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映画・演劇のレビュー

『ラストプリンセス ~韓国帝國最後の皇女~』

2017-06-30 21:38:23 | 映画

 

ホ・ジノ監督の新作なので、何があっても見る。昨年夏、韓国に行った時、上映していたので、見ようか迷った。字幕なしでは理解に苦しむだろうと、わかっていても一刻も早く見たい、とも思ったが、大事な映画を中途半端に見るのはもったいない、と断念した。やはりあの時はやめていて正解だった。この映画は、僕には字幕無しでは難しい。きっとこの複雑な人間関係が理解出来なかったことだろう。

 

朝鮮王朝最後の皇女がたどった波乱の人生をドラマチックに描く歴史大作。ホ・ジノ向けの映画ではない。前作のラクロ原作『危険な関係』も彼らしくないと、思ったが、今回もそう思う。初期の2作品(もちろん『8月のクリスマス』と『春の日は過ぎゆく』だ!)があまりに素晴らしすぎて、あれを頂点にして低迷している。しかし、彼がこの困難を極めた大作映画を手がけたことには意義を感じる。


10代で、日本に連れてこられ、38年間、国に帰ることが出来なかった彼女の苦しみ、望郷の念、切なる故国への想いが胸に沁みてくる。戦争の時代に皇女として生きること、自分のためだけではなく、朝鮮人全体のことを考え、彼らを守るために生きなくてはならないこと。1917年から25年、そして終戦、という波乱の中で、王室の人間として日本に人質に取られ、生きた。ようやく帰ることが出来ると思ったとき、故国から入国拒否される。

 

1961年から始まる。消息を絶った彼女の行方がわかり、ある新聞記者が、彼女を探しに東京に行くところから始まる。昭和36年の日本を描く部分がとてもいい。本当なら回想を入れずに、そこだけで1本の映画を作って欲しいくらいだ。でも、それは不可能だということはわかっている。これは商業映画であり、歴史大作であるこの作品の方向性は決まっているからだ。

 

だが、精神病院に収容され、死んだように過ごす日々を描く部分をもっと見たかった。そこから彼女の人生を描くことも出来たはずなのだ。終戦後、入国拒否され、最愛の娘を自殺で失い、それでも生きた彼女の日々を中心にして映画が作られたなら、これは傑作になったのではないか、と夢想する。詮無いことだけれど。

 

 


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