「ゆ華(ゆばな)」と書かれた洒落た暖簾が風にゆれている。ほぉ・・・口能登にある「ちりはまホテルゆ華」・・・なかなか立派な建物である。入り口を抜け、右手のフロントに進む。「いらっしゃいませ」「あのぉー、本日、宿泊のものなんですが、早く着きすぎちゃって・・・」「申し訳ございません。当館のチェックインは午後三時となっておりますので、ちょっと・・・」フロント係りは後ろの壁に掛かった時計を見あげる。まだ午後一時半前である。「・・・ですよね」 . . . 本文を読む
前森高原は山形の最上町にあり、知る人ぞ知るといった高原である。乗馬ができたり、アイスクリームを作ったり動物と触れ合うことができるのだが、この高原に抜群に旨い蕎麦屋があるのだ。高原の蕎麦屋の屋号は「はらっ葉」である。「おまたせしました、はらっぱ蕎麦です」おっ、これだ、これだ。前回に来たときには板そばを食べたのだが、周りで<はらっぱ蕎麦>を旨そうに食べているひとが多くて、次回は迷わずそれを食べようと決めていたのだ。板そばもここは旨かった。現にいま店にいる常連と思える男性客たちは、いずれも板そばを注文している . . . 本文を読む
宿は、大湯のすぐ前にある、最近大人気売り出し中の「寿命延(じょんのび)」をとった。じょんのびとは「ゆっくり」とか「リラックス」の意味で、わたしはてっきり新潟の方言とばかり思っていたのだが、新潟と県境の長野の方言でもあるそうだ。寿命が延びるほどの癒しを泊り客に与えてくれる宿を目指しているのだろう。宿には貸切風呂が二つあって、開いてれば誰でも自由に使える。立寄りでも入れる温泉なので、なかなかタイミングが難しい . . . 本文を読む
石川県の能登にある、千里浜(ちりはま)は珍しいことに波打ち際を車が走ることができる。どこら辺にそれがあるかというと、金沢駅から羽咋方面に向け車で三、四十分走ったあたりにある海岸だ。ちょうど能登半島の西側の付け根である。渚には、背景に抜けるような青空がほしいところだが、こればかりはしょうがない。砂が充分に固く締まっているので、乗用車だけでなくトラックやバスさえも走れる、全国唯一の道路である。だから砂浜なのになぜか道路標識があったりするのだ。なぎさドライブウェイと呼ばれるその観光道路は、全長の距離が八キロもある。この渚、潮干狩りも楽しめるし夏は海水浴もできるが、強風のときは閉鎖される。砂が締まっていないところもあるので、駐車するときには注意が必要だそうだ . . . 本文を読む
信州の野沢温泉は野沢菜発祥の地であることと、高温の温泉で知られている。山陰の湯村温泉や九州の杖立温泉と比べても、引けをとらないほど熱い温泉である。山の斜面に広がる密集した温泉地なので、広い路は少なく歩いているひとにぶつけないように車同士ですれ違うのにも苦労する。野沢温泉の湯を発見したのは僧やら、山伏やら猟師やらと諸説があるのだが、西暦七百年代というからかなり古い。江戸時代になって飯山藩主の松平氏が、一般の人々にも湯治を許可した後、多くの人々が湯治という形でこの山里を訪れるようになったと言われている。点在している十三の外湯は、村人たちの共有財産で湯仲間という制度でがっちりと守られてきた。 その外湯は天然温泉百パーセントかけ流しで、もちろん旅行客も利用できるが、猛烈に熱いのを覚悟したほうがいい . . . 本文を読む
名店の蕎麦はシンプルな「笊」とか「盛り」に限る。蕎麦については「オマエは狭量だ」といわれても甘んじて受けるが、こと「うどん」に関しては、わたしは広量、きわめて寛大である。讃岐、稲庭、水沢、伊勢、氷見、吉田、太いの細いの幅広なの、とにかくなんでもこいだ。もちろん、腰のない博多うどんも大好きだ。首都圏でも「博多うどん」のファンはそれなりに多いと思う。東京駅八重洲地下街でいつでも手軽に食べられた「博多うどん」が閉店してガッカリしたひとはわたしだけではあるまい . . . 本文を読む
別名、春告(はるつげ)鳥の鶯は警戒心が強く、声は聞こえてもなかなか鳴いている本体を観るのは難しい。でも、こちらの鳴真似がうまいと、闘争心が警戒心を上回ったのか、たまに近寄ってくる。よし、うまくいくかどうかわからないが、久しぶりにやってみるか。まずは唇を湿らせる。「ホーホケキョ! ケキョ、ケキョケキョケキョ、ホー、ホーケキョ!」ケキョケキョが侵入者に対する威嚇、ホーホケキョが縄張りの宣言である。本物の鶯が、よそ者に縄張りを侵入されたと思ったのか、押し黙った。ふふふ、やった! . . . 本文を読む
新潟土産の定番といえばずっと「大阪屋」と決めているのだが、新潟市内の土産に一度買い求めた「越乃寒梅マドレーヌ」が好評であったため、今回の新潟旅も同じものにした。信濃川に架かる萬代橋の袂にあるホテルオークラ新潟で「越乃寒梅マドレーヌ」は売っている。個数が限定されているので売切れのときもあるのらしいのだが、今回も手に入れることができた。一個食べたが、銘酒のそこはかとない風味が甘いものが苦手な酒呑みにも絶対に口に合う . . . 本文を読む
吾妻線は、群馬県渋川から嬬恋に向かって吾妻川に寄りそうように走る地方鉄道路線である。沿線には、名湯の草津温泉や四万温泉などを始め、かなりの数の温泉が点在している。小野上温泉もそのひとつだ。車で首都圏から来ると、すぐそばにある伊香保温泉とだいたい同じ距離である。草津に向かう道には途中大きなコンビニがいくつかあり、B&Bや素泊まりで泊る客、酒類をこっそり持ち込む客には至極便利だ . . . 本文を読む