大林さんは、時に自分の映画が、バランスを崩してしまうことも厭わない。その結果、この映画はギリギリのところで失敗している。本作は、伊勢正三のヒット曲からイメージした第2弾である。前作『なごり雪』がよかっただけに、これはとても残念な出来だ。
貧乏だからといって、今時「わたしと援交しませんか」なんて、言う女子高校生ですらない、20歳過ぎの女の子なんていない、と思う。まずこの設定に退く。なのにそこを基点にして、お話を強引に作り上げていこうとする。これは無謀だ。
44歳の男(筧利夫)が、今から22年前に別れた女性のことを思い出す。彼は自分がしてしまった過ちを若い世代にはさせまいとする、なんていうお話自体が、いらぬお世話だ。自分が愛した女性が、命と引き換えに産み落とした女の子(鈴木聖奈)が、今21歳になっていて、あの頃の自分たちと同じような状況にいることを知る。彼は彼女と付き合いながら、彼女の母親と過ごした日々を回想する。彼女は、彼と付き合いながら、同郷の男の子(窪塚俊介)とのことを考える。
この2世代の物語。あまりに作られすぎたお話なので、ここにリアルさを求めるべきではない。しかし、心情的なリアルさすら、抱けないまま終わってしまうのには参った。
07版『転校生』も、映画の後半、一美の死を巡る物語になっていくところから、バランスを崩していく。あの時も危なかった。ギリギリで踏みこたえたって感じだ。今回はそのラインを完全に踏み越えている。
これはあくまでもお話でしかない、と分かっていても、この2時間の現実ではない『お話』の世界に入り込めないままでは、この映画は成立しない。筧利夫と清水美沙という大人の話にも、子供の話にも感情移入できないのが辛い。
『なごり雪』は50男の感傷になんとか付き合えたから、面白く見れた。若い頃の恋というストレートな構造で、回想と現実という区分が明確だったので見やすかったが、今回は、まだ20年ほど前というあまりに生々しい時代の話であるだけでなく、あの頃の自分たちと同じような2人を現実の時間に置いて、彼らの物語と、自分たちの物語を展開させていくという構造が困難だった。すべてをお話として見せるには生々しいし、リアルでない。現実の時間と回想の時間とのバランスも悪い。
この現代に貧乏な若者たちの恋を映画にするなんて、それだけでも凄すぎる。(貧乏な若者がいないとは言わないが)
筧が、かっての恋人の夫に会いに行き、2人で彼女の事をしみじみ話する、なんてのもどうだかなぁ、と思った。(ストーリー的には必然性はあるが)
ワンポイント・リリーフの三浦友和(『なごり雪』は彼が主演だ)がとてもいい。彼の話として、全体を作れば別の映画になるが(というか、それが『なごり雪だが)』、筧がなぜ会社をやめなくてはならないのか、という部分にもう少し説得力が欲しい。そのためにも、友和の描写がもう少し欲しい。このままでは、自分の人生に決着をつけるにしても、話自体に説得力がなさ過ぎる。
根本的な問題は自分の人生を振り返るには、40代前半は中途半端に若すぎるということなのかも知れない。大林さんは何故こういう話を作ろうと思ったのか、そこに必然性が感じられない。しかも、あまりに感傷的過ぎるこの歌のイメージに忠実になることで、映画としての広がりも損なわれた気がする。
貧乏だからといって、今時「わたしと援交しませんか」なんて、言う女子高校生ですらない、20歳過ぎの女の子なんていない、と思う。まずこの設定に退く。なのにそこを基点にして、お話を強引に作り上げていこうとする。これは無謀だ。
44歳の男(筧利夫)が、今から22年前に別れた女性のことを思い出す。彼は自分がしてしまった過ちを若い世代にはさせまいとする、なんていうお話自体が、いらぬお世話だ。自分が愛した女性が、命と引き換えに産み落とした女の子(鈴木聖奈)が、今21歳になっていて、あの頃の自分たちと同じような状況にいることを知る。彼は彼女と付き合いながら、彼女の母親と過ごした日々を回想する。彼女は、彼と付き合いながら、同郷の男の子(窪塚俊介)とのことを考える。
この2世代の物語。あまりに作られすぎたお話なので、ここにリアルさを求めるべきではない。しかし、心情的なリアルさすら、抱けないまま終わってしまうのには参った。
07版『転校生』も、映画の後半、一美の死を巡る物語になっていくところから、バランスを崩していく。あの時も危なかった。ギリギリで踏みこたえたって感じだ。今回はそのラインを完全に踏み越えている。
これはあくまでもお話でしかない、と分かっていても、この2時間の現実ではない『お話』の世界に入り込めないままでは、この映画は成立しない。筧利夫と清水美沙という大人の話にも、子供の話にも感情移入できないのが辛い。
『なごり雪』は50男の感傷になんとか付き合えたから、面白く見れた。若い頃の恋というストレートな構造で、回想と現実という区分が明確だったので見やすかったが、今回は、まだ20年ほど前というあまりに生々しい時代の話であるだけでなく、あの頃の自分たちと同じような2人を現実の時間に置いて、彼らの物語と、自分たちの物語を展開させていくという構造が困難だった。すべてをお話として見せるには生々しいし、リアルでない。現実の時間と回想の時間とのバランスも悪い。
この現代に貧乏な若者たちの恋を映画にするなんて、それだけでも凄すぎる。(貧乏な若者がいないとは言わないが)
筧が、かっての恋人の夫に会いに行き、2人で彼女の事をしみじみ話する、なんてのもどうだかなぁ、と思った。(ストーリー的には必然性はあるが)
ワンポイント・リリーフの三浦友和(『なごり雪』は彼が主演だ)がとてもいい。彼の話として、全体を作れば別の映画になるが(というか、それが『なごり雪だが)』、筧がなぜ会社をやめなくてはならないのか、という部分にもう少し説得力が欲しい。そのためにも、友和の描写がもう少し欲しい。このままでは、自分の人生に決着をつけるにしても、話自体に説得力がなさ過ぎる。
根本的な問題は自分の人生を振り返るには、40代前半は中途半端に若すぎるということなのかも知れない。大林さんは何故こういう話を作ろうと思ったのか、そこに必然性が感じられない。しかも、あまりに感傷的過ぎるこの歌のイメージに忠実になることで、映画としての広がりも損なわれた気がする。