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「軽い神輿内閣」・・・安倍政権を総括する

2020-09-10 10:29:00 | 時事/金融危機
 

■ 景気さえ良ければ「一発退場」のスキャンダルも国民はスルー ■

1強と言われ、4選も有り得ると言われた安倍首相。

7年続く長期政権の理由は簡単で、その間に大きな経済危機が起きなかった事。本来であれば「モリカケ」「桜」など「一発退場」となる政治スキャンダルでも政権が維持されたのは「民主党政権時代には戻りたくない」という国民の思いでした。

これ、大きな誤解があるので指摘しますが、「民主党政権時代」に景気が停滞していたのは、リーマンショックと東日本大震災という大きな危機が2回も襲った為で、この時期に安倍氏が首相であったならば「安倍政権時代には戻りたく無い」と多くの国民が心に刻んだハズです。

安倍政権はリーマンショック以降の世界的景気低迷が一段落し、世界の景気が持ち直すタイミングで発足しました。確かに、政権発足直後の大型補正予算や、日銀の異次元緩和による資産価格の上昇など、「見掛けの景気浮上策」は効果が有りましたが、一方で国民の生活が豊になった実感は乏しい。

それでも、民主党政権時代までがあまりにも景気が悪過ぎたので(外的要因によって)、国民は「今の悪く無い景気が頓挫する事を恐れる余り、数々のスキャンダルに塗れた安倍政権を肯定して来ました。

これは安倍政権に限らず、民主主義とはそういうシステムなのです。

■ 「憲法改正」が全てだった政権 ■

第二次安倍政権の目標は「憲法改正」にあったと思います。「アベノミクス」などはその為の手段に過ぎない。

私は安倍首相は「素直」な方かのだと常々感じています。信頼を置く人が「〇〇だ」と言えば「〇〇なんだ」とすんなり信じてしまう。

だから、「憲法改正は戦後日本の悲願で、これを実現出来るのは安倍政権しか無い」と言われれば単純に信じて、これを実現しようとする。いえ、憲法改正こそが自分の信念であった様に思い込む事が出来る。このシンプルな思考が私は安倍首相の魅力であり、強さなのだと思います。

「憲法改正の大儀の前にはTPPで妥協する事は些事」「憲法改正を実現する為にはトランプに尻尾を振ったって構わない」「憲法改正の為ならば、モリカケや桜で辞任なんてあり得ない」

安倍首相が憲法改正に拘ったのは、「自民党の悲願を自分が達成する」という分かり易い満足感ですが(多分)・・・・新型コロナによって憲法改正はほぼ不可能になってしまいます。

■ 経産省内閣 ■

従来日本の内閣に強い影響力を持つのは、予算配分を決める財務省でした。財務省はお金を抑える事で、他省庁にも強い影響力を持っています。

しかし、安倍内閣の特徴は、今井尚也氏を始めとする首相取り巻きの経産省出身の官邸スタッフの影響力が非常に大きかった点にあります。安倍氏の祖父の岸信介は、かつては商務省の官僚であり、戦後も通産省に影響力を持っていた。その流れで、安倍首相は経産省の今井尚也氏を非常に信頼し、今井氏は影の総理大臣とまで言われていた。

一方、菅官房長官は人事権を握る事で官僚を強く統率しており、菅氏に近い官邸閣僚も、安倍内閣において強い影響力を発揮しました。

首相や官房長官に気に入られる事で、官僚達は目的とする政策をスムーズに実行できるので、内閣と官僚の関係は「持ちつ、持たれつ」でした。今井氏は安倍氏をコントロールする事で、そして菅氏に近い官僚達は、菅氏を説得する事で、製作の実現を目指します。

官邸にコントロールされているかに見えた官僚機構ですが、安倍氏は文字通り「軽い神輿」として、そして菅氏は神輿のコントロール役として上手に使っていた感が有ります。


■ 憲法改正が不可能になり、モチベーションが保てない安倍首相 ■

持病の潰瘍性大腸炎の悪化により二度、政権の座を放棄する安倍首相ですが、今回はコロナ対策で多少の支持率の低下があったとは言え、辞任する様な事態では無かった。

しかし、様々な報道によると、安倍首相は周囲の説得も聞かず、一気に辞任の決意を固めてしまった様です。多分、憲法改正が不可能となった事でモチベーションが下がってしまったのでしょう。

■ 菅氏にシュートリリーフをさせて、後任の首相で実権を握れば良い ■

当初は岸田氏に禅譲を予定していた様ですが、二階氏と菅氏の結託によって「石破首相」というカードを切られる可能性を嫌気して、勝馬に乗る形で菅氏の後継首相を後押しする事にした様です。

菅氏も二階氏に上手く利用された感は有りますが、「令和オジサン」で国民に人気が出て以来、官邸内で安倍首相との距離は広がっており、自身の政治生命を守る為にも、首相選出馬という選択肢しか無かった。

一方、勝馬に乗った細田派(安倍氏の派閥)と麻生派は、早速、二階派を牽制して様々な手に出ている様です。先ず、注目されるのが幹事長ポストと財務大臣ポスト。安倍氏、麻生氏は二階氏を外したい所ですが・・・無理でしょう。一方、二階氏氏、菅氏は麻生氏と距離を置いていますから、麻生氏の財務大臣続投は面白く有りませ。岸田氏を起用する可能性も有るかと・・・。

老獪な二階氏の事ですから、「派閥バランス人事」の中に爆弾を仕込む可能性も十分に有ります。

一方、安倍首相は菅政権を長期化させたくは有りません。影の首相として影響力を発揮する為にもポスト菅を見越して、政権にネガティブな情報をマスコミにリークするかも知れません。

菅氏は「大衆受けするキャラ」では無いので、早くも「話せない首相」のレッテルが貼られ様としています。

総裁選は出来レースですが、本当のレースは始まったばかりです。