■ 先進国のインフレ率の鈍化 ■
各国中央銀行の緩和的金融政策にも関わらず、先進国のインフレ率は低迷しています。原因は単純です。
1) 労働分配率の低下
企業は株主の欲求を満たすべく、固定費である賃金を抑制し、配当や自社株買いによる株価上昇を選択する。結果的に賃金は抑制され、購買力が低下し物価を抑制する。
2) 製造業からサービス業への産業構造の変化
先進国は新興国や途上国に比べ賃金が高いので、製造業が国外へ流出する。結果として製造業よりも賃金の低いサービス業へのシフトが起こり、所得が押し下げられて物価を抑制する。
3)高齢化の進行
日本のみならず先進国では高齢化が進行しており消費を抑制する。
4)社会保障費や税負担の増加
高齢化によって若年層の社会保障費や税負担が増加し、消費を抑制する
これらの現象は程度の差こそあれ先進国で等しく進行しています。一方で新興国から安価な製品が輸入されるので、さらに物価が抑制されるというスパイラルが発生しています。この現象のトップランナーに居るのが日本です。日本は移民を受け入れず、有効な少子化対策も打ち出す事が出来なかったので、デフレ圧力が他の先進国に比べても高い。
■ インフレ率で利上げタイミングを測ると資産市場がバブル化する ■
中央銀行は利上げのバロメータにインフレ率を使用していますが、インフレ率が抑制が抑制される状況においては低金利が長期化します。一方で過剰に供給され続ける資金によって不動産市場、株式市場、債券市場、現物市場はバブル化します。
中央銀行も当然これらの市場の動向に目を光らせている訳で、利上げをちらつかせながら、市場が過熱するのを抑えます。
■ 適性な価格を見つけられなくなった市場 ■
現在の世界はリーマンショック後の金融緩和バブルの最後の時期にあります。ダウ平均株価が市場最高値を更新しましたが、もはや株価は企業業績など反映しておらず、FRBの利上げ観測や、ECBや日銀の量的緩和の行方にのみ敏感に反応しています。
でえから、通常、株価に有利なインフレ率の上昇や、失業率の低下は利上げの要因となるのでネガティブの反応を示しています。最早、市場は景気のバロメーターの役割を完全に失っています。
これは非常に危険な状態で、「適正価格」を見つけられなくなった市場は、一旦調整が始まると適正価格を越えてオーバーシュートします。
ここまでの話は市場参加者の多くの共通の認識ですから、一旦下落が始まると我先に売り抜けようとする事で、バブルの崩壊規模はさらに拡大します。尤も、賢い人達はとっくに資金を引き揚げている頃ですが・・・。