あれれ、浴衣を着ているひとが多いぞ・・・。「なんですかい、この先で祭りでもやっているんでござんすかい?」へぇ、なに、もうちいと歩けばぴいひゃらどんと笛太鼓が聞こえてくるでごぜえますよ、と応えてくれる。(くれないって!)向こうから歩いてくる人にそう訊きたいほど、明月院(めいげついん)への小路は人で溢れかえっている。なるたけ梅雨空っぽい日の空いてそうな時間帯を選び、出掛けてきてこの始末である。この初夏の明月院で鎌倉歩きをいったん休み、秋になって涼しくなったら再開するとしよう . . . 本文を読む
「ウヒョー!」意表を突かれる、とはこのことだ。なんだこりゃあ。本当に、ここトイレなのか。奥行きがある青い空間の先には洒落た縦長な水槽があった。どうやら目指す便器はその後ろにあるようだ。恐る恐る前に進み水槽を覗くと、小さな無数のクラゲが元気いっぱいに泳いでいる。クラゲは、海に映っている月に似ていることから海月ともいう。その海月が目の前の青い水中を音もなく、飛ぶように舞いあがり、束の間漂い、静かに舞い落ちている . . . 本文を読む
朝食の時間になり食堂にいったが、もしかしてこれからフェリーに乗るかもしれないと思うとあまり食欲が出ない。昨日宿に着くまでは陸路で長崎へ向かおうと固く決めていたのだが、宿のご主人に当たり前のように長崎いくならフェリーを使うのだろうと決めつけられての会話に、急に迷いが生じたのだ。つまりリセットされちゃったのだ。(よし、悩むのはヤメだ。港までいき波の状態で乗るかどうか決めるとしよう)そう心が決まると、少し食欲が出てきた . . . 本文を読む
「東のキチジ、西のアカムツ」という。東の横綱キチジ(吉次)はキンキとかメンメとも呼ばれる。西の横綱アカムツはノドグロの名のほうが有名で、どちらもキロあたり一万円以上つくのはざらという超高級魚である。ノドグロは新潟、富山、石川など日本海沿岸域で獲れるが、意外や北限は青森であり、山形の鶴岡でも獲れる。というわけで、今夜のミッションは鶴岡でアカムツなのだ . . . 本文を読む
舎利殿手前にある「妙香池(みょうこうち)」は建武二年(1335年)頃の境内絵図にすでに見られる、創建当初からの放生池である。「虎頭岩」と呼ばれる岸の露出岩盤を景観の中心として復元したそうだ。放生池(ほうじょうち)とは捕えた魚や参拝者が持ちこむ育ち過ぎた亀などを放してやるための池のことである。ここもそうだが鎌倉の寺院はたいていゆるやかな坂で登りになっていく。円覚寺の伽藍は、鎌倉独特の谷戸と呼ばれる丘陵地が浸食されてできた谷に沿って建てられているからだ . . . 本文を読む
東京のはずれの下町をぶらぶらしているうちに昼ごろになり、北海道料理を出す小体な店をみつけてふらりと入り、カウンター席に座り珍しいラムカルビ焼肉を肴に軽く呑んでいると、入口あたりが急に賑やかになった。「とりあえずナマ四つ、それとラーメンサラダね!」オマエ独り勝ちだったんだから、奢れよな! テーブル席に陣取ったのは、どうやら、徹夜マージャン明けの四人組らしく、徹夜特有の昂揚感に侵されているのだろう、飲む前からハイな気分になっていて妙に明るいし騒がしい . . . 本文を読む