ジョン・ファブロー監督は全編CGでこの映画を作った。でも、アニメではなく、実写だ。主人公の少年以外はみんなCG。ジャングルもCG.そんな作り物の世界なのに、それがこの映画では効果的なのは、これが絵空事だからだ。ファンタジーの中のリアルをこの空間が体現している。だいたい動物たちがしゃべる映画である。リアルになるはずはない。少年は狼に育てられ、狼少年となるなんていう設定を実写で見せるなんてそれ自身に無理がある。だが、この嘘くさいCGジャングルでなら、可能なのだ。
バカバカしい映画ではなく、このあり得ない世界を楽しみながら、少年と彼の勇気ある冒険を堪能できる。バカバカしいなんて思わずに、子供に戻って、驚きの体験をすればいいのだ。
翌日見た『フィッシュマンの涙』は、残念な映画だった。『ジャングルブック』のように徹底してファンタジーに出来たのならよかったのだが、中途半端なリアルが映画を損なう。新薬投与で魚人間になってしまった男のお話、なんてあのコスチュームでやられても乗れない。