Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

降臨の気配に天国作戦

2007-12-29 | 雑感
チャイルドポルノの大強制捜査がクリスマス二日目に行なわれたようだ。作戦名「ヒンメル」で操作対象となったのが一万二千人とあるから大規模である。バイエルン州だけで一千九百人が対象となった。それとは別に海外七十カ国での容疑者の特定がなされている。

前回はハレを中心に行なわれた作戦であったが今回はベルリンが司令塔であったようだ。そのためかハレの地元の中部ドイツ放送が前情報を流して、直前にデータを消去した容疑者も多かったようである。勿論通常の消去では痕跡からその証明が可能となる場合が多い。

主に手入れされた業者への支払いやネット上での目立ったダウンロードの動きを一年以上も前から内偵していた結果が今回の成果に結びついたようである。クレジットカード会社の支払い伝票の捜査への提出協力も大きい。そればかりかスパムメールを誤ってダウンロードしてしまったならば、警察に届けなければ容疑として扱われると強硬な立場を採っている。

こうした市場がある限りは、最も問題とされる児童への虐待があとを絶たない。また市場がなくとも趣味の世界として虐待や殺人が繰り返される例がこと欠かないのが、こうした性的犯罪の特徴でもある。

この問題には、ゆえに二つの課題があるのだろう。一つは、市場の有る無しに係わらない虐待の犯罪行為の防止、もう一つはそうした性的偏向の社会的な評価であろうか。

前者は、後者の偏向が社会に存在する限り、いかなる量刑をもっても防止は出来ない。だから、こうして大量のコンピューターが没収されて持ち主が刑罰や社会的制裁を受けても同じように再び繰り返される。また後者においては、こうした偏向がどのように評価されるかによって、前者の犯罪に当たらないアニメーションや漫画における同等の表現の規制にも更に踏み込むことになる。そこでは、所謂、エログロの表現は規制されるのが、その効果の如何に関わらず当然だとされる。

そうした規制に対しては一切「表現の自由」を盾にした反論は無意味である。その反面、少年少女や子供のヌーディズムにあまりに不寛容であることは、さらなる文化問題を引き起こすに違いない。しかも、今回もザクゼンアンハルトなどで市長がこの捜査に引っかかり辞任したことのみならず、こうした幅広く掛けられた網が間違えば政治的にも使われかねない危惧をもっている。そしてそこには、ある種プロテスタンティズムの強い意志が見え隠れすることも大変不快である。

事情は若干異なるが、ネットでの音楽交換サイトのユーザーの摘発も日夜数限りなく進んでいる。突然、捜査令状を手に、警察が一般家庭を訪れ、家宅捜査後に該当のコンピューターが押収されて二度と戻って来ないと言われる。その多くの利用者は、戸主と同居しているティーンエイジャーなどで、莫大な罰金はネット回線の契約主である戸主が支払わせられることになっていると言う。その責任能力には法的な議論が存在するようだが、否応無しに弁償を迫れているのが現状のようである。

これらに関連してますます身近にあるのが、新年冒頭からの効力を発揮する携帯電話を含むあらゆる電話通話等の半年間に渡る電信記録の保管法案である。テレコムでは百テラバイトの記録スペースが必要になると言う。EUのガイドラインでは重大犯罪にのみこの記録が捜査に使われ法廷で証拠とされるが、ドイツの法案ではより広範に犯罪捜査に使える。一年後には、ネット利用も全て半年間、その記録が保存されることになる。

しかしそのEUガイドライン自体が不安定なものであり、また実効果にも疑問が持たれる。実際に、外国人などの方が一般の市民よりも様々な携帯電話の番号を保持しており、また不透明な携帯電話同志で通話をする限りなんら事件と無関係に通話がされるのであろう。

どうもこれらの処置は、犯罪防止どころか、重大犯罪に対する訴追立件にもそれほど効果がないようにしか思えない。新聞の紙面の隣の記事に目をやると、「リベラリズムは死んでいる」と見出しが付けられ、ベルリンの大連合政権下で成立した禁煙やら最低賃金、進行中の高額報酬・給与議論のように、一時は元気の良かった自由党が孤立して来ていることが書かれている。いよいよ、テロとの闘争で幕開けした二十一世紀の気配が日常生活に迫ってきているようだ。
コメント
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