大きなホテルの物寂れた駐車スペースで車を離れる。20メートル程先の浜へと真っ直ぐに視界が開けると、潮風が西風に乗って吹き付けてくる。それは飛沫が舞い上がったかと思うほどに塩が強く凝縮している。引き潮の干潟は遥かに続いて、海水は遠く見えない。塩水の浮き出る扇形に広がる砂地は、折からの雲の隙間に指す光線をぎざぎざに跳ね返す。熊手で掻いたような波の凋衰の爪痕が、無限のパターンを作っている。生息に好都合な貝や蟹やふなむし類は鳥の攻撃に備えて身を隠す。チュチュウチュと音がするので其の存在が確認できるという。再び道路へと戻り、錆が所々浮かぶ閉鎖中のホテルを回り込むと、若いペアーが靴を履き替えている。ブレーメンから来たらしい。ゴム長靴は持っているが、引き潮の時間は過ぎたので今日は沖には出ないという。沖の島に着いてから満ち潮になったなら帰りに馬車を使うしかないらしい。シーズンオフの閑静な浜を楽しむということだ。
参照:
市長ズミット博士の港から [ 歴史・時事 ] / 2004-12-07
麻痺に遠のく外界 [ その他アルコール ] / 2004-12-09
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市長ズミット博士の港から [ 歴史・時事 ] / 2004-12-07
麻痺に遠のく外界 [ その他アルコール ] / 2004-12-09