今はやりの「お仕事小説」だ、と本の帯には書かれてあるけど、そうじゃない。まずこれは明治時代の女の子が初めて仕事を持ち、家から飛び出して、外の「世界」に出る話なのだ。その点が一番大事。まぁ、それが今の時代ではお仕事小説と言われるジャンルになるのかもしれないけど、なんだかそういうふうに言われると不思議な感じだ。でも、あえてそういうふうに言おうと思う気持ちはよくわかる。古臭い話ではなく、描かれることは新鮮で、楽しい。
江戸時代から明治時代へ移り変わり、世の中がてんやわんやしていた頃が舞台となる。16人の女の子たちが単身富岡製糸所に赴き、いろんなことを体験しながら成長してくお話だ。昔の話なのに、とても新鮮で女の子たちはまるで今の子たちのように生き生きしているのが魅力なのだ。
なんだかNHKの朝ドラなんかで、やっても良さそうな話なのだ。女の子たちが頑張ってひとつの時代を切り開いていく様が爽やかに描かれる。友情とバトル。富岡製糸場を舞台にして、新しい時代に挑む少女たちの群像劇にもなる。主人公の「恋愛を取るか仕事を取るのか」ラストの究極の選択もドキドキさせられるし、そうくるか、と驚かされる。何から何まで、みずみずしい。