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窮地に陥るソフトバンク・・・悪循環の始まり

2018-12-08 09:03:00 | 時事/金融危機
 

■ ソフトバンクの通信障害 ■

先日ソフトバンクが大規模な通信障害を起こしました。

陰謀脳の私は、アメリカのファーウェイ(華為技術)潰しとの関係を疑ってしまいました。原因はエリクソンの通信基地装置のソフトウェアーの期限切れという単純なミス。全世界でこの基地装置を使っている通信事業者で障害が発生した。


■ 5Gの基地局をファーウェイと共同開発しているソフトバンク ■

アメリカはファーウェイ社とZTE社の通信機器から情報が洩れる恐れがあるとして、これらの製品を米国市場から排除する動きに出ています。日本やオーストラリア、イギリスなどもこれに追随して政府機関からファーウェイ製品を排除する方針を発表しています。

本当にファーウェイ製品にスパイ機能が有るかは分かりませんが、ファーウェイ社は世界の携帯電話基地局のトップシェアを持つまでに成長しているので、中国の電子機器メーカーの台頭を快く思わないアメリカが嫌がらせを始めたと見る方がシンプルです。

ただ、ファーウェイ排除の動きはオバマ政権時代から継続しており、トランプの対中貿易戦争で一気に加速したのかも知れません。

日本政府は今の所、公官庁など公共性の高い機関からファーウェイ製品を排除する方針ですが、今後は大学など研究機関でも使用が控えられるでしょう。尤も、これらの機関はインターネットを通じて外部と情報のやり取りをしていますから、その経路にファーウェイ製品が存在すると、ハッキングや障害が発生する可能性はゼロでは有りません。

日本ではソフトバンクがファーウェイ製の基地局を大規模に導入しており、さらに次世代の通信規格である5Gの基地局の行動開発も行っています。多分、ソフトバンクはアメリカのスプリントネクステル社の基地局でもファーウェイ製品を使っていると思われます。(以前、米議会で問題になっています)

■ 仮に米国がファーウェイ製の基地局設備との通信を拒んだら・・・ ■

アメリカのファーウェイ潰しがエスカレートすると、ファーウェイ製の基地局を利用している通信事業者との接続を遮断するなどという方針を打ち出す可能性が有る。多分、日本政府にも同様の対応を求める可能性が高いので、こうなるとソフトバンクはパニックです。

仮にファーウェイ製の基地局危機の使用を中止した場合、送受信できるデータ量が大きく制約されるでしょうから、通信障害が発生したり、通信速度が遅くなる。こうなると顧客一気にソフトバンク離れを起こします。

運悪く、12月19日にソフトバンクの通信会社の株式上場が予定されていますが、先の通信障害と、ファーウェイ製の基地局の問題がクローズアップされると株価は予想外に下がる可能性が有る。

「まさか日本政府がソフトバンク潰す事は無かろう」と考える人が多いと思いますが、アメリカの圧力に安倍政権は一切NOと言えません。ソフトバンクの抱えるリスクは過小評価できないのです。

■ 日本国内の通信事業の利益を海外に投資して拡大したソフトバンク ■

私は孫社長に個人的な恨みは有りませんし、経営者としての手腕は尊敬に値すると思っています。一方で、国内の通信事業で稼いだ利益を海外に投資する経営には疑問を持っています。

政府は携帯電話の通信料金を下げる様に要請し始める様ですが、これまで国内携帯大手の3社は市場を独占していましたので、料金を高く維持していました。結果、国民は高い携帯電話の通信料金を支払っていた訳ですが、その資金が国内での事業拡大に投資されるのであれば問題は少ない。

一方、ソフトバンクは国内の利益をスプリント社の赤字の穴埋めに使ったり、海外の大型投資や買収に使っていましたから同義的な問題が有ります。本来は利益は利用者に還元されるべきで、通信料を下げないのであれば、国内の通信の質の向上に投資するべきです。

■ 株価下落で一気に経営が悪化するソフトバンク ■

米国株価はどうやらピークアウトした様で、これからは荒い値動きで徐々に値を下げて行くでしょう。日本株もそれに連動します。

米株高を支えていたApple、Google、Facebook、Amazon(AGFA)の株価は明らかに高すぎましたので、これらの株価の下落に市場は引っ張られるでしょう。日本ではソフトバンクとファーストリテーリングが株価の牽引役でしたが、ソフトバンクはヤバそうな気配が漂います。

さらにソフトバンクはIT企業を中心の大規模な投資をしていましたから、世界的なIT株の下落が起これば損失が発生する。

こうなると国内の通信事業で稼いで世界に投資するビジネス戦略が根底から崩れます。さらに国内の通信事業も通信料の値下げの圧力に晒され、収益はさらに悪化します。

■ 15兆円の巨大な有利子負債に耐えられなくなる ■

ソフトバンクの有利子負債が巨大な事は以前から問題視されていましたが、通信事業による巨大な収益が有る限り経営に問題は無いと考えられていました。

ソフトバンクは個人向け社債の発行で資金調達もしていますが、これらの社債は金利の低い日本では人気商品でした。誰も5年後にソフトバンクが倒産するとは考えません。

しかし、株高と高額な通信料金という利益の基盤が崩れれば、巨大な利息が経営を一気に圧迫します。その気配が見えた時点でソフトバンクの株は暴落します。

ソフトバンクの個人向け社債は劣後債ですから、仮にソフトバンクにもしもの事があれば、社債は償還されないハズです。要は紙切れになる。

■ 現代の政商の最後 ■

孫社長は震災後に太陽光ビジネスを政府に持ち掛けたり、サウジアラビアの王族とつるんでファンドを立ち上げたりと、「現代の政商」とも言える人物ですが、はたして、迫りくる危機から脱する事は出来るでしょうか?

日本ではカリスマ経営者の孫社長も、アメリカでは足元を見られている気がしてなりません。株価の下落が本格化すると、お荷物のスプリント社を売却するタイミングも逸します。いえ、既に遅すぎるか・・・。

「ソフトバンクの株も社債も持っていないし、携帯もソフトバンクじゃないから関係無い」・・・そういうアナタは要注意。金融機関はあまりに巨額な資金をソフトバンクに融資しています。メインバンクはみずほ銀行ですね。



金利にのみ反応する市場

2018-12-08 08:12:00 | 時事/金融危機
 

■ 米国債金利が低下し、株価が上昇 ■

11月中旬以降の株価下落は一段落した様です。「米中貿易戦争の懸念から」などと報道されていますが、原因は一つしか有りません。金利上昇を警戒していただけ。

結局、FRBのパウエル議長が、金利の上昇は緩やかになるとの見解を示した事で、市場は落ち着きを取り戻し、米国債金利が低下し、株価が上昇しています。

■ 注意すべきは低金利マネーの供給量 ■

FRBは金利上昇に市場か過敏な事を理解していますが、一方で市場が過熱して不安定になる事も好みません。FRBはリーマンショック後に購入した国債が満期を迎えた場合、それに相当した額の国債を購入してバランスシートを維持していましたが、昨年10月より再購入する国債の額を減らし、バランスシートの縮小に転じています。

同様に日銀もステルステーパリングを開始した様で、バランスシートの拡大がピークを越え減少に転じた様に見えます。



これは市場に供給されるマネーの量が減る事を意味しており、FRBの米国債高級額の減少は、米国債金利を引き上げる形で、金利水準を押し上げています。

■ 「市場との対話」でバブルの延命を図るFRB ■

FRBは市場の反応を伺いつつも着実に金利を上げて来ました。一方で日欧の通貨供給がFRBの利上げを強力にバックアップしていた事は無視できません。

ただ、日銀にしてもECBにしても、緩和マネーの供給には限界が有ります。バランスシートがあまりに膨れ上がると、金利上昇で中央銀行のバランスシートが大きく棄損し、通貨の信用問題が発生するからです。

日欧がいよいよバランスシートの縮小に転じる時期が来た為に、FRBがあまり強気に利上げを継続すると、市場はパニックになるでしょう。そこで、パウエル長官は空気を読んで、利上げペースを緩やかにする可能性を示唆したのでしょう。ここら辺、FRBは実に「市場との対話」が上手い。

■ 注目すべきはFRBのバランスシートの縮小ペース ■

トランプがFRBの利上げを嫌う事も有り、来年の利上げは2回程度になるだろうと市場は予測しています。ただ、一方でFRBが満期国債の再購入額を減らす事でバランスシートを縮小するであろうと市場は予測しているハズです。

短期的には「利上げのスローダウン予測」で株価が回復し、米国債金利が低下していますが、これは長続きしないハズ。日米欧の中央銀行のバランスシートの縮小という、市場が最も恐れる事態が明確になれば、相場は再び下落に転じます。

FRBは「金利水準は均衡点に達した」と発表して利上げ中止で市場を安心させようとするでしょうが、一方でバランスシートの縮小を継続した場合、市場がパニックに陥る事も考えられます。

■ 永遠に膨らむバブルは無い ■

リーマンショック前と後で何が違うかと言えば、バブルの加熱感が違います。日本が大バブルの崩壊を経験した以降に、日銀の異次元緩和でも「加熱感を伴うバブル」が起きなくなった様に、陽気なアメリカ人も、臆病になっています。

一方でデリバティブ市場の規模がリーマンショック前を越えて拡大するなど、市場はバブルを静かに膨らませ続けて来ました。「冷えたバブル」という呼び名が相応しい。

「冷えたバブル」は崩壊しないのか・・・否、崩壊しないバブルなど存在しません。各
中央銀行が永遠にバランスシートを拡大出来ない以上、市場はどこかで変調を来します。



今後の相場は、「下げて上がる」展開となりますが、素人や、運用を余儀なくされるファンドなどのマネーを生贄に捧げながら、徐々にレンジを下げながら、「冷たいバブル」はどこかで終焉を迎える事でしょう。