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乱立して「わけわからん」高齢者施設・・・裏技はあるのか?

2019-09-05 07:37:00 | 時事/金融危機
 

■ 老人ホームってこんなに高いの!! ■

介護について詳しい方で無ければ、「体が動かなくなったら老人ホームに入る」と漠然と考えているでしょう。

しかし、父の介護施設を探すにあたり、その種類の多さに戸惑いました。はっきり言って素人には「わけわからん」。


多くの人が、いざ介護施設を探す段になると、「老人ホームってこんなに高いの!!」と仰天する事になります。介護のレベルにもよりますが、入居一時金が無い場合、一般的には諸々の費用を含めて、一か月の支払いが20~25万円程度の施設が最低ランクです。


これはあくまでも「民間の介護付き有料老人ホーム」で、要介護レベルが1か2の場合です。介護レベルが上がれば、費用はもっと増えて行きます。


■ 特別養護老人ホームは直ぐには入れない ■

民間の介護施設は高いから、公的介護施設を探そうと考えるのは当然です。ところが、料金が比較的安い「特別養護老人ホーム」の入所資格は2015年の法改正で、要介護3以上。

「要介護3」というのはこんな状態です。

・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話が自分ひとりでできない。
・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作が自分ひとりでできない。
・歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分でできないことがある。
・排泄が自分ひとりでできない。
・いくつかの不安行動や全般的な理解の低下がみられることがある。


これは、誰かがサポートしなければ日常生活が送れない状態です。老人世帯などでは、自宅介護が難しい状態。

父の場合は「要介護2」でしたから、特別養護老人ホームの入所基準を満たしていませんが、仮に満たしていたとしても、大都市の近郊では長期間待たされる事が多い。5年も待ったなんてケースもざら。これは、緊急度が高い人から優先的に入所させる為で、一人暮らしの老人や、老々介護の世帯は当然優先されますし、介護レベルの高い人も優先されます。

特別養護老人ホームに入所を希望しても大都市近郊では直ぐには入れないと考えた方が良い。

■ 老健(介護老人保健施設)はリハビリと自宅での生活復帰を目的としている ■

「特養」の他に公的施設として「老健(介護老人保健施設)」がある事はご存知でしょう。老健の入所資格は65歳以上で「要介護1以上」の方です。これに該当される方は多いはず。

老健の目的は「リハビリによって回復し、自宅やその他の介護施設に戻れる様にする事」です。ですから、ある程度リハビリが進むと退所する事になります。これでは、介護施設を一つ多く経由するだけの結果となり兼ねません。(自宅介護は別)

■ サ高住(サービス付高齢者住宅)には注意が必要 ■

高齢者施設で最近特に増えているのは「サービス付高齢者住宅」(サ高住)と呼ばれる施設です。

「サ高住」は介護施設というよりは「バリアフリーの賃貸住宅」と考えた方が良いでしょう。

「サ高住」には二タイプあります。

1)一般形 60歳以上の自立あるいは経度の介護を必要とする人
      外部の介護サービスを利用する
      月額 5~25万

2)介護型 常駐スタッフが介護サービスと提供
      「特定施設」の認可が必要
      月額 15~45万

金額に開きがあるのは民間の賃貸住宅と同じで、建物が立派で立地が良ければ高くなり、逆は安くなります。介護型が高いのは、介護サービスの料金が含まれているからです。

一般形は「住居の提供」と「見守り」と「高齢者の生活相談」がメインのサービスで、これに食事の提供などが追加される場合もあります。介護サービスは、外部の介護サービスを居住者が任意で選んで利用するので、高齢者向けの賃貸住宅だと考えれば良い。

介護型(特定施設)は契約した介護サービス事業者が介護にあたり、食事や生活のケアーを提供します。介護職員が夜も常駐して、機械浴などの設備も有しているので、「介護付有料老人ホーム」との差は分かり難い。

「介護型のサ高住」は一般的には介護付き老人ホームよりも5万円程度費用が安いと考えれば良いでしょう。ただ、「住宅」なので、痴呆老人を集めてレクリエーションを毎日行う様なサービスは行われていません。(これは痴呆の進行を抑える為のレクリエーション)

介護職員の数も介護付有料老人ホーム程は充実していないので、夜中のトイレの介助が間に合わなくて転倒し骨折する危険性などは高まります。


■ 介護スタッフの負担が大きい「サ高住」 ■

最近、何かと悪い噂の多い「サ高住」。

1) 不動産業など異業種が参入して、介護サービスや訪問介護をテンコモリにして儲ける
2) 少ない介護職員で運営する為、職員のストレスが溜まり、虐待などが起きる
3) 同様に職員が少なく目が行き届かないので事故の発生率が高い
4) 介護職員が少ない施設では、要介護度が上がると退去しなければならない

この様な問題点が指摘されています。横浜で高齢者を介護職員が転落死させたもの「サ高住」です。

施設によっては、様々なレクリエーションを企画するなど、入居者に評判な施設も有る様なので、「サ高住」が一概に悪い施設と言う訳ではありませんが、施設選びに際しては注意が必要です。

知り合いは、「入居している高齢者が笑顔かどうか見れば、良い施設かどうかが分かる」と話していました。

私は職員の表情で判断しました。死んだ様な疲れ切った表情の職員が多い施設はヤバイ・・・。


■ 「介護療養型医療施設」 ■

あくまでも治療目的の医療機関とされていますが、認知症患者などを受け入れており、長期間(或いは亡くなるまで)居続ける事も実際には可能なので、糖尿病など慢性疾患を持った患者の介護施設とも言えます。

原則は、あくまでも治療が終われば退院なので、退所を強要される場合もあります。さらに、急性疾患の治療をしない施設も多いので、心不全や脳梗塞などになれば、他の病院に転院せざるを得ない施設もあります。

本来は、慢性疾患が悪化した後の「看取り」(ターミナルケアー)の施設であるハズが、ホテル並みの内装で高級老人ホームの様な雰囲気で高齢者を「集客」している病院もあります。

「介護療養型医療施設」はあくまでも医療施設なので、介護サービスは介護付有料老人ホームなどに比べ格段の劣ります。

例えば、介護付有料老人ホームの介護体制が一人の介護職員に対して要介護者が3人が最低限度(3:1)なのに対して、介護療養型医療施設は介護職員の割合は5:1です。看護職員が居るので、この割合が全てではありませんが、介護療養型医療施設はあきまでも生活の場では無く、治療の場と捉えるべきです。

介護療養型医療施設は慢性患者を囲い込み医療費を垂れ流すとの指摘から2017年に廃止が決定され、介護医療院という施設に段階的に転換されて行きます。元々、法の隙間を狙った様な施設なので、弊害も有るのですが、慢性疾患のある痴呆老人の受け皿として確実にニーズが有る事も確かです。


■ 複雑過ぎて分からない介護施設 ■

代表的な介護施設だけを簡単に紹介しましたが、この他にも「グループホーム」だとか、「ケアハウス」だとか「高齢者住宅」など様々な施設が乱立しています。

「利用者の懐具合に合わせて選択できる」と言えば聞こえが良いのですが、「高齢者を様々な業者が食い物にした結果」というのが私の率直な感想です。


高齢の親が倒れたり、痴呆が急速に進んだりして探し始める事の多い介護施設ですが、ネットなどの紹介サービスを利用しても、その違いがイマイチ理解出来ません。

結果的に、「料金」「サービス内容」「家から近い事」を優先して施設を選ばれる事がほとんどだと思います。

せっかく介護施設に入所しても、介護の体制によっては要介護度が上がって退出をせまられるケースも有ります。介護度に応じて安い施設から、高い施設に移るというのは経済的には正しい選択かも知れませんが、環境が変わる事で高齢者に与えるストレスは非常に大きい。

出来る事ならば、同じ施設で亡くなる寸前まで(死亡する時は病院というのがほとんどのケース)生活できる事が理想です。



■ 地方という選択肢 ■


東京近郊では本格的な超高齢化を前に、そろそろ「適当な介護施設」が不足し始めています。その穴を埋める様に「サ高住」の様な問題のある施設が増えています。

一方、地方に目を転じると、高齢化のピークを過ぎた地域が出て来ました。四国の一部や東北の一部で高齢者が減って、特養に空床が出て来たのです。

従来は介護保険・医療保健は地域内で完結していました。ですから、高齢者の多い地域では介護保険や医療保健の財政が非常に悪化します。老人ホームが空いているからといって、他地域の高齢者が地方の老人ホームに住民票を移して入所すると、地方の介護保険や医療保健が破綻します。

そこで法改正によって、従来住んでいた地域に住民票を置いたまま、痴呆の老人ホームのサービスを受けられる様になりました。介護保険や医療保健は住民票の在る地域のものを利用します。これなら地方に負担は掛かりません。地方の特養などでは、地域外の人の入所枠をある程度確保している所も少なく無い様です。

ただ、地方は介護付有料老人ホームが少ないので、気に入った地域に、気に入った民間の有料老人ホームが有るか・・・・これが最大の問題となります。(特養は直ぐに入所できるとは限らないので・・・)



都会の不動産を処分して、環境の良い地方の民間の有料老人ホームに入り、美味しい空気と景色を満喫した後に、介護レベルが進んだら、その場所の特養に入所する・・・。そんな選択肢も悪くは無いと考えています。


実際に父は、娘の住んでいる地域のホームに入る事になりました。入所して1週間後に覗きに行くと、楽しそうに麻雀卓を囲んでいました。


老後の生活を満喫するボケ老人と、出費の大きさに苛まれる母・・・・。人生、ボケた者勝ちという事でしょうか・・・。



本日は、私の介護施設を巡った経験から、簡単に高齢者施設について書いてみました。