この1ヶ月で見た映画の中で、一番残念だったのが、この映画だ。ずっと以前、(たまたま)原作を読んだとき、これは実に映画向けの題材だ、と思った。今という時代の気分がきちんと捉えられてある。未来に向けてのひとつの答えがしっかりと提示できる、と思った。なのに、出来上がった映画は、安易なラストに向けて失速する。
ヤマモトという男の謎解きがこんなにも陳腐なものになっていることに、唖然とした。
彼の中にある痛みが描かれない。不在になることで見えてくる姿が浮き彫りに出来なかったのはなぜか。そこはただの謎解きではないはずなのに。
成島出監督が撮ったのに、どうしてこういう事になったのか、僕には理解できない。軽さと重さのバランスが不自然になったのが、最大の敗因なのだが、難しい。キーマンである福士蒼汰が自分の闇の部分を担い切れてない。だから、主人公である工藤阿須加が、胸を張って仕事やめるという部分が生きない。ちゃんとストーリーはなぞってあるのに、感動には至らない。