TV東京制作のドラマ。北川悦吏子、脚本。廣木隆一監督。主演は妻夫木聡と渡辺謙。ロードムービーになっている。ファンタジーではないけど、あり得ない話。だけどまるでリアルじゃないこんな話で最後まで引っ張る。
描きたかったことはわかるし、これはこんな甘い話でいい。だって主人公の渡辺謙はあと3か月で死ぬと余命宣告されたから。しかも、痛みは治まることなくどんどん加速する。残りの時間のカウントダウンを待つより早く死にたいと願うのもわかる。
さらには、体の痛みと心に痛みではどちらがより痛いか、なんてわかるわけもない。妻夫木聡の医師は心を病んでいる。死にたいほどに。だから渡辺謙の患者を死なせて、自分も死ぬ。そんなふたりの終わりに向かう旅。
それは末期ガンの患者と医師という立場を超えた関係になる。もちろん恋愛ではない。(このふたりの恋愛物語って想像できない!)
これは終末医療についての提言でもある。延命治療をどう受け止めるか。これから高齢化社会がますます広がっていく中、これまでのやり方がどこまで通用するかは疑問がある。新しい対応が必要。看取りの治療は必ずしもいいとは言えないだろうが、従来のやり方では無理なことは事実。ターミナルケアではなく、今いる高齢者の実情を踏まえた彼らにとって幸せな晩年の手助けをする医療機関の必要性をこの作品は示唆する。
ここに描かれるふたりのあり方は夢のような話である。あり得ないご都合主義の幸福なエンディングでしかない。だけどこんなふうに最後を迎えれたらいい。現実は過酷だが、映画はこんな夢でいい。
TV放送時にはカットしたところを補って完全版を配信で公開する。限りなく映画に近い作品になる。もちろん劇場公開は可能だし、そうすればこれは映画として認識される。もちろんそれだけのクオリティはある。