3月から4月にかけて見たDVDの中で、特に興味深かった3本について少し触れる。これ以外にも、忙しくて見たままにしている映画や小説がたくさんあるけど、何も書いてない。せめて少しでもメモしておきたい。
1本目はタイのティワット・タラートン監督作品『すれ違いのダイアリーズ』。海上小学校を舞台にして、生徒たちとたった一人の2人の先生との日々を描く。前任者と現在の2人の先生。彼(ら)は、前任者である彼女の残した日記を通して出会う。だからふたりは直接会うことはない。だが同じ生徒たちを通して通じ合う。なんだかほのぼのした映画で、昔の映画を見ているような懐かしい気分になる。
2本目は日本映画で、新人監督の力作。安川有果の長編デビュー作『ドレッシング・アップ』。
これは父と娘の話。彼女のクラスメートへの暴力衝動がお話の核になる。それは正義感からの行為なのだが、エスカレートしていく自分を抑える事ができない。そんな彼女に対して父親は無力だ。彼女の行為のリアリティ。他者に対しての過剰すぎる暴力をこんなおとなしそうに見える少女が犯す意外性。父親を演じた鈴木卓爾もいい。
もう1本はいつものウディ・アレン作品。昨年の新作『教授のおかしな妄想殺人』。こんなタイトルだけど、コメディではない。生きることに対して投げやりで無気力な男が正義からの殺人を通してやる気を取り戻す、という話。前半は面白いのだが、お話の核心に入ったところから、つまらなくなる。そんなことで生きる勇気が湧いてくるとは思えないからだ。嘘くさい。だいたい人はこんなことで人を殺したりはしない、と思う。彼を好きになる2人の女たちも、なんだかパターンすぎて、リアルじゃない。だけど、80歳を過ぎても毎年新作映画をコンスタントに作り続けるウディ・アレンは凄い。