まぁ、なんとなく新刊の棚に並んでいて、通勤時の文庫本が欲しかったから借りた。読みやすいようなのでとりあえずお持ち帰りしてダメならすぐ返す。そのくらいのスタンスで読み始めた。
知らない人だ。作家らしい。調べたらミステリー作家。2021年に「このミステリーがすごい!」大賞(賞金1200万円!)でデビューしたという事だ。このタイトルは向田邦子の『父の詫び状』を意識したタイトルだろうか、なん . . . 本文を読む
この短編集を一気に読むことはできない。たった5ページの短編ひとつひとつがあまりに濃密すぎるから、いくつか読んだらお腹いっぱいになって、本を閉じる。
寂しい話ばかりが続く。たったひとりの時間。人生の晩年。帝国ホテルという非日常は人生から切り離された特別なもの。そこで過ごした時間の記憶、そこで過ごす時間の切実さ。それがここにはいっぱい詰まっている。
42篇の半分くら . . . 本文を読む