ケネス・ブラナー監督、主演によるアガサ・クリスティ原作のポアロシリーズ第2弾。前作である『オリエント急行殺人事件』よりずっと面白い映画に仕上がっている。ロケーションが素晴らしい。まず、豪華客船での連続殺人までの前半がいい。そこまでは観光映画としても楽しめる。
冒頭の若き日のポアロの戦場でのエピソードもいい。ここは本編に至る前の導入部分だが、一気に作品世界に引き込まれる。(まるで別の映画みたいだが)モノクロで描かれるこのシーンから一転して鮮やかなカラーになり、エジプトに。ピラミッドの前のポアロの姿を見せて本題のお話に入る。その手つきは鮮やかだ。
さらには後半。第1の殺人が起きたところからはお話は一気に加速する。ポアロが乗客たちと面談してやがて犯人を暴くまで。ここからは時間しっかり推理ものである。全体の構成も適切で、娯楽映画としてお見事。
劇場公開時はコロナ禍で何度も延期になった不幸な作品。せっかくのよく出来た映画が残念ながらまるでヒットしないうちに公開が終わった。