■ 急落する株式市場 ■
米株を始め先進国の株式市場の下落が加速しています。それに比べ新興市場からの資金逃避が少ない様に見えますが、既に新興国から資金は引き上げられている。
日経平均は2万円割れ目前、ダウも2万ドルを睨んだ攻防になるでしょう。FRBの今年4度目の利上げを嫌気したと解説されていますが、利上げは「織り込み済み」のはずの市場が過剰に反応しています。
■ 長短金利の逆転 ■
アメリカで長短金利の逆転が起きていますが、多くのアナリストは「景気の先行きを不安視して」と説明しています。
本来、長期金利は短期金利よりも高いのが普通ですが、将来の景気が悪くなると予想される場合、長期金利は低くなります。一方、FRBが政策金利を淡々と上昇させているので、短期金利はジワジワと高くなっています。
実は長期金利の低下は、景気以上に投資環境んひとって不都合です。金利の安い短期で資金調達して、金利の高い投資で利益を上げていた市場ですが、長期金利が低下すると、利幅が圧縮されてしまいます。
■ 米国債金利の低下と長期金利 ■
長期金利の下落要因には、景気の先行き予測も影響を与えますが、米国債金利の影響も見逃せません。市場ではここに来てリスクオフ指向が高まっていますが、リスク市場を回避した資金は安全資産としての米国債に流入します。
米国10年債金利は10月、11月にピークを付けた後、最近は8月頃の水準まで急低下しています。これは株式市場の下落とリンクしています。株から米国債に資金が移動した。
本来、米10年債の金利は景気予測に左右されます。景気の先行き予測から米国債の金利が決まる。ところが、過剰流動性が支配する市場では、リスクが意識されると資金が過剰に米国債市場に流入して必用以上に金利が低下します。
長期金利は国債金利を指標としていますから、米国債金利が低下すると、それに引きずられる形で長期金利も過剰に低下します。
■ 長短金利差の縮小や、逆転に弱い金融緩和バブル ■
金融緩和バブルは、低利の短期資金を高利の市場で運用する事で維持されます。バブルが弾ける過程で、常に〇〇ショックが起こるとは限りません。
A) バブルが過熱し過ぎて、過度のリスクテイクが耐えきれなくなる
B) 長短金利差が縮小してポジションの解消が進行する
C) 低利の資金供給が減少して市場が縮小に向かう
リーマンショックはAタイプです。引き金は「低利の資金の縮小」ですが、レバレッジを掛けた過度なリスクテイクによって市場は一気に崩壊に向かいました。
今回のバブル崩壊はBとCの複合型になるかと思います。Bは現在進行中。Cは日欧の緩和縮小が顕在化する今後に発生します。これらの崩壊の過程は、比較的静かに進行します。株価がジリジリと値を下げ、ジャンク債金利がジリジリと上昇する。
どこかの時点で「最早、上昇はしばらく無い」と誰もが判断するハズです。ここから下落が加速し、相場が底抜けします。リーマンショックの様な急激な下落は起こらないかも知れませんが、下落幅は同程度になる可能性が有る。
■ 金融緩和には限界がある ■
「金融緩和の縮小によってバブルが弾けるのなら、緩和を継続すれば良い」と考える人も多いでしょう。しかし、既に日銀の資産は国債や株式やREITで十分に膨らんでいます。ECBも同様で各国の国債で資産は膨張しています。この様な状況で相場が下落に転じると、資産の棄損が大きくなり、下手をすると中央銀行が債務超過に陥る可能性が有ります。そうなれば通貨の信用が失われる。
だから、日銀と言えども、最近は国債の購入額をこっそりと減らしています。
■ FRBは何故利上げを継続するのか? ■
日欧に先立って緩和縮小に転じたFRBですが、来年中には利上げを停止すると予想されています。昨今の株安を鑑みて12月の利上げは見送るとの予測も少なく無かった。
しかしパウェル議長は淡々と利上げを継続しています。何故ならば、今利上げを停止すると市場が急速に加熱する可能性が有るから。
12月にFRBが利上げを見送れば市場はこれを好感して株式市場に再び資金が戻る事は容易に想像出来ます。しかし、それは「最後の饗宴」になる可能性が大きい。誰もが「最後の一儲け」と考えているので、相場は加速度的に上昇し、そしてどこかでバブルが一気に弾ける。
この様な〇〇ショックを避ける為、FRBは金利上昇によって市場に首をジワジワと締めながら、仮にバブルが弾けても、ショックの規模が小さくなる様に誘導している・・・。(悪い言い方をするならば、中央銀行は思う様にバブルを作り、思う様に潰す事が出来る)
ただ、それとて金利差の縮小という形で市場を不安定化させる要因にもなっています。