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映画・演劇のレビュー

カラ/フル 『ゲームの続きは赤い部屋で』『足跡の名前は紅い朝顔』

2017-07-02 07:32:34 | 演劇
カラ/フル・コレクションその2は舞台を阿倍野長屋に移して、チ-ムカラー(ってなんや? 僕が勝手にそう命名しただけ。というか、今回の企画がそういう企画なのだけど)は「赤」(紅)。前作は谷町空庭「青」(灰色含む)だったけど、この2本セットの企画がそれぞれ2本立てという遊び心が楽しい。
 
場所に合わせて芝居を作るというのも面白い。芝居を楽しむ、というのはそんないろんな楽しみ方がある。今回の2会場は僕がたまたまどちらも初めてだった、ということもあったのだが、知らない場所を旅する楽しみもあり、けっこういろんなドキドキがあり、よかった。JR南田辺駅は初めてではないけど、民家をそのままで使い、劇場ということにしたこの「阿倍野長屋」という場所は初めてで、地図もなく、たどり着けるか、かなりの冒険だった。チラシを見たときに書いてあった「西口3分」、という記憶だけを頼りに行く。前回はチラシを持って行ったのに、かなり迷ったのだから、今回7時20分に駅到着で、5分前到着は素晴らしい。
 
 
 
古い民家の6畳間が舞台。客席は隣の6畳間。間取りは前回のビルの一室と同じくらいか。空間をそのまま使い、再利用というのもいい。リノベーションというと、大胆にアレンジしたり、改装したりして、無駄なお金をつぎ込む場合もよくあるけど、そんなお金があるのなら新しいものを作る方がいいのではないか。こういうまんま、のよさで(お金もないし)いい。
 
芝居はこの空間をそのままセットに見立てて、作る。ある部屋が舞台となる2本。最初の2人芝居は、古いゲームをしている女のところに、死者が訪れる話。彼女が殺した女だ。女は、毎年、7月1日にやってくる。彼女がその女を殺した日だ。ラストで説明が入るのが惜しい。わからないままでよかったのに、と僕は思う。短編の面白さは、理解に苦しむけど、なんだか雰囲気だけで押し切られても嫌な気分にならないでいられる、ところにある。オチのなさがその作品の魅力になることが可能だ、ということ。長編ではそれをすると、観客を置いてけぼりにする。短編ではやれる。もうひとりの死者である彼女たちが愛した男の存在も、もっと不可解でいい。ここにはいない彼は最初からいなかった、でも構わない。30分という上演時間が、微妙で設定だけでは終われない。
 
2本目も同じような設定。待つ女の話だ。最初に登場する老女。終盤登場する男。いずれも存在しない。ひとりの部屋でひとり語り。それをみつめる。彼女の想いに寄り添う20分間。10分短いから、こちらは設定だけで終われる。
 
連続上演される2本を通して、僕たちはこのかって誰かが住んでいた「民家」に宿る気配を感じる。この芝居はそれだけでも、成功だ。個人的な話だが、まるで、門真のおばあちゃんが住んできた家を訪れた時のような懐かしさを思い出した。

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