■ 出来高の長期の変動から妄想する市場の気持ち ■
投資家は相場の短期の動きに一喜一憂しますが、投資など無関係な私は長期の動きで妄想を膨らめます。
上のグラフはダウの週足の相場変動ですが、ダウがジリジリと値を上げた今年初めまでは「薄商い」の中で相場が上昇していた事が良く分かります。
ゴルディーロックスなどと言われていましたが、「居心地の良い小春日和」などでは無く、高値警戒で手が出しずらい中で、大きな売りの要因が無かっただけだという事が良く分かります。
ところが今年に入ってからは「売り」の要因が出て来た。報道やアナリスト達は「米中貿易戦争」を原因として挙げていますが、それは表面的な理由に過ぎません。
市場はFRBの利上げや日欧の緩和縮小を警戒しており、「そろそろ相場が崩れる」というバイアスが掛かっていました。だから上層相場で加熱感が無く、相場が一旦崩れると売りが重なって大きな下げ幅になります。
■ AIの気持ち ■
AIに気持ちなど無いのでしょうが、株式市場を動かすAI達が作り出す相場からは「AIの気持ち」の様なものが透けて見えます。(幻想ですが)
HFT(ハイ・フリックエンシー取引)など相場が動く時に高速で大量の売買注文を出すプログラム達は、相場が大きく動く時に「興奮」する様です。結果、値動きが荒くなります。これに個人投資家達が翻弄され、売買注文を出すとHFTの餌食になる。
■ 共振する市場 ■
物理の分野では「共振」という概念が存在します。自然界の様々な現象は「周期変動」を伴うものが多いのですが、条件が揃うと振動周期が同期して振幅が大きくなります。
ロンドンのテムズ川に掛かる歩行者専用のミレニアム・ブリッジは、開通後まもなくグラングラン揺れてしまい通行止めになります。これは、人込みを避けて歩く人の歩調が橋の共振周波数に揃ってしまった為に起きた現象です。
昨今のコンピュータプログラムを用いる取引にも「周波数」が存在している様に私は感じます。原因は各プログラムのアルゴリズムの共通性に有るのですが、市場の特定の条件で「軽い共振」が発生し、相場が大きく動く。
■ フィードバックで崩壊するかも知れない ■
「発振」という物理現象が有ります。ある現象のフィードバックが現象を拡大する方向に働く時に発生します。物理現象のパニック状態とも言えます。
〇〇ショックなどという市場のパニックは、以前は市場参加者の恐怖によって発生しましたが、コンピュータープログラムが支配する市場では、何等かの条件が重なると「市場が発振」する様な事も起こり得ます。
現在はこの様なケースに備えて「サーキットブレーカー」というルールが存在します。急激で過激な相場変動に際して、取引を停止して相場を過剰な下落から守るルールです。通常は、売買が再開された後、過激な値動きは収束に向かい、市場は沈静化します。
これは「アンプ」などの電子機器が「発振」した際に、電源プラグを抜く行為に似ています。再び電源を入れると正常に戻っている事も多い。自作でアンプを作る人達は、「発振」が起きると、フィードバックの量を少なくしたり、パラメータを調整して「発振」が起こらない様に調整します。
ただ、発振を起こし易いアンプは音が良かったりします。有名なアンプに「アンプジラ」という名機が存在しましたが、このアンプ、音に勢いが有る反面、発振し易くスピーカーを焼き切る事もしばしば・・・。
同様に株式売買のプログラムも、より稼ぐ様にキリッキリにチューンすると、市場は「発振」し易くなるかも知れません。
■ AIが相場変動をどう学習し、自身にフィードバックするか分からない ■
株式売買のAIがどの様にプログラムされているか分かりませんが、仮に「大きな値動きで稼げる」と判断したならば、プログラムは相場変動に過剰に反応する様に成長するでしょう。
まあ、個人投資家も似た様な思考の方が多いでしょうし、プロもこの手の方は少なく無い。
結局、現在の市場は人の機械の「ギャンブラー」達に支配されており、下落のバイアスが掛かった状況では、相場が乱高下し易い。
「相場が乱高下するのはバブル崩壊の前兆」と昔から言われていますが、コンピュータープログラムが市場を支配する時代でも、このジンクスは生きているのかも知れません。