もう明らかに『テルマ&ルイーズ』のパクリのタイトル。ここまであからさまなオマージュは普通ならしない。パロディの域に達している。このカバーのイラストも凄い。まるで劇画タッチ。
しかし本編は必ずしもパロディとは言えないような内容で『テルマ&ルイーズ』を踏襲しているわけではない。先日見た映画『緑の夜』も『テルマ&ルイーズ』で、先日読んだ宇佐美まこと『誰かがジョーカーをひく』もそう。最近『テルマ&ルイーズ』は大流行。4Kによるリバイバル上映も始まる。
まぁ、今流行りのシスターフッドものなのだ。70歳になるふたりの女が家出してふたりで新しい人生を始める。映画のような破滅に向かう旅ではない。ふたりは別荘地に侵入して空き家で暮らす。そこでの生活を通してさまざまな人たちと出会い、新しい人生が始まる。ラストのさらなる旅立ちも心地よい。照子が瑠衣の後悔をきちんと落とし前をつけるためにここに連れて来たというオチもいい。
さらには、お話はエピローグで新しい町で出会った高校生の旅立ちまでも描く。ずっと我慢していた照子がきっちり夫を捨てるのも気持ちがいい。
井上荒野がこんな爽やかな小説を書くなんて意外。前半つまらないから、これは失敗かと思ったけど、我慢して最後まで読んでよかった。犯罪小説だと思っていたから後半まさかの展開になって、びっくり。なんとハートウォーミングなのである。