これは「カラフルコレクション」と銘打たれた短編集の第1弾。いつものオダさんの作品とはひと味違った仕上がりになっている。とても穏やかで、優しい。もちろん、僕はいつもの重くて暗くて、不条理なオダタクミ作品の方が好きだけど、これはこれで悪くはない。カンパニーのメンバーの原案を元にして集団創作していく、という今回のスタイルもいい。そして役者たちは、この20人ほどで満席になる小さな空間(谷町 . . . 本文を読む
このタイトルがとてもヘン。そして、ここに収録された18の短編は、みんなそれぞれとてもヘン。ほんのちょっとのヘンが重なっていき、気付くと、ヘンばっかりで、何が何だか。
例えば表題作。葬儀の話ではないし。死んだ父親が知り合いの女性に、妻と娘のことを頼むという手紙を送ったから、彼女は彼の娘と月に2回会う。それを続ける。ただそれだけ。ぼくの死体はどうでもいいし。妻は無視。
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原発を人質にとって(原子力発電所は人ではないけど)テロを行うクライマックスから一転して、たった一人の少年が、年上の恋人と過ごす夜の時間まで、とても静かで寂しいこの小説を読みながら胸がいっぱいになる。人間って何なのだろうか、と改めて思う。
2045年、北関東の小さな町に核処分場が作られることになる。戦後100年を迎える日本は、再び戦争に突入していく。そんな時代が背景 . . . 本文を読む
プロトテアトル『MARCH 行進曲』
とても爽やかで気持ちのいい作品だ。大切な人の死を通して、生きる道を見失ってしまった男が、友人たちの助けを借りて再生していく姿を描く、なんて書くと、なんかベタで臭いヒューマンドラマみたいだけど、それを象徴的な舞台空間で、こういうふうに抽象的に描くと、なんだかとても素直に受け入れられる。
主人公の男は、どこにいこうとしているのか、わからない道の . . . 本文を読む
唐組は唐十郎が唐十郎を演じるセルフコピーだった。しかし、唐十郎が抜けてしまった今、唐十郎を演じるのは久保井研となり、彼が演出も兼ね、唐組の屋台骨を支える。しかし、そこには確かに今も本家本元の唐十郎がいる。幻の唐十郎を背負って、今年も唐組が大阪にやってきた。ここをスタートにして花園神社を経て全国を巡る。
25年ぶりとなる『ビンローの封印』はとてもシンプルな幻想劇で、 . . . 本文を読む
3月から4月にかけて見たDVDの中で、特に興味深かった3本について少し触れる。これ以外にも、忙しくて見たままにしている映画や小説がたくさんあるけど、何も書いてない。せめて少しでもメモしておきたい。
1本目はタイのティワット・タラートン監督作品『すれ違いのダイアリーズ』。海上小学校を舞台にして、生徒たちとたった一人の2人の先生との日々を描く。前任者と . . . 本文を読む
『何者』の続編。短編連作によるアナザーストーリー。最近よくあるパターンで、『何者』の主人公たち(あれは群像劇だった)を別々にして、主人公、または脇役に設定しての6つのお話。前作を読んでからかなり日が経つから誰が誰だかあまりよくはわからない。だから、ほとんど単体の短編を読む気分。でも、それぞれ面白いからいい。
タイトルロールの『何様』は企業の面接官を主人公にした話で、就活をする大学 . . . 本文を読む