した。そんな彼らを底辺労働者として都合よく利用してきた日本は、今度は留学生の就職率アップという政策を通じ、この国へ引き留めたいのだ。
外国人労働者急増の裏には、民間業者から政治家、官僚まで“オールジャパン”で加担する数々のインチキと利権の闇が広がっている。上野氏の“口利き疑惑”は、氷山のごく一角が露呈したにすぎない。
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【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
**********上毛新聞一面2019年8月29日
上野政務官が辞任 口利き疑惑「誤解招きかねない」
自民党県連所属で厚生労働政務官の上野宏史衆院議員(比例南関東)は28日、外国人労働者の在留資格を巡る週刊文春の口利き疑惑報道を受け、政務官を辞任した。上野氏が辞表を提出し、政府が持ち回り閣議で決定した。自民党幹部によると、9月の内閣改造まで後任は置かない方向だ。上野氏は事務所を通じてコメントを発表し、違法な口利きをした事実はないとした上で「誤解を招きかねないと」して辞任を決意したと説明した。【関連記事2面】
野党は、事実関係の説明が不十分だと批判。安倍晋三首相の任命責任を含め、秋の臨時国会で追及する構えだ。
上野氏はコメントで、週刊文春の報道に関し「法令に反する口利きや、あっせん利得処罰法に触れる事実はない」と強調。辞任理由は「政務官の立場にあることで誤解を招きかねないとの指摘もある」「体調を崩し役所に出ることがままならない」とした。
厚労省関係者によると、上野氏は8月16日を最後に登庁していなかった。
週刊文春によると、上野氏は東京都内の人材派遣会社が関わった在留資格認定証明書を迅速に交付するよう法務省に働き掛ける見返として、同社から現金を受け取ろうと計画したとされる。
上野氏は外国人労働者の技能実習を巡り、業界団体や地域の要望を聞く厚労省内の検討チームのトップを務めていた。
県連の星名建市幹事長は「残念の一言に尽きる。辞任本人の判断だろう。県連にも説明はなく、今後の推移を見守りたい」と述べた。根本匠厚労相は辞任を受け「政治活動については一人一人の政治家が国民に不信を持たれることのないように常に自らが襟を正し、説明責任を果たすべきもの」とのコメントを出した。
上野氏は衆院当選2回、参院当選1回。2010年に参院選比例代表で旧みんなの党から初当選し、12年衆院選で日本維新の会から群馬1区へ出馬し当選。14年は無所属で1区に出馬したが、落選。17年に比例代表南関東ブロック単独候補として自民が擁立し、当選した。18年10月から厚労政務官を務めていた。義父は上野公成元官房副長官。
**********上毛新聞二面2019年8月29日
野党 上野氏に説明要求 口利き疑惑首相責任も追及
野党は28日、外国人労働者の在留資格を巡る口利き疑惑を週刊誌で報じられた自民党の上野宏史厚生労働政務官の辞任に関し、上野氏自ら事実関係を説明するように求めた。安倍晋三首相の任命責任も含めて徹底的に追及する方針で、速やかな臨時国会の開催が必要だと訴えていく。
立憲民主党の長妻昭代表代行は「なぜ辞任なのか判然としない。記者会見を開いて説明してもらう必要がある。徹底的にうみを出し切らなければならない」と国会内で記者団に語った。逢坂誠二政調会長は取材に「事実をはっきりさせないで、ただ辞めればいいというものではない」と述べ、上野氏の対応は不十分だと批判した。
国民民主党の玉木雄一郎代表は党本部で記者団に「辞任は当然で遅すぎる」と言明。疑惑解明へ秋の臨時国会を前倒しするよう与党に要求する考えを明らかにした。
共産党の小池晃書記局長は取材に「疑惑が全て事実なら、政務官辞任にとどまらず議員辞職すべきだ。自民党の対応も問われる」と強調した。
日本維新の会の馬場伸幸幹事長は「早期に自ら釈明すべきだ。政務官を辞めるのはその後だ」と指摘した。社会党の吉川元・幹事長は「あっせん利得の可能性がある。何があったのか、本人が説明しないといけない重大な問題だ」と語った。
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「違法口利きない」
○上野氏>>>>>
上野宏史厚生労働政務官による外国人在留資格の申請を巡る口利き疑惑は、先週発売の週刊文春が報じた。人材派遣会社の申請が認められるよう法務省に問い合わせ、見返りに金銭を得ようとしたとの内容だ。上野氏はこの報道後、公の場に姿を見せず、辞任した28日に「法令に反する口利きをした事実はない」とコメントを出しただけだった。識者からは対応を疑問視する声も上がる。
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「金銭求めようと」
○週刊文春>>>>>
週刊文春によると、東京都内の人材派遣会社が今年2~6月に外国人の187人分の在留資格を認定するよう申請。上野氏側は、速やかに申請が認められるよう法務省外局の出入国在留管理局に問い合わせ、その見返りに金銭を求めようとした疑いがあるとしている。
文春が根拠としたのは、6月19日に録音された上野氏と秘書が交わしたとされる会話の内容だ。上野氏とされる男性は、申請のうち13件の許可が出たと知ると、「じゃあ26万戻ってきてください」「(人材派遣会社から)お金をもらう案件になっている」と秘書とみられる男性に指示。これに対し、秘書とみられる男性が「あっせん利得罪になる」と抵抗する会話が残っていた。
日大の岩井泰信教授(政治学)は「(報じられた内容だけでは)あっせん利得に当たると判断するのは難しい」としながら「音声内容は国会議員としてふさわしくない。政務官を辞任したとしても疑惑は残る。自ら事実関係を明らかにし、国民への説明責任を果たすべきだ」と批判した。
**********毎日新聞2019年8月29日 14時14分(最終更新 8月29日 15時15分)
政務官辞任の上野氏について公明・北側副代表「記者会見すべきだ」
公明党の北側一雄副代表は29日の記者会見で、自民党の上野宏史厚生労働政務官が辞任したことについて「(本人が)会見の場にきちんと出てきて説明責任を果たすべきだ」と述べた。辞任は、週刊文春で外国人労働者の在留資格を巡る口利き疑惑を報じられたことを受けたもの。上野氏は「法令に反する口利きをした事実はない」と疑惑を否定するなどのコメントを発表したが、公の場での説明はしていない。
一方、菅義偉官房長官は会見で「政治家は、国民に不信をもたれることのないよう、常に自らの襟を正し、説明責任を果たすべきだ」と述べたが、上野氏が説明責任を果たしているかどうかの判断は避けた。【村尾哲、高橋克哉】
**********朝日新聞2019年08月29日23時39分JST
口利き疑惑の上野宏史厚労政務官 辞任は「誤解招かぬため」
「法令に反する口利きをした事実はない。報道は大変遺憾だ」とした上で、辞任の理由を「政務官の立場にあることで誤解を招きかねない」などと説明している。
↑口利き疑惑の上野厚労政務官 辞任は「誤解招かぬため」↑
自民党の上野宏史・厚生労働政務官(48)=衆院南関東ブロック=は28日、外国人労働者の在留資格認定証明書の交付をめぐる週刊文春の口利き疑惑報道を受け、政務官を辞任した。同日公表したコメントでは「法令(あっせん利得処罰法)に反する口利きをした事実はない。報道は大変遺憾だ」とした上で、辞任の理由を「政務官の立場にあることで誤解を招きかねない」などと説明した。
上野氏は経済産業省出身で、参院当選1回、衆院当選2回。昨年10月から厚労政務官として労働政策などを担当していた。報道を受けて直接説明する記者会見などは開かず、説明責任を果たさないまま辞任した。
政府は9月に内閣改造があることから後任は置かず、もう一人の厚労政務官に兼務させる方針だ。国民民主党の玉木雄一郎代表は「辞任しても事実関係が消えるわけではない。説明責任をしっかり果たすべきだ。(安倍晋三首相の)任命責任もある」と記者団に語った。
**********時事通信社2019年08月28日18時59分
上野厚労政務官が辞任=在留資格で口利き疑惑
↑上野宏史厚生労働政務官↑
政府は28日の持ち回り閣議で、自民党の上野宏史厚生労働政務官(48)=衆院比例代表南関東ブロック=の辞任を決めた。上野氏には外国人労働者の在留資格取得をめぐり口利きした疑惑が浮上。責任を問う声が強まり、関係者に辞意を伝えた。
野党は国会で追及する構え。7月の参院選に勝利し、安倍晋三首相が長期政権の総仕上げに入ろうとするタイミングだけに、自民党には「政権運営にマイナス」(幹部)と影響を懸念する声が出ている。
上野氏は辞任後に文書を発表。「法令に反する口利きをした事実はない」と反論しつつ、「誤解を招きかねないとの指摘があり、体調を崩し役所に出ることもままならない」と辞任の理由を説明した。
↑記者団に囲まれながら、首相官邸に入る根本匠厚生労働相=28日午後、東京・永田町↑
根本匠厚労相も談話を出し、「国民に不信を持たれることのないよう常に襟を正し、説明責任を果たすべきだ」と強調した。内閣改造・党役員人事を9月半ばに控えるため、後任は当面置かない。
週刊文春は先週、東京都内の人材派遣会社が在留資格を申請した外国人に関し、上野氏側から法務省に問い合わせる見返りに金銭を求めたなどと報道。野党から批判が上がり、自民党内にも「説明できないなら辞めさせるしかない」(中堅)と突き放す意見が出ていた。
上野氏は経済産業省出身で衆院当選2回。2010年参院選で旧みんなの党から初当選。12年衆院選で日本維新の会からくら替え当選を果たし、その後、自民党に移った。昨年10月の第4次安倍改造内閣発足時に厚労政務官に就いた。
最近の政務三役では、4月に不適切発言で桜田義孝五輪担当相と塚田一郎国土交通副大臣(いずれも当時)が辞任している。
**********週刊文春2019年9月5日号(8月28日発売)
口利き疑惑で辞任 上野厚労政務官がコーヒーぶちまけ金銭要求
「週刊文春」(8月29日号)が報じた外国人在留資格を巡る口利き疑惑を受けて、辞任を表明した上野宏史厚生労働政務官(48)。この口利きの際、上野氏が、コーヒーの入ったカップを床に投げつけるなどして、お金を要求するよう、秘書に強要していた疑いがあることが、「週刊文春」の入手したメモでわかった。
上野氏の「口利き疑惑」とは、人材派遣会社「ネオキャリア」(本社・東京都新宿区)が派遣する外国人の在留資格について法務省に口利きすることで、同社からカネを得ようと画策したもの。小誌が先週号で入手、公開した政策秘書A氏との打ち合わせの録音データには「100人だから(1件2万円で)200万円」「ネオキャリアからお金もらう案件でやってんだから」などの生々しい音声が含まれていた。
↑上野宏史厚労政務官(右) ©共同通信社↑
なぜ、このような録音があるのか。A秘書から相談を受けた永田町関係者が新事実を明かす。
「問題の音声は今年6月19日のものですが、実はその前日にも、上野氏は『1件回答するごとに2万円もらう契約をしているんだ』などとA秘書に告げているのです。その際、上野議員はかなり高圧的に秘書に、金銭を要求した。あっせん利得処罰法に抵触する行為を平然と指示するのみならず、秘書にも金銭を要求することにAさんは衝撃を受け、事務所退所を決意。その日は録音していたわけではなく、即座にやり取りを備忘録として詳細にメモした。自らの身を守るため、翌日は上野氏とのやり取りを録音したのです」
メモには「こっちは相手と1件回答するごとに2万円もらう契約をしているんだ、これではとれないじゃないか!」などと激高する様子が記されている。
↑6月18日のメモ↑
上野氏が「何件回答しているんだ?」と問い詰め、A秘書が「11件程度」と答えると上野氏は「11件×2万円の22万円Aさんが払ってください」とも主張し、「もしこれがうまくいかなかったら、全体で100件だから200万円払って下さい」と言っている。
上野事務所に、「1件につき2万円」発言などの確認を求めたが、個別の事実確認には答えず、「あっせん利得処罰法に触れる事実はありません」との旨、回答した。
↑投げつけられて割れたカップ↑
上野氏の強圧的な金銭要求が1回だけではなかったことが明るみに出たことで、上野氏の議員としての資質を問う声が上がりそうだ。
8月29日(木)発売の「週刊文春」では、官邸主導の上野氏への事情聴取の模様や、表舞台から姿を消した上野氏の最近の言動などについても詳しく報じている。
**********日刊ゲンダイDIGITAL 2019年08月29日 15時00分
口利き疑惑で辞任も…“雲隠れ”上野厚労政務官に詐欺未遂の可能性
↑どこが「しかるべき対応なのか(左から根本厚労相、上野議員)/(C)共同通信↑
外国人労働者の在留資格をめぐって、法務省への「口利き」疑惑が浮上し、28日、厚労政務官を辞任した上野宏史衆院議員。問題が発覚してもロクに説明しないで逃げ回り、次は「体調不良」を理由に雲隠れ。
そして、いよいよ逃げ切れないと分かったら要職を辞任してチョンだ。
公選法違反の疑いで経産相を辞任した小渕優子衆院議員、UR(独立行政法人都市再生機構)をめぐる口利きワイロ事件で経産相を辞めた甘利明衆院議員など、自民党はいつもこのパターンで「疑惑隠し」しているが、今回こそ逃げ得は許されないだろう。
週刊文春によると、上野氏は6月、都内の人材派遣会社が在留資格を申請していた外国人について早期に認定が下りるように法務省に求め、1人当たり2万円の報酬を会社から得ることを画策していたという。疑惑が報じられると、上野氏は厚労政務官でありながら役所に姿を見せず、沈黙を貫いていたが、文春が9月5日号で音声テープに続き秘書が残していたメモの存在を報じた途端、逃げ切れないと思ったのだろう。「誤解を招きかねない」などと言って根本厚労相に辞表を提出した。
上野氏は27日に公表された年金の「財政検証」の担当だ。それなのにナ~ンも仕事せずに行方をくらましていたなんて冗談じゃない。根本厚労相は「しかるべく対応する」なんてのんきなことを言っていたが、すぐに上野氏を引っ張り出してメディアの前で説明させることが「しかるべき対応」だろう。このままノラリクラリはぐらかし、結局、問題ナシとか結論付けるのだろうが、国民を愚弄するにもホドがある。
上野氏の行為はあっせん利得処罰法違反との指摘もあるが、逮捕することはできないのか。元特捜検事で弁護士の郷原信郎氏がこう言う。
「甘利氏のケースでは、巨大な政治的影響力を背景に口利きをしたことが明らかで、あっせん利得処罰法違反の可能性が高いと言える。しかし、上野氏に甘利氏ほどの影響力があるかというと疑問です。むしろ、自らに影響力があるかのように見せかけ、人材派遣会社からカネを受け取ろうとしたのなら、詐欺未遂の可能性がある。倫理上の問題も大きく、議員辞職が妥当でしょう」
仮に上野氏がN国党入りなんて事態になったら、もはやマンガだ。
**********
■前回の記事で当会が示唆したこと、すなわち出身政党の「みんなの党」と最近会派を組んだN国党に入党したら、原点回帰となるわけで、日刊ゲンダイもこの茶番劇が起こる可能性について言及しています。
こうした事件があとを絶たないのは選ぶ方の国民にも責任があります。官僚出身の政治家の素行には、選挙民として特に今後も注意が必要です。
【9月26日追記】
上野宏史衆院議員の口利き疑惑のその後の報道記事です。
**********産経新聞2019年9月2日
【主張】厚労政務官辞任 説明なき雲隠れ許されぬ
厚生労働省の政務三役という要職にありながら自らの所掌分野で不適切な行為に手を染める。言語道断の所業である。
政務官を辞任した自民党の上野宏史衆院議員のことだ。外国人労働者の在留資格取得で口利き疑惑が浮上した。辞任は事実上の更迭だろう。
報酬を得ることを目的とした国会議員による公務員への口利きは、あっせん利得罪に問われかねない行為である。
ましてや上野氏は、外国人労働者の在留資格のあり方を研究する同省検討チームのトップを務めていた。この問題に対する不信を高めた責任も極めて重い。
やましいところがないというのなら、まずは国民の前に出てきて記者会見し、公人として当然の説明責任を果たすべきである。
発端は週刊文春の報道だ。上野氏は、在留資格をめぐって口利きを行う見返りに、外国人の派遣企業に金銭を求めていたとの疑惑が報じられた。上野氏は辞任後のコメントで「法令に反する口利きをした事実はない」と釈明した。
法令に反しない口利きとは何かを聞いてみたい。捜査当局が事実関係を調べるのは当然である。
上野氏は辞任理由について「誤解を招きかねないとの指摘があり、体調を崩し、役所に出ることがままならない」としている。
有権者を愚弄している。この既視感は何なのか。明確な説明もなく、言い訳だけして体調不良を理由に雲隠れするのでは、ただの逃げ口上にしかみえない。国会議員の進退は自らが決めることだとしても、この一点だけで議員の資質に疑問符がつく。野党には国会で厳しく追及してもらいたい。
今年4月、外国人労働者の受け入れ拡大を図る改正入管法が施行され、新たな在留資格が設けられた。法務省の入国管理局も出入国在留管理庁へと格上げされた。
その前から、外国人技能実習生への低賃金や違法残業、賃金未払い、暴行が発覚していた。悪質ブローカーによる人身売買まがいの所在不明事件も多い。この是正が上野氏の役割だったはずだ。自ら悪質ブローカーまがいのことをして国民が納得すると思うのか。
安倍晋三首相の任命責任は大きい。首相は9月に内閣改造と自民党役員人事を行うが、議員の資質をしっかりと見極めるべきだ。もはや政権内の不祥事は許されぬと厳しく認識すべきである。
**********週刊文春2019年9月12日号(9月5日発売)
ZIP ⇒ 20190905ttlicj.zip
ワイド「9月はさよならの国」
竹内まりやの名曲「September」では、振られた女心を「♪そして九月は さよならの国」
と歌うが、今の日本もさよならに満ちている。口利き議員は役職と、フィギュアの新星はコーチと、ギャルの教祖は「M」なる男と……。小誌は秋になってもスクープと別れません!
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特捜部が重大関心 上野宏史全政務官の悪だくみ音声
「通常、四、五カ月かかるやつを一カ月半ぐらいでこれ出しました。ということでいいですか?」
「むしろ次から次にジャンジャン新規案件をもらったほうが通る可能性ある」
この新たな音声データの声の主は、自民党の上野宏史衆院議員(48)。小誌が外国人在留資格を巡る口利き疑惑を報じてから一週間後の八月二十八日に突如、厚生労働政務官を辞任すると表明したが、口利きを巡る闇は深まるばかりだ。
↑ネオ社が上野氏に送った申請一覧表↑
↑言い訳の「文書」↑
小誌が直撃取材をした八月十六日以降、仕事を他の政務三役に押し付け“登庁拒否”していた上野氏は、最後まで雲隠れ。辞任の理由をA4一毎の文書で公表したが、《法令に反する口利きをした事実はありません》と主張しながらも、〈体調を崩し役所に出ることがままならない〉から辞任するとした。
「公明党の北側一雄中央幹事会会長が『記者会見の場に出るべき』と批判するなど、与党内にも庇う声は一切ありません。十月からの臨時国会で野党が攻勢を強める前に、今後、離党や、最悪、議員辞職もありえるでしょう」(政治部デスク)
上野氏の疑惑は、人材派遣会社「ネオキャリア」(以下ネオ社)が派遣する外国人の在留資格について法務省に少しでも早く許可がでるよう口利きすることで、同社からカネを得ようと画策したもの。小誌は、上野氏が政策秘書A氏との打ち合わせの席で「ネオキャリアからお金もらう案件でやってんだ」「一件につき二万円」などと語る生々しい録音データを入手、公開した。検察担当記者が語る。
「今、特捜幹部が注目しているのは上野氏とネオ社をつないだ女性経営者N氏です。上野氏がネオ社から直にカネをもらわず、N氏の会社を経由して金銭を得ようとしていた可能性をにらんでいます。森本宏特捜部長は、以前、上野氏の義父・上野公成氏の官房副長官秘書官を務めていて、上野氏側の人脈や事情に通じていることも追い風です」
既に、ネオ社からN氏にカネが渡っていることは小誌も確認済みだ。取材に対し、ネオ社は「今年六月一日、(N氏の会社と)コンサルティング契約をしました」と答え、N氏も、「(ネオ社が)私にお金を払ってくれている」と認めている。そのN氏が上野氏と“悪だくみ”する音声をさらに小誌は入手した。これはすでに公開した六月十九日の録音の翌日、上野氏がN氏を議員会館に呼び、打ち合わせを行った際のものだ。冒頭の上野氏の発言もその一部である。
N氏は口利きの手間をネオ社に伝えることで、金額を吊り上げようと画策する。
N氏「私、手間がすんごいかかるって、ちょっと、わざと(ネオ社に)言っていて(笑)。言った方が値上でできるんで~。(略)高値で売りたいですよね」
上野氏「 許可も極力速やかに出すようにするので、そこで二万ずつ手数料もらうだけでも、 まあ月に百万でも入れば」
N氏「そう。私ももうちょっと値上げとか取れる所があると思ったんで(後略)」
上野氏「三とか五(万円)にするとか」
まさに口利きをして利得を得るための計画の一端だ。上野事務所は「(以前)貴誌からの取材にお答えした通り」とだけで、 個別の質問には答えない。N氏は新たな音声データのやり取りは「事実です」と認めた上で、値上げの話などは「ネオ社に請求するコンサルティング報酬について」と言い、「上野議員に、パーティー券購入も含め金銭の提供をした事実もなく、その予定もない」と答えた。
安倍政権の看板政策を政務官自らが食い物にしようとした悪質な問題。上野氏は疑惑について、記者会見を開いて説明すべきだろう。
**********NHK政治マガジン2019年9月11日
【注目の発言集】
口利き報じられた上野議員 離党や議員辞職しない考え
外国人労働者の在留資格をめぐって口利きを行ったなどと報じられ、厚生労働政務官を辞任した自民党の上野宏史衆議院議員は、記者団に対し、違法な行為はしていないとして、離党や議員辞職をする考えはないことを強調しました。
自民党の上野宏史衆議院議員は、先月、「週刊文春」で、外国人労働者の在留資格の認定をめぐって、法務省に口利きを行う見返りに東京都内の人材派遣会社に金銭を求めていたなどと報じられたのを受けて、厚生労働政務官を辞任しました。
上野氏は、11日、辞任後初めて自民党本部を訪れ、党幹部と面会したあと記者団の取材に応じ、「地元の支援者や周りの方々に心配をかけ、大変遺憾に思っている。党側からはしっかり説明責任を果たすよう話があった」と述べました。
一方で、「違法な口利きをしたり金銭を受け取ったりした事実はない。違法なことをしているわけではない」と述べ、離党や議員辞職をする考えはないことを強調し、引き続き議員活動を続ける意向を示しました。
**********週刊プレジデント2019年9月25日09:00
悪徳政治家と"出稼ぎ留学生"をつなぐ利権の闇
政務官辞任は氷山の一角でしかない
8月に厚生労働政務官を辞任した自民党の上野宏史氏は、外国人労働者の在留資格を1件2万円で口利きしようとした疑惑が報じられた。ジャーナリストの出井康博氏は「外国人労働者の急増に伴い、政治家たちの利権も膨らみ続けている。今回の疑惑は、氷山のごく一角が露呈したにすぎない」と指摘する――。
↑厚生労働政務官を辞任する原因となった口利き疑惑について記者の質問に答える自民党の上野宏史衆院議員=2019年9月11日(写真=毎日新聞社/アフロ)↑
★外国人のビザ審査をめぐり、疑惑が浮上
『週刊文春』のスクープで、厚生労働政務官を務めていた上野宏史・自民党衆院議員の“口利き疑惑”が発覚した。外国人の在留資格審査に関して法務省に口利きをし、見返りとして民間の人材派遣会社からカネを受け取ろうとしたとの疑惑である。1件の口利きにつき「2万円」といった秘書らとやりとりの録音まで暴露された。
国会議員や秘書が公務員への口利きによって報酬を受け取れば、「あっせん利得処罰法」に問われる。また、口利きに効果があったように装ってカネを取った場合は、詐欺罪の対象となる。上野氏は疑惑を否定したが、政務官を辞任することになった。
問題の案件は、人材派遣会社とコンサルティング契約をしていた女性経営者から上野氏に持ち込まれたという。文春の取材に対し、人材派遣会社は在留資格を申請した外国人のリストを上野氏に送ったことは認めたうえで、口利きの依頼はしていないと強調している。
一方、同誌に載った上野氏と女性経営者の会話からも、2人にはこの会社からカネを取る目的が明らかにあったと思われる。
★口利きの“余地”がある入管行政の実態
在留資格の申請をしていたのが人材派遣会社であることから、案件は外国人の就労ビザ取得に関するものだったのであろう。人手不足の深刻化によって、日本で働く外国人は急増中だ。厚生労働省の調べでは、外国人労働者は2018年10月時点で146万人を超え、過去5年間で倍増している。
就労ビザの発給基準も大幅に緩んでいるが、審査する入国管理当局に一律の基準があるわけではない。現場担当者の裁量で、発給の可否や審査期間が左右されることも少なくない。そこに口利きの“余地”が生まれる。
政治家による口利きが、実際に効果を発揮するのかどうかは不明だ。だが、外国人労働者の受け入れ現場を取材していると、政治家の陰が見え隠れすることはよくある。外国人の就労ビザ取得の現場で何が起き、いったいどんな外国人たちがビザを得ているのか――。
外国人労働者の受け入れに着目し、利権にしようと試みる政治家は上野氏に限ったことではない。多くの政治家はもっと巧妙に、合法的なやり方で利権を手にしている。例えば、外国人技能実習制度を通じた実習生の受け入れ事業である。
法務省によれば、外国人実習生の数は18年末には32万8360人に達し、やはり過去5年で2倍以上に増えている。実習制度に関しては、実習生の職場からの失踪をはじめ、数々の問題がメディアで頻繁に報じられる。同制度の根本的な見直しを求める声も多いが、逆に制度は拡大していく一方だ。その背景には、政治の利権が関係していることは間違いない。
★実習生を仲介するだけで「毎月3万~5万円」
政府は実習制度の問題に関し、実習生から多額の手数料を取っているような「悪徳ブローカー」の排除が必要だと強調する。だが、政治家自身がブローカーの役割を果たしている実態については、政府、そして大手メディアも全く触れない。
実習生の受け入れは、送り出し国と日本の双方に存在する仲介団体を通さなければならない。日本側では「監理団体」が、中小企業や農家といった受け入れ先への仲介を担う。監理団体は営利目的の仲介が禁じられていて、民間の人材派遣会社などの参入も認められていない。「事業組合」といった、一見公的な看板を掲げる団体しか監理団体にはなれないのだ。
しかし実際には、実習生の仲介はビジネスそのものだ。監理団体は「監理費」として、実習生1人につき月3万~5万円程度を受け入れ先の企業から徴収できる。仲介するだけで継続的に手数料が入るわけだ。その運営には、人材派遣会社や日本語学校などの経営者が関わっていることもよくある。
さらには、落選・引退した政治家の関与も目立つ。実習制度は1990年代初めにつくられたが、当初は「中国人実習生の受け入れは社会党、その他のアジア諸国は自民党」という利権の棲み分けもあったほどだ。利権は何も自民党関係者だけが独占しているわけではない。
★元閣僚や現職議員などが監理団体を統括
実習生の受け入れは、問題が起きれば入管当局とのやりとりが生じる。また、送り出し国側との交渉においても、「元国会議員」といった肩書が威力を発揮する。
実習生が急増しているあるアジアの国からの受け入れでは、つい最近まで監理団体を統括し、収入を得ている組織もあった。監理団体はこの組織にカネを払わなければ、実習生の仲介ができなかったのだ。
この組織のトップは閣僚経験もある元国会議員で、理事には与野党の現職議員から関係省庁の事務次官経験者、元大使まで名を連ねている。関係者の間では知られた組織だが、錚々そうそうたる理事たちの顔ぶれを前に、監理団体は従うしかなかった。
『週刊文春』2019年9月12号には、上野氏と問題の案件を仲介した女性経営者のこんなやりとりが載っている。
上野氏「(就労ビザの=筆者注)許可も極力速やかに出すようにするので、そこで二万ずつ手数料をもらうだけでも、まあ月に百万でも入れば」
経営者「そう。私ももうちょっと値上げとか取れる所があると思ったんで(後略)」
上野氏「三とか五(万円)にするとか」
人材派遣会社が外国人の就労ビザを取得できれば、彼らを取引先の企業に派遣して定期的な収入が見込める。その一部を上野氏らはハネようと考えたのだろう。しかし、口利きは完全な違法行為である。
そんなことをせず、上野氏も実習生の受け入れに裏で関与していれば、合法的に利権を手にできたかもしれない。だが、知り合いの経営者から持ち込まれた案件に飛びつき、結果として政務官の地位を失うことになった。
★人材派遣会社がビザ申請をしていた謎
さて、今回の案件では、人材派遣会社が外国人のビザ申請をしていた。一般の企業ではなく、なぜ人材派遣会社だったのか。
外国人労働者の増加は、人材派遣業界にとって大きなビジネスチャンスとなっている。今年4月から始まった新在留資格「特定技能」による受け入れ制度では、人材派遣会社は「登録支援機関」として、実習制度の監理団体に似た役割を果たせる。
「特定技能」は実習制度と同様、人手不足の職種に外国人労働者を供給するためにつくられた。介護や建設、外食、農業などの14業種において、当初の5年間で34万5000人の受け入れが見込まれる。人材派遣業界が色めき立つのも当然だ。
そして、すでに同業界の参入が目立つのが、ホワイトカラーの仕事に就く外国人の就職斡旋あっせんである。ホワイトカラーの外国人が日本で就労ビザを得る場合、経営者や医師、大学教授などを除き、多くは「技術・人文知識・国際業務」という在留資格(通称・技人国ビザ)を得る。技人国ビザは原則、日本で専門学校か大学を卒業、もしくは海外の大卒以上の学歴がある外国人に限って発給される。
今回、上野氏が関わった案件に登場する人材派遣会社の場合、海外の人材をリクルートしていたのだと思われる。就労や留学で新たに入国する外国人のビザ取得に必要な「在留資格認定証明書」を申請していたからだ。一方、人材派遣業界が海外人材にも増して注目しているのが留学生である。
★「口利き疑惑」は氷山の一角でしかない
近年、日本で就職する留学生は増え続けている。法務省によれば、2017年には前年から約15パーセント増えて2万2419人と、過去最高を更新した。5年前と比べて2倍以上の急増だ。安倍政権が16年に発表した「日本再興戦略」(成長戦略)で、留学生の就職率アップを掲げたことが大きく影響した。当時は約35%だった就職率を5割まで引き上げようという政策である。
この政策によって、技人国ビザの発給基準が大幅に緩んだ。前回の拙稿「外国留学生急増の裏で進む“偽装就職”の闇」(5月24日)で詳しく書いたように、技人国ビザで認められるホワイトカラーの仕事に就くように見せかけ、実際には弁当工場などでの単純労働に従事する“偽装就職”も横行している。
そもそもホワイトカラーの仕事では人手不足は起きていない。外国人労働者を欲しているのは、日本人の嫌がる単純労働の職種なのである。そうした“偽装就職”の斡旋に、人材派遣会社が関わることが少なくない。留学生から数十万円の手数料を取ってのことだ。
もう一つの「成長戦略」である「留学生30万人計画」達成のため、政府は留学ビザの発給対象にならないはずの外国人の入国を認め続けてきた。結果、ベトナムなどアジア新興国から、出稼ぎ目的の“偽装留学生”が大量に流入した。そんな彼らを底辺労働者として都合よく利用してきた日本は、今度は留学生の就職率アップという政策を通じ、この国へ引き留めたいのだ。
外国人労働者急増の裏には、民間業者から政治家、官僚まで“オールジャパン”で加担する数々のインチキと利権の闇が広がっている。上野氏の“口利き疑惑”は、氷山のごく一角が露呈したにすぎない。
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【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】