湯野浜温泉には起源の伝説がある。『昔むかし。傷を負った亀が砂浜で休んでいるのを一人の漁師が見つけた。翌日もその翌日も。いぶかしんだ漁師が浜の砂に手を入れてみると・・・温かい!』この伝説がこの宿の名前「亀や」の由来ともなっているそうだ。大浴場のある三階に降り更衣室に入った瞬間、漂うかすかな消毒臭でみるみるわたしのテンションが下がった。(ひとつでも、源泉浴槽があればいいのだが・・・ . . . 本文を読む
青森から山口までの日本海側の海岸線はほぼすべて走っているので、海っぺりの街道とかレストランなどの飲食店、そして宿の売りが<夕日>だということをわたしはたっぷり実感している。短い夕日のイベントが終わると、ダイニングにはまた心地よい静けさが戻った。メインの皿は山形牛ヘレのロースト、ごぼうのピュレ、跡の和からしソース。それに孟宗飯、孟宗汁、香の物である。(今夜の夕食はまあまあ完食に近い・・・な)そしてマラソンで言えばゴールのデザート。めでたく久しぶりの完走だ . . . 本文を読む
本館五階から、長い連絡通路を抜けたところが夕食会場のダイニングがある別館「龍宮殿」だった。会場全体を見まわしてなにかしら違和感を覚えた。案内されたテーブルにつくとその正体がわかった。テーブルの上には一枚の懐石メニューがぺらりと載せられているだけで、一切他にはなにもないのである。外は夕暮れが始まっているが、雲がぶ厚いのでよほど運が良くなければ夕日がみられそうにない。いつものように焼酎の水割りを注文して食事のスタートだ . . . 本文を読む
海もわたしもクーラー嫌いである。さきほどまで牢名主のように眠りを貪っていたかと思うと、畳に移動していた。温まると冷えた畳みにワープしている。バテバテ状態のようで可哀相だ。なにしろ「♪海はまだ十ン歳~」をとっくに超えているからなあ。(えっ、おいまさか、逝っちゃったのか!)テーブルの下を覗きこんで肝を潰した。息は・・・規則的なお腹の動きで<息してる>とわかってほっと安堵する。そのエンギでもない手つきはやめろ。そっと触ると、恐ろしく無口な猫なのにびくりとして「くぅーん」と子犬のような可愛い声を洩らす。 . . . 本文を読む
「おっ、小肌(コハダ)があるぞ」初めて入った店でメニューをみると迷わず注文した。夏場はとにかく鯵などの光ものが断然旨くなる。出世魚であるコノシロだが、コハダとよばれるくらいの若い時が、一番価値があり、夏場が旬である。「寿司はコハダに始まり、コハダで終わる」とまで言われる。江戸前鮨職人に愛される安くて美味しいこのネタは酢と塩で旨みを引きだすのだが手間と時間がかかるのだ。小肌を食べ終わると、次にメニューで目を付けていたハゼの天ぷらを頼む
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