宮崎駿引退後、さらにはスタジオジブリ自体の長編映画からの撤退の後、この作品がジブリ映画として公開される。オランダのアニメ作家とジブリが組んだ合作映画だが、81分の地味な作品だ。監督のマイケル・デュドクドゥ・ヴィットは短編での実績を認められてこれが初長編作品になるらしい。高畑勲のお墨付き。もうそれだけで地味な作品になることは必至だ。
登場人物は3人。無人島に漂流した男が、そこでひとりの女(亀の化身)と出会い、愛し合い、子供を授かり、ともに生き、やがて、老いて死ぬまでのお話。一切セリフはない。モノトーンの映像も寡黙だ。シンプルなストーリーで、淡々と彼らのたどる歴史を描く。
見終えた時に残る想いは、生きることの切なさ、儚さ、愛おしさ。ひとはひとりでは生きられない。誰かと寄り添い、お互いに支え合い、生きていける。そんな当たり前のことを声高にではなく、静かに描いた。いつものジブリとは異にする様相を呈し、でも、生命の根幹に触れる姿勢は変わらない。とても大切なものを伝えるために、この小さな映画はある。
絶妙なバランスで語られる。なぜ、カメが彼に拘ったのかも、説明はない。人を好きになるのに理由なんかいらないように。何も言わないから、すべてが伝わる。そんな映画だ。