このタイトルがとてもヘン。そして、ここに収録された18の短編は、みんなそれぞれとてもヘン。ほんのちょっとのヘンが重なっていき、気付くと、ヘンばっかりで、何が何だか。
例えば表題作。葬儀の話ではないし。死んだ父親が知り合いの女性に、妻と娘のことを頼むという手紙を送ったから、彼女は彼の娘と月に2回会う。それを続ける。ただそれだけ。ぼくの死体はどうでもいいし。妻は無視。
他の17編も、みんなそんな感じ。えっ? ってくらいのできごとが描かれ、何が何だか、というレベル。でも、とてもヘンなのに、そのさりげなさがなんかとてもいい。変人、川上弘美らしい。
『土曜日には映画を見に』の57歳の独身オタクと35年間男とつきあったことなしの女性の見合い結婚の話なんて、究極。全く何も起きない。それがなんだか、とてもヘンで、いい。いずれのエピソードもちょっぴり寂しかったりもするけれど、いずれもそんなモノかな、と思う。そのなんだかなぁ、というところに心惹かれることになる。