Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

限り無しに恨み尽くす

2019-09-03 | 
マンハイムへの途上、車中のラディオが面白い話をしていた。アウシュヴィッツの生き残りで、イングリッシュ室内合奏団の創始者の一人の女性の話しである。アニタ・レスター・ウォルフィッシュと言う女性で、昨年ドイツ連邦議会で講演をしたようである。裕福なブレスラウのユダヤ人家庭に生まれ育ち、17歳でアウシュヴィッツへと送られる。趣味と教養として習っていたチェロを弾けたことから、収容所の少女楽団に採用されて命拾いをしたという。そのお蔭で、一日中演奏をさせられたというが ― ヨーゼフ・メンゲルの前でも演奏したと語る ―、 英国軍によって解放されるまで生き延びた。

ドイツの地は踏まないという強い恨みを持ち続けていたが、最後まで恨み続けることで自分自身を潰すと考えて、講演に至ったようだが、そこで語ったことの一部として、「最早今日、アンティセミティズムは問題ではない、問題であるのは今欧州での難民に発した直面した問題である。」語った。

この考え方を肝に銘ずるべきだ。要するにAfDの様な連中がアンティセミティズムを口にしなければ逮捕されない一方、その仲間であるPEGIDAなどがあからさまに反イスラムのアピールをしている事こそが同じだけの問題であると、ホロコーストの当事者が語る以上、無視できないのである。

そこでアジテート演説をするような元祖バイロイト音楽祭音楽監督のような輩をとことん叩き潰さなければいけないのはそれ故に当然の良心的な市民の義務なのである。そうした背景無しには、所謂まともな機関のまともな官僚などがティーレマンを結果的に排除するような方向へと動くのは当然の事であり、こうした事情を知らずには我々がなぜあそこまで元祖を追いつめるかが理解できないだろう。

なにもモサドのように執拗に追いかける訳ではなく、またザルツブルク州の責任者が「我々はティーレマンを排斥しようとはしていない。」という言葉に表れるように、そのもの「自ら去ね」と形を変えて発言しているのでしかないのである。それを敢行するために天敵のように現ミュンヘン歌劇場支配人のバッハラーを復活祭支配人に指名したのであり、それをしても即座に辞任しなかったティーレマンは最後まで後手に回ることになる。

来年からバイロイトで「指輪」を演出するヴァレンティン・シュヴァルツが「トュ―ランドット」を演出して初日が開いた。新聞評によると未完のままの上演でお客さんに戸惑いがあったようだ。ダルムシュタットはなぜか質が高いので、歌手や演奏は良かったようだ。

キャストやスタッフを見ると知った顔が出て来た。二月にミュンヘンで「ミサソレムニス」の合唱を担当していた指揮者がダルムシュタットに移っている。それを知ると明らかに左遷のようにしか思えない ― 合唱のバランスが悪かった。日本で問題になった「タンホイザー」もこの人だった。来年は千人の交響曲もあるので、現在の主任が責任を持つのだろう。とても重要である。



参照:
Die Holocaust-Überlebende Anita Lasker-Wallfisch erhält Deutschen Nationalpreis, SWR2
真夏の朝の騒がしさ 2019-07-26 | アウトドーア・環境
新支配人選出の政治 2018-11-13 | マスメディア批評
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