Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

躁状態での酸状態吟味

2007-12-20 | 試飲百景
陽射しは強くも、風があって寒い。氷点下に至っていないと五度ほど温度が高いので、随分と暖かく感じる。しかし、微風が吹く限り裸にはなれない。

ギメルディンゲンのカペーレンベルクと呼ばれる小高く盛り上がった丘の下に車を停める。そこから、高度差八メートルほど登り、太い稜線を更に高度差三メートルほど登っていく。

反対側に降りていくとそこはマンデルガルテンと呼ばれる地所で、グランクリュの地所ともなっている。1456年以来台帳に載っているメーアシュピネと呼ばれる地所である。丘の斜面と平地のような二箇所があるが、有名な醸造所二件のクリストマンとカトワールは、現在この平野部に横に並んでリースリングを栽培している。

そこから再び小さな丘を越えて車へと戻っていくと、既に四十分ほど過ぎていた。そこから町中へと車を走らせ、いつもの場所に車を停めて呼び鈴を押す。姿を見られていたのが応答もなくドアが開かれる。

先代の奥さんはいつもの調子で躁状態である。最新リストを貰ったからと言うと、「まだ充分にないからね」と答える。「売るものはあるでしょ」と念を押すと、旦那が出てくる。そこで、「グーツヴァインとリッターヴァインもないの?」と訝ると「それはある」と先代。「ここに12月からと書いてありますよ」と正すと、もぞもぞとされる。

それでも、楽しみにしていた当てが外れなかったので、ほっとして試飲をはじめると、リッターヴァインは今ひとつ埃臭い。瓶を見ると半分ぐらい空いているので、時間が経っているようだ。その分、酸味も和らいでいるのだが、競争相手の物とは魅力が薄い。

そこで、「手済みで自己栽培の葡萄で作っていると書いてあるが」と尋ねると「そうそう、全部家の」と言ったかと思うと、「いやフォルストの仲間のとこと、ギメルディンゲンの両方だが、栽培方法も摘み取りも家の方で」とあやふやになる。

「バイオで栽培して、それで手摘みでしょ」とこちらが勝手に決めつけて、「シュティフトに似ているけど、そうでしょ?」ととことん絞る。「まあ、、、、違うけど」。しかし、フォルストにはそこから外れたものは殆どないはずなのだ。

さて、グーツヴァインの方は新たに栓が抜かれた。流石に素晴らしい香りがする。初めから「あまり早く出したくないんだよね」と弁解していたように若干酵母臭がある。それでも今年の三週間の早熟は、こうした年内の楽しみに繋がった。ライタープファードの斜面の間下で、リンツェンブッシュのとなりの地所の葡萄らしい。道理で、ライタープファードのような青林檎系とパイナップル系が混ざっている。それにしても、昨年のものとは大分異なり、繊細である。

「2007年度産は、既に他所の醸造所バッサーマンやブールで試しましたが、酸が良いですね」と、それに口ごもる様子を見て「違いますか?」と追い打ちを掛ける。

「丸みがある」と自己評価するので「酸の種類が違いますよね、良い年ですよね」と言うと、「非常に良い年だ」と答える。

昨年もリッターヴァインは販売されていたのだが、春には売り切れていて知らなかった。「ほらさ、なにもいつも高級なヴァインばかり飲む必要はないから。ザウマーゲンなんかにはこれでプファルツはいいんじゃないの」と言うから、ザウマーゲンの高品質には反論せずに「まあ、これを家で飲んで翌日などの変化を見てスタンダードにするかどうか決めますよ」、そして、「今年は廉くて美味いワインの競争が激しいからね」と価格カルテルに一矢を放っておいた。

どちらも素晴らしいワインである。例年は酸が厳しくマニアにしか受け入れられないこの醸造所のリースリングであるが、2007年産はその酸の質が異なる。林檎酸の比率が異なるのである。

いつものように、ワインを取りに倉庫に行くと、これまた新鮮な顔が迎えてくれて、小春日和の夕刻を迎えるのである。
コメント (2)
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