日本庭園の表口は、役所の裏の路地にあって趣はあまり無い。大通りのラウテルシュトラーセに面した裏口の方は一寸良い。広さは四千坪であるから数十年前ならば日本の豪邸の前栽の広さである。現在ならば温泉宿程度の広さだろうか。そのこじんまりとした広さが、こうした日本国外にある日本庭園としては成功している大きな要素となっているだろう。
元々は石切り場を背に地元の繊維加工会社のオーナーの屋敷があったという。この庭を改造して、日本庭園へとする計画が持ち上がったのが、1993年で比較的新しい。姉妹都市である文京区の力添いなどを受けながら、四年間の準備期間を経て、具体的に庭園作りと管理のための非営利団体が出来たのが1997年である。現在も公共の土地と資金援助を受けて運営されている。
大きな池がこの庭園の中心に居座っている。ここの土地は元々、四方にため池がありこの水が大きな役割を果たしている。もちろん水はフィルターで洗浄されてポンプアップされている。それでも2003年の熱気による蒸発や水漏れで水道代は大分の額に上ったようだ。鯉もすくすくと育っているが、まだまだこれからだろう。米国キャンプの関係でこの町はケータウンと呼ばれるらしいが、何れはコイタウンと呼ばれるのだろうか?
何よりもの特徴は、ところどころに目立つ雑食砂岩の色合いと風情がここの土地らしく、日本の樹木が集められた庭に良いアクセントを与えている。反対にその他の石や灯篭などは、どうしても違和感があるが、何れ苔むして来ればしっとりとして来るのかもしれない。いずれにしても、土地を生かした庭園作りをさらに目指してもらいたい。残念ながら写真は無いが、雑食砂岩の括れを流れる前栽の水の息吹はなかなか素晴らしい。一つには、この地方に滝らしい滝が少ないことによるのかもしれない。
日本の樹木といっても同じ種を気候に合うようにこちらで品種改良したもので、よく見ると違いはあるのだろう。季節にもよるがどれ程開花する樹木があるのかは分からない。日本庭園の価値は、手入れの手間に比例すると思うが、ここの程度は個人の大庭園の域を出ないであろう。寺院の有名庭園のレヴェルは到底無理としても温泉宿程度は維持して貰いたい。
コケが生えるのを待っていると言うが、庭園作りには限が無い。予想するにこのままで推移すると英国庭園と日本庭園の中間の線に落ち着くのではないかと思う。