■ スエーデン政府はトリアージの基準を明確にしている ■
世界で唯一、「集団免疫作戦」を取っているスエーデンですが、この方法の問題点は重症患者が短期間に増えると集中治療施設が足りなくなる事です。いわゆる「医療崩壊」が起こります。
そこで、スエーデン政府はICUへ入院する人の優先順位を定めています。
スウェーデンの日刊紙アフトンブラーデットは11日土曜、同国ストックホルムのカロリンスカ医科大学病院の文書に基づき、80歳以上の新型コロナウイルス感染者、また病歴がある60歳以上の感染者が、特別治療病棟の入院優先順位から除外されることを報じました。
この文書の内容は、「スウェーデン政府関係者が年齢グループにより特別治療病棟への入院の優先度を区別し、生存確率の高い人にICUの治療を受けさせようとしている」
1)80歳以上
2)60歳以上の基礎疾患のある人
これらの人達は、ICUに余裕が無い場合は入院の優先度が低くなります。
■ 「老人の見殺し」か「医療虐待の防止」か ■
上の挙げた高齢の方々は、新型コロナウイルスに最も感染し易く、最も重症化し易い方達です。一方で、仮に重症化した場合は、死亡率が一番高いグループでも有ります。
「老人の見殺し」と思われても仕方の無い政策ですが、実は重症化した高齢者に「優しい」政策だと私は考えます。
一般的には新型コロナでICUに搬送される患者は、だいたい呼吸困難に陥っているので先ず気管切開で気管挿管を行い人口呼吸器に繋がれます。そして強制的に酸素と空気を混合したガスを肺に送り込まれます。肺が繊維化して柔軟性を失っているので、これはかなり苦痛を伴います。
アメリカの医師は「新型コロナの患者の多くは高山病の症状に近く、酸欠で夢見心地の様な状態で運ばれて来る」と語っています。彼は気管挿管に反対して治療スタッフから外された様ですが、現在は酸素マスクの自然吸入でも充分呼吸できる事が分かっています。しかし、アメリカでは未だに気管挿管が続けられていると私は推測します。何故なら、その方が医療保険制度のメディケアから病院に支給される金額が高くなるから。これは医療虐待に等しい。
気管挿管による人工呼吸や、様々な効果も疑わしい投薬を行っても、80歳以上の高齢者や、基礎疾患を持つ高齢者が生き延びる確率は極めて低い。又、命を取り留めたとしても肺などの大きなダメージを負っているので、細菌感染などによる肺炎など直ぐにお亡くなりになる可能性は高い。
だから医療資源が足りなくなった場合、高齢者のICUへの入院の優先度を低くするスエーデン政府の政策は合理的だと言えます。その分、若い人が助かるのですから。
■ スエーデンの死者の50%は高齢者施設に入居する老人 ■
この様な政策を取るスエーデンの新型コロナウイルスの死者は現状4000人弱です。このうちの50%程度が高齢者施設に入居している高齢者だそうです。
スエーデンは「集団免疫作戦」を実施するに当たり、高齢者の自主隔離を呼ぼ掛けています。高齢者施設の老人は外出しないので、隔離された状態です。
しかし、高齢者施設の職員は封鎖されていない街で普通にマスクをせずに生活をしているので、高齢者施設へのウイルスの侵入を防ぐ事は出来ません。当然、施設内での集団感染が起きた。
この様な状況でもスエーデンの人工100万人当たりの死者数は318人で、イタリアの502人や、イギリスの465人を下回っています。
■ 医療崩壊を起こしたイタリアではトリアージは医師の判断に任された ■
ヨーロッパで最初に感染が拡大したイタリアでは、医療崩壊が起りました。イタリアは慢性的な財政難なのでICUの病床数が少なかった。
次々に運ばれて来る重症患者を前に、イタリアの現場の医師達は、誰をICUに収容して誰を収容しないかの判断を迫られます。当然高齢者の優先度が低くなりますが、イタリアは高齢者を大事にする国なので、医師達は相当なプレッシャーの中でトリアージを行っていた様です。
ある医師は「酒の飲み過ぎで病気を持っている患者と、一所懸命に生きて来た高齢者のどちらをICUに入れるかは相当に迷う」と語っています。
この様な医師のストレスを軽減する為にも、本来は政府が「トリアージの基準」を明確にするべきですが、「高齢者を見殺しにするのか」という国民の声が怖くて、政府は政治的にトリアージの基準を決める事が難しい。
スエーデンの政府が国民に信頼されているからこそ「集団感染作成」や「トリアージ」が実行できるのです。そして国民は自分自身に責任を持ち、自己判断で危険を回避しています。非常に成熟した社会なのです。
■ ドタバタだけど集団免疫作成を続けるブラジル ■
実はブラジルも集団免疫作戦を実行中です。ジャイル・ボルソナロ大統領は「このままでは経済が破綻する」としてロックダウンの様な強制的な対策を取っていません。
これに対して国際社会は非常に批判的です。メディアも「墓地に新しい墓穴が次々に掘られている」などと煽情的な書き方をして大統領を非難しています。
上のグラフの一番最後に曲線が立ち上がる薄いオレンジ色がブラジルの人工100万人当たりの死者数ですが、未だピークには達していませんが、人口100万人当たり100人を少し超えた辺りでぴーくを迎えそうです。(季節的にはこれから寒くなるので、もっと増える可能性も有りますが)
ブラジルが死者の正確な数を把握し切れていない可能性は否定出来ませんが、しかし、ヨーロッパ諸国より死亡率が低い事は確かでしょう。これは自然免疫の影響や、高齢者が少ない事などが原因と思われますが、ハイリスクの高齢者が少ないブラジルが集団免疫作戦を実行する事には合理性が有るのです。
世界にはブラジルと似た様な国は多く存在しています。それらの国ではロックダウンを実施するメリットは少ない。
■ 東アジアはもうコロナを忘れてもイイ ■
日本を始めとする東アジアは「ファクターX」によって新型コロナウイルスに社会が耐性を持っている事が確実です(認めたく無い人は一部に居ますが)。
東京も25日(本日)、緊急事態宣言の解除が発表され、明日からは段階的に自粛解除が始まります。感染の再拡大を懸念して、徐々に解除が進みますが、日本の新規感染者数の20人程度などは、世界の別の地域の新規感染者数に比べたら屁みたいな数字です。
カリフォルニアなどは1日の新規感染者数が1000人を超えていますが、既に規制が緩和され始めビーチは人で賑わっている様です。
アメリカ全土で人口は日本の2.5倍程度ですから、日本の状況はアメリカ全土で新規感染者が50人程度発生した状況と同じです。もう、一所懸命に感染者を捜しても見つからない状態が現在の日本です。(PCR検査の数に差がありますが)
韓国も少人数の感染に国民はビクビクしていますが、東アジア諸国はもう新型コロナウイルスなど忘れても問題の無いレベルまで感染は収束しています。
ただ、日本人は潔癖症なのいウイルスが持ち込まれていない病院や高齢者施設が残っているかも知れません。その様な場所で、今後、散発的に集団感染は発生すると思われますが、それが社会全体に広がる事は有りません。・・・元々、「ファクターX]によって守られていたのですから・。