今のご時世に革命家なんて、存在するのか? こんなファンタジーのような出来事を平田オリザはいつものタッチで綴っていく。僕にとってはファンタジーでも、彼らとっては、これはとてもリアルな日常なのだ。ノンポリの僕はこういう人たちと全く関わりがないが、今もこんな人たちはこの国にはたくさんいて、人知れずふつうの人々に紛れ込んで、秘かに潜伏しているのかもしれない。
彼らは暴力的なテロ組織ではない。しかし、 . . . 本文を読む
なんと今年で19年目。最初の年からもうそんなにもの歳月が経った。来年には20周年を迎えることになる。そんな当たり前のことに驚く。今回の作品は男(あるいは女)の不在を巡る物語。とてもさりげない。この肩の力の抜けかたが19年続いた理由であろう。いつも同じスタイルで、その都度集められたメンバーもほぼ固定。スタッフの方も完全に毎回同じ。
条あけみさんと笠嶋千恵美さんの2人が作り上げる女と男の物語はど . . . 本文を読む
この真摯な作品をしっかりと受け止めよう。今、学校の授業で、茨木のり子の詩、『わたしが一番きれいだったとき』を読んでいる。高校生の彼らとともに、空襲の日々、戦時下、戦後の時間を体験することで、10代の少女が、あの時代を生きることの痛みを自分たちのこととして、受け止めてもらうことが、目的だ。でも、それって僕だって、自分で体験したわけでもない時代の話だ。生半可な知識を受け売りしたくはないから、テキスト . . . 本文を読む
軽い小説だ。いかにも奥田英朗らしい。どこまで本気でどこから冗談なのか、わからないところが魅力の『空中ブランコ』と同じくらいのテイストだ。だが、これはちゃんと青春小説として成立している。21歳のチンピラ(一応ヤクザだが)である純平が新宿歌舞伎町で生きる姿を、敵対するヤクザの幹部のタマを取りにいくまでの3日間を通して描く。
ネットの掲示板に書かれる純平への様々な無責任な書き込み。暇な人間がこの世 . . . 本文を読む
忘れられないことがある。ある悲惨な事件のことだ。弁護士事務所を引退した男が、心に深い傷あとを遺すあの出来事を、もう一度振り返る。あれからもう何十年も経つのに、どうしても忘れられない。あの事件を題材にして小説を書こうとする。当時のことを確認するため、関係者のもとに行き、取材する。かつての職場である弁護士事務所を訪れる。そこにはあの事件を担当した女性弁護士が今もいる。彼の上司であった彼女への想いが甦 . . . 本文を読む