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映画・演劇のレビュー

『TAP THE LAST STAGE』

2017-06-27 21:59:26 | 映画

 

水谷豊、40年越しの夢の実現。ひとりの映画監督の誕生は、今の時代、どうということない日常の一コマになってしまったが、昔はそうではなかった。70年代、撮影所から監督が生まれることがなくなり、まだ自主映画からどんどん新人が排出されることもなかった不毛の時代、長谷川和彦は『青春の殺人者』で映画監督になった。そのとき、主演した同士が若き日の水谷豊だ。あの映画との出会いは多くの人たちの人生を狂わせてしまうほどの衝撃だった。たった1本の映画がすべてを変えてしまう。もちろん水谷豊にとっても人生最大の出来事だったはずだ。

 

今、ちょっと頑張れば誰にでも映画は撮れる。そんな時代になり、それでも映画をリスペクトする水谷豊は40年の人生を賭けて1本の映画を撮る。それは目の前で偉大な映画監督長谷川和彦の誕生を見たからではないか。それだけの覚悟がなくては、映画は作れない。あの時、まだ20代の青年だった水谷より、長谷川は少し年上の兄貴だった。(確か29歳のデビューが話題になった気がする)

 

それから40年以上の歳月が流れた。(長谷川はご存じの通り、その後『太陽を盗んだ男』を作り40年近く沈黙したままである)

 

ようやく『TAP』の話である。いろんなところで話題になっているように、ラスト24分(と、いろんなところに書かれてある)に及ぶパフォーマンスは圧巻である。タップダンスのショウなんて生まれて初めて見たけれど、圧倒された。

 

しかし、それだけにドラマ部分の弱さが目に付く。中心となる5人のダンサーたちのドラマをもっとしっかり見せて欲しかった。彼らと主人公である水谷豊との関係性がもし緊密に伝わってきたなら、これは凄い映画になったかもしれない。『フェーム』やせめて『コーラスライン』のレベルまでは行って欲しい。

 

水谷豊は自分を中心としたドラマを作るつもりはなかったのだろうが、彼があの伝説のダンサーを演じた以上、そうならざるを得ない。すると、映画全体のバランスが悪くなるのは必定だ。水谷が抑えた演技で熱演すればするほど、映画自体が空回りする。なんだか、とても悔しい出来の映画になった。

 

 


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