<読んだ本 2019年2月>
山田洋次監督の映画はだいたい食事シーンには、力を入れてない。(とわたしは思う)
例外は、「幸福の黄色いハンカチ」の冒頭で、出所したばかりの高倉健が駅前の食堂でまずはビールを注文する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/60/0d56a53483433dd1cbec33475b3f0b98.jpg)
両手で拝むようにコップを持って口から迎え気味にビールを喉を鳴らして飲み、追加注文した醤油ラーメンとカツ丼をガツガツ食べるシーンくらいではないか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/5d/02a2d455800aa8439ac026330c582770.jpg)
健さんはこのたった二、三分のシーンのために二日間絶食したといい、印象に残る名シーンとなった。
BSでやっていた「男はつらいよ」シリーズ、1974年夏に公開された第十三作「寅次郎 恋やつれ」をなんとなく観てしまった。マドンナの歌子役は吉永小百合、1972年公開第九作「男はつらいよ 柴又慕情」以来の再登場である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/08/1a7836b209b71a961df21ea5daf926e9.jpg)
久しぶりに柴又に帰ってきた寅さんは、いま島根の温泉津(ゆのつ)温泉というところで宿の番頭をやっているという。
いつもの面々が勢ぞろいするなか、寅さんの「ひとり語り(アリア)」が始まる。
「朝、目が覚める。耳元で波の音がパシャパシャパシャパシャ」
「雨戸をカラッと開けると、一面目にしみるような日本海がある。これが日本海だ。なあ社長」
「ああ、今日一日もいいお天気でありますように。新鮮な空気を胸いっぱいすーっと深く吸った時、
下から女中さんの声が聞こえる」
「『番頭さん朝ごはんですよ』」
「『あいよすぐ行くよ」そう答えておいて、ポンポンポンッと布団を畳む。トントントントーンと階段を下りて
ガラッと湯殿の戸を開けてザブーンっと朝風呂に入る。
身も心もさっぱりしたところで朝ご飯ですよ。さっきまで生きていたイカの刺身ね! こんな丼山盛りしょうがを
パラッとかけて、醤油をツルツルッとたらし一気にパアーッと食っちまう。あとはアジのたたきと新鮮な卵」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/fd/199f39ec4152f05fea3a5a28d0746cf1.jpg)
ああ、それなのに食事シーンではなく、「語り」だけでわたしは打ち負かされてしまった。
途中の、
「さっきまで生きていたイカの刺身ね! こんな丼山盛りしょうがをパラッとかけて、醤油をツルツルッとたらし一気にパアーッと食っちまう」の辺で、わたしもゴクリと喉を鳴らしてしまった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/f1/5ef0110fc2fc2e24f1f8f6eb8fedf414.jpg)
函館の公共宿の朝食で擂鉢くらいの丼に山盛りにされたイカ刺し、そして呼子で喰ったイカ丼をまざまざと思いだしてしまったのだ。
さて、2月に読んだ本ですが、少なめの6冊、年間累積で13冊です。
1. ○燃える部屋 下 マイクル・コナリー 講談社文庫
2. ○大晦り 新・よいどれ小籐次七 佐伯泰英 文春文庫
3. ◎利休の茶杓 とびきり屋見立て帖 山本兼一 文春文庫
4. ○いのちなりけり 葉室麟 文春文庫
5. ○花や散るらん 葉室麟 文春文庫
6. ○銀の島 山本兼一 朝日出版
マイクル・コナリーは、あの元大統領ビル・クリントンもお気に入りの作家だが、この本「燃える部屋」は珍しく下巻がいつものような面白さに欠けた。
山本兼一の「利休の茶杓」はとびきり屋シリーズの四作目で、あいかわらず楽しく読ませてくれた。
もう一冊の「銀の島」は、ザビエル絡みの冒険譚だがわたしにはいまひとつであった。ただ、本のなかに温泉津温泉がでてきたのには驚いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/a8/6138a5f6ac61421d5e171c9e0a33493f.jpg)
「いのちなりけり」、「花や散るらん」は葉室麟の代表的三部作の第一部、第二部である。
「いのちとは、
――出会い
ではなかろうか、という気がしていた。ひとは生きているからこそ、何ものかと出会っていくのである。」
婚礼初夜、雨宮蔵人は花嫁の咲弥に、どのような和歌が好きかを教えてくれ、これぞと思う和歌を思いだすまで寝所をともにしないと言われてしまう。
長い月日をかけ、蔵人は己の心を表す和歌をみつける。古今和歌集、よみ人しらずの歌であった。
春ごとに花のさかりはありなめど
あひ見むことはいのちなりけり
(春になるごとに美しい花の盛りはきっとあるだろうけど、その花の盛りを見るということは私の命があってのことだ)
短歌という高尚なものにいままでぜんぜん興味を持たなかったが、ひょっとしてこいつは失敗したかもしれないぞ。
→「読んだ本 2019年1月」の記事はこちら
→「温泉津温泉(1)」の記事はこちら
→「温泉津温泉(2)」の記事はこちら
→「有福温泉」の記事はこちら
山田洋次監督の映画はだいたい食事シーンには、力を入れてない。(とわたしは思う)
例外は、「幸福の黄色いハンカチ」の冒頭で、出所したばかりの高倉健が駅前の食堂でまずはビールを注文する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/89/66934b7682b410acda29ba4ee0d22ed3.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/60/0d56a53483433dd1cbec33475b3f0b98.jpg)
両手で拝むようにコップを持って口から迎え気味にビールを喉を鳴らして飲み、追加注文した醤油ラーメンとカツ丼をガツガツ食べるシーンくらいではないか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/5d/02a2d455800aa8439ac026330c582770.jpg)
健さんはこのたった二、三分のシーンのために二日間絶食したといい、印象に残る名シーンとなった。
BSでやっていた「男はつらいよ」シリーズ、1974年夏に公開された第十三作「寅次郎 恋やつれ」をなんとなく観てしまった。マドンナの歌子役は吉永小百合、1972年公開第九作「男はつらいよ 柴又慕情」以来の再登場である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/08/1a7836b209b71a961df21ea5daf926e9.jpg)
久しぶりに柴又に帰ってきた寅さんは、いま島根の温泉津(ゆのつ)温泉というところで宿の番頭をやっているという。
いつもの面々が勢ぞろいするなか、寅さんの「ひとり語り(アリア)」が始まる。
「朝、目が覚める。耳元で波の音がパシャパシャパシャパシャ」
「雨戸をカラッと開けると、一面目にしみるような日本海がある。これが日本海だ。なあ社長」
「ああ、今日一日もいいお天気でありますように。新鮮な空気を胸いっぱいすーっと深く吸った時、
下から女中さんの声が聞こえる」
「『番頭さん朝ごはんですよ』」
「『あいよすぐ行くよ」そう答えておいて、ポンポンポンッと布団を畳む。トントントントーンと階段を下りて
ガラッと湯殿の戸を開けてザブーンっと朝風呂に入る。
身も心もさっぱりしたところで朝ご飯ですよ。さっきまで生きていたイカの刺身ね! こんな丼山盛りしょうがを
パラッとかけて、醤油をツルツルッとたらし一気にパアーッと食っちまう。あとはアジのたたきと新鮮な卵」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/fd/199f39ec4152f05fea3a5a28d0746cf1.jpg)
ああ、それなのに食事シーンではなく、「語り」だけでわたしは打ち負かされてしまった。
途中の、
「さっきまで生きていたイカの刺身ね! こんな丼山盛りしょうがをパラッとかけて、醤油をツルツルッとたらし一気にパアーッと食っちまう」の辺で、わたしもゴクリと喉を鳴らしてしまった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/f1/5ef0110fc2fc2e24f1f8f6eb8fedf414.jpg)
函館の公共宿の朝食で擂鉢くらいの丼に山盛りにされたイカ刺し、そして呼子で喰ったイカ丼をまざまざと思いだしてしまったのだ。
さて、2月に読んだ本ですが、少なめの6冊、年間累積で13冊です。
1. ○燃える部屋 下 マイクル・コナリー 講談社文庫
2. ○大晦り 新・よいどれ小籐次七 佐伯泰英 文春文庫
3. ◎利休の茶杓 とびきり屋見立て帖 山本兼一 文春文庫
4. ○いのちなりけり 葉室麟 文春文庫
5. ○花や散るらん 葉室麟 文春文庫
6. ○銀の島 山本兼一 朝日出版
マイクル・コナリーは、あの元大統領ビル・クリントンもお気に入りの作家だが、この本「燃える部屋」は珍しく下巻がいつものような面白さに欠けた。
山本兼一の「利休の茶杓」はとびきり屋シリーズの四作目で、あいかわらず楽しく読ませてくれた。
もう一冊の「銀の島」は、ザビエル絡みの冒険譚だがわたしにはいまひとつであった。ただ、本のなかに温泉津温泉がでてきたのには驚いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/a8/6138a5f6ac61421d5e171c9e0a33493f.jpg)
「いのちなりけり」、「花や散るらん」は葉室麟の代表的三部作の第一部、第二部である。
「いのちとは、
――出会い
ではなかろうか、という気がしていた。ひとは生きているからこそ、何ものかと出会っていくのである。」
婚礼初夜、雨宮蔵人は花嫁の咲弥に、どのような和歌が好きかを教えてくれ、これぞと思う和歌を思いだすまで寝所をともにしないと言われてしまう。
長い月日をかけ、蔵人は己の心を表す和歌をみつける。古今和歌集、よみ人しらずの歌であった。
春ごとに花のさかりはありなめど
あひ見むことはいのちなりけり
(春になるごとに美しい花の盛りはきっとあるだろうけど、その花の盛りを見るということは私の命があってのことだ)
短歌という高尚なものにいままでぜんぜん興味を持たなかったが、ひょっとしてこいつは失敗したかもしれないぞ。
→「読んだ本 2019年1月」の記事はこちら
→「温泉津温泉(1)」の記事はこちら
→「温泉津温泉(2)」の記事はこちら
→「有福温泉」の記事はこちら
お元気のご様子、素晴らしいです。
最近「終わった人」を読み、温泉様へRESしようかと、「読んだ本」タイトルをめくっていましたら、このページにたどりつきまいた。
あの健様のシーンですが、YOUTUBEを見ていましたら、菅原文太様の同じシーンがありました。
しかしながら、二日間の禁酒ではなく「絶食」ですか・・・。
だから、あの「うまそうな」、「しみわたるような」、コップ一杯のシーンが撮れたんですね。納得です。
これからも、温泉様のUPに期待しています!
いつもの「食べある記」のカテゴリーでなく、「雑読録」でのコメントは初めてでちょっと驚きました。
にゃあ様の気にいるような魅力的なラーメンが登場してないのかな。
「終わった人」って内館牧子の本ですね。
ぜんぜん終わらない人のわたしでありますが、
にゃあ様に敬意を表しまして近々必ず読んでみますので。
コメントの少ない拙ブログですが、
週に二千人を超える常連さんたちに訪れていただいています。
今後ともよろしくご愛顧のほどをお願いいたします。