Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ケープタウンの白ワイン

2004-12-11 | ワイン


今日の料理ワインは、南アフリカ共和国ケープタウン近くの白ワインである。チェニン・ブランという代表的な葡萄種である。2.99ユーロはキッチン用としての上限に近いが、ここドイツワイン街道では白ワインは赤ワインよりも随分と高価である。地元のワインを保護するために配慮されているのかもしれない。欧州とは反対側の緯度に位置するアフリカ大陸先端の樫の森に包まれるこの地域のワインは定評がある。しかし決して安くないので余り試す機会はない。

さてこのワインは辛口に作られているが、その葡萄種の個性はシャドネーのシャブリなどに共通する強いアロマが支配しているようである。はっかのような味が最後に残るのは良いが、其の前の蜂蜜の灰汁のような人工甘味料のような味が不愉快である。酸・アルコールとのバランスが取れていたならばきっと素晴らしいのだろう。

この味に英国の白ワインを重ね合わせる事も出来るが、ワイナリーを経営するのはオランダ系移民も多いと想像する。アパルトヘイト(人種隔離政策)時代のことを思い出した。その当時から彼の地は、欧州を越えるエレガントな文化風土を保持していて有名だった。しかし政治的情勢は混迷していた。諸外国がアパルトヘイト廃絶に向けて制裁に踏み切っていた時期である。そんなときに南半球のこの地から航空書簡を受け取った。何気なしに裏返して見ると、封が一度開けられて再び閉められた痕跡に気がついた。検閲というものを初めて目の辺りにした。全く政治的な発言をしない女性からのものだったので尚の事恐ろしいと思った。

その後時代は急激に大きく移り変わり、マンデラ氏が現役のころそこからの医学者にマンハイムのドイツ語学校で出会った。大統領を尊敬している同部族の彼はある日こんなことを言った。「パスポートを絶えず携帯しているけど失くしたらどうしよう。」。それに対して「僕はいつも運転免許書だけでパスは持っていないけれど、」と答えると、彼は「君、それは直ぐに逮捕されるけど、大丈夫?」と親身に心配してくれた。

その後、老後を南半球の極楽で過ごすために彼の地へと旅たった定年退職者や、同地で店を開いている英国系の人や数多くの人から現地の様子を伝え聞いた。それでも検閲の驚愕やあの医学者の不安が余りにも強く印象に残っている。未だに機会はないが、いつか是非訪れてみたいと思っている。
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