■ 2010.12.14の各国の国債金利 ■
■ 「出口戦略」は遠い過去 ■
皆さん、昨年のFRBのニュースで多く見かけたワードは何だったか覚えていらっしゃるでしょうか?
リーマンショック後の各国中央銀行の金融緩和策が発表される度に、「出口戦略」という言葉も同時に語られていました。
「過剰に供給される資金によって、インフレが発生したら中央銀行は金利を引き上げてインフレを抑制する」事を前提に、金融緩和策が次々と実行されてゆきました。
さて・・・実際に金利が上昇し始めましたが、各国の対応はどうでしょうか?
■ 財政の健全化を図るEUと、財政の拡大が止まらない日米 ■
PIGS諸国を抱え、ソブリン・リスクがクローズアップされる欧州では、一足早く緊縮財政に舵を切っています。
下院で共和党が多数を占めたアメリカでは、従来の様な大盤振る舞いとまでは行かないまでも、QE2の6000億ドルを元手に、今後も財政は拡大する事は確実です。
政局の混乱から思い切った経済政策が打てない日本では、法人税5%減税を政府が打ち出しました。その分税収が不足する訳ですから、予算を縮小できない限り国債発行額が増え、こちらも財政拡大と言えます。
■ 「15分でインフレの目を摘んで見せる」と言ったバーナンキ ■
債権金利の上昇で、市場ではデフレ懸念が一転、インフレ懸念が台頭しています。
それを受けてFRBのバーナンキ議長は「FRBがインフレ率を2%未満に抑制し、必要な場合には緩和的な金融政策を転換することができると100%確信している。必要なら15分で利上げすることも可能だ」
と発言した様です。
すかさずロン・ポール議員が「「物価が上昇し始める場合に、15分でそれを止めることができるというバーナンキ議長の楽観的な考え方を見る限り、主観的価値理論や物価が心理的要因でも上昇するということを十分理解していないと思う。人々が信頼を失うと物価は上昇し、それをすぐに止めることはできない」と切り返しています。
■ 日銀の過去の利上げが何をもたらしたか ■
過去、日銀はゼロ金利政策導入から1年半が経過した2000年8月に0.25%の利上げに踏み切りました。しかしその結果、日本経済は失速し日銀は再度のゼロ金利政策と量的緩和を余儀無くされました。その後、日本は失われた10年を彷徨う事となります。
需要が喚起されて発生する物価の上昇は正常なインフレです。これに対しては中央銀行の利上げが効果的に働きます。
しかし、財政不安によって国債金利が上昇する場合は、中央銀行は既に金利の制御権を失っています。
① ゼロ金利政策と量的緩和で過剰に資金が供給されている。
② 失業率が高止まりし、需要は低い。
③ 過剰流動性がコモディティー市場に流入し、物価上昇圧力を生む。
④ 通貨が下落して、輸入コストが増大し物価上昇圧力が高まる。
この様な状況でさらなる利上げを行えば、実体経済に与える影響は図り知れません。中央銀行は金利決定の主導権を失ったまま、債権市場が金利を決定する事態に陥ります。
国債金利の上昇を抑える為に中央銀行が国債を直接買い入れ、通貨を増刷すれば、さらなるインフレが発生します。これこそが不況とインフレが同時進行するスタグフレーションです。
■ 資本流出がインフレを抑制していた日本 ■
日本を例になぞらえると、「日本は20年間もデフレ基調だったのだから、アメリカもデフレになるだろう」という方も多いと思います。
しかし、日本は日銀が量的緩和で資金を供給する一方で、その資金は有効に国内市場には還元されていませんでした。
① 円キャリートレードの発生。
② 貿易黒字を企業が内部保留。
③ 企業の内部保留が、海外投資として流出。
④ 老人を中心とした預金を金融機関が海外で運用
⑤ 政府の米国債買い入れ
日本の資本流出の最大の原因が、国内金利の低さでした。
郵貯や国内の金融機関が日本国債を買い支えた為、日本では国債金利が群を抜いて低く、資金の海外流出を加速していました。
■ 金利を抑制できない米国 ■
現在アメリカの国債金利は既に上昇し始めました。
アメリカ国債の多くを海外の投資家や金融機関が保有しており、米国財政が持続不可能と判断すれば、米国債の売り圧力はさらに高まります。
バーナンキがどんなに強がりを言っても、FRBは既に金利を制御出来なくなりかけています。
■ 危機は米国発 ■
日本の国債危機に私も警鐘を鳴らしてきましたが、日本国債が単独で危機に陥る可能性は5年以内には低いと思われます。
日本国債の危機は、必ず米国発で訪れます。
米国債が暴落して、日本の海外債権が消失した時、GDP比200%という国債発行残高が日本国民に襲い掛かります。
日本国債が単独で暴落するのであれば、預金の減少や、国債の入札状況である程度の予測が可能です。
しかし、米国債の暴落は予測不能です。
① 格付け機関が一気に米国債の格付けを引き下げる
② 米国政府がいきなりデフォルトを宣言する
③ アメロなど、トンデモ通貨がいきなり現れる
④ 中東や東アジアで戦争が勃発する
・・・引き金は全て、彼らが握っています。
■ 「出口戦略」は遠い過去 ■
皆さん、昨年のFRBのニュースで多く見かけたワードは何だったか覚えていらっしゃるでしょうか?
リーマンショック後の各国中央銀行の金融緩和策が発表される度に、「出口戦略」という言葉も同時に語られていました。
「過剰に供給される資金によって、インフレが発生したら中央銀行は金利を引き上げてインフレを抑制する」事を前提に、金融緩和策が次々と実行されてゆきました。
さて・・・実際に金利が上昇し始めましたが、各国の対応はどうでしょうか?
■ 財政の健全化を図るEUと、財政の拡大が止まらない日米 ■
PIGS諸国を抱え、ソブリン・リスクがクローズアップされる欧州では、一足早く緊縮財政に舵を切っています。
下院で共和党が多数を占めたアメリカでは、従来の様な大盤振る舞いとまでは行かないまでも、QE2の6000億ドルを元手に、今後も財政は拡大する事は確実です。
政局の混乱から思い切った経済政策が打てない日本では、法人税5%減税を政府が打ち出しました。その分税収が不足する訳ですから、予算を縮小できない限り国債発行額が増え、こちらも財政拡大と言えます。
■ 「15分でインフレの目を摘んで見せる」と言ったバーナンキ ■
債権金利の上昇で、市場ではデフレ懸念が一転、インフレ懸念が台頭しています。
それを受けてFRBのバーナンキ議長は「FRBがインフレ率を2%未満に抑制し、必要な場合には緩和的な金融政策を転換することができると100%確信している。必要なら15分で利上げすることも可能だ」
と発言した様です。
すかさずロン・ポール議員が「「物価が上昇し始める場合に、15分でそれを止めることができるというバーナンキ議長の楽観的な考え方を見る限り、主観的価値理論や物価が心理的要因でも上昇するということを十分理解していないと思う。人々が信頼を失うと物価は上昇し、それをすぐに止めることはできない」と切り返しています。
■ 日銀の過去の利上げが何をもたらしたか ■
過去、日銀はゼロ金利政策導入から1年半が経過した2000年8月に0.25%の利上げに踏み切りました。しかしその結果、日本経済は失速し日銀は再度のゼロ金利政策と量的緩和を余儀無くされました。その後、日本は失われた10年を彷徨う事となります。
需要が喚起されて発生する物価の上昇は正常なインフレです。これに対しては中央銀行の利上げが効果的に働きます。
しかし、財政不安によって国債金利が上昇する場合は、中央銀行は既に金利の制御権を失っています。
① ゼロ金利政策と量的緩和で過剰に資金が供給されている。
② 失業率が高止まりし、需要は低い。
③ 過剰流動性がコモディティー市場に流入し、物価上昇圧力を生む。
④ 通貨が下落して、輸入コストが増大し物価上昇圧力が高まる。
この様な状況でさらなる利上げを行えば、実体経済に与える影響は図り知れません。中央銀行は金利決定の主導権を失ったまま、債権市場が金利を決定する事態に陥ります。
国債金利の上昇を抑える為に中央銀行が国債を直接買い入れ、通貨を増刷すれば、さらなるインフレが発生します。これこそが不況とインフレが同時進行するスタグフレーションです。
■ 資本流出がインフレを抑制していた日本 ■
日本を例になぞらえると、「日本は20年間もデフレ基調だったのだから、アメリカもデフレになるだろう」という方も多いと思います。
しかし、日本は日銀が量的緩和で資金を供給する一方で、その資金は有効に国内市場には還元されていませんでした。
① 円キャリートレードの発生。
② 貿易黒字を企業が内部保留。
③ 企業の内部保留が、海外投資として流出。
④ 老人を中心とした預金を金融機関が海外で運用
⑤ 政府の米国債買い入れ
日本の資本流出の最大の原因が、国内金利の低さでした。
郵貯や国内の金融機関が日本国債を買い支えた為、日本では国債金利が群を抜いて低く、資金の海外流出を加速していました。
■ 金利を抑制できない米国 ■
現在アメリカの国債金利は既に上昇し始めました。
アメリカ国債の多くを海外の投資家や金融機関が保有しており、米国財政が持続不可能と判断すれば、米国債の売り圧力はさらに高まります。
バーナンキがどんなに強がりを言っても、FRBは既に金利を制御出来なくなりかけています。
■ 危機は米国発 ■
日本の国債危機に私も警鐘を鳴らしてきましたが、日本国債が単独で危機に陥る可能性は5年以内には低いと思われます。
日本国債の危機は、必ず米国発で訪れます。
米国債が暴落して、日本の海外債権が消失した時、GDP比200%という国債発行残高が日本国民に襲い掛かります。
日本国債が単独で暴落するのであれば、預金の減少や、国債の入札状況である程度の予測が可能です。
しかし、米国債の暴落は予測不能です。
① 格付け機関が一気に米国債の格付けを引き下げる
② 米国政府がいきなりデフォルトを宣言する
③ アメロなど、トンデモ通貨がいきなり現れる
④ 中東や東アジアで戦争が勃発する
・・・引き金は全て、彼らが握っています。