今日見た2本はどちらも老人問題を扱っていて、これらを続けて見たのはハードだった。自分も認知症気味の母を抱えて、彼女の現在と寄り添っているから、これは他人事ではない。
前者は喜劇というパッケージングで、ソフトに高齢化社会の諸問題を扱う。老齢に達した山田洋次が自分たちの問題として取り扱う。かなりきついことを描く。笑わせるのんきな映画のように見せながら、見ていられないくらいに悲惨なドラマに真正面から取り組む。小林稔侍演じる老人は、73歳。一人暮らし。家族もいない。生活は苦しく、その日暮らしの状態。主人公の橋爪功の高校の同級生。
孤独死の問題を扱いながらも、対面に理想的な幸せ家族を配置する残酷。この構図を嫌み無く見せるのは、かなり難しい。しかも、「喜劇」と銘打つ。喜劇に死は御法度ではないか。大胆にもほどがある。だから、これは山田洋次でなくては不可能なのだ。
前半、まるで寅さん映画のような展開で、笑わせる。(なんと橋爪功が老人寅さんになっているのだ!)このシリーズは老人版『男はつらいよ』なのだと、タイトルからして明記している。80代に突入した山田洋次が、この国の未来に対して、自分の想いをしっかり伝えようとする。3作目が楽しみだ。
後者は、小林政広監督と仲代達矢のコンビの第3作。タイトル通り『リア王』を下敷きにして、老人問題を扱う。こちらも孤独だ。ボケが進行して、自分を見失うこともある。かつて日本を代表する役者として活躍したが、20年前に引退。しかし、今も、演じる事への執着はある。
ラスト、ひとり、海辺でリア王を演じる姿を延々と見せる。とてもわかりやすい映画だが、見ているのはキツい。自身を投影したような役柄をほぼ全編出ずっぱりで演じる仲代を見ているだけで満足する、とでも言いたいところだけれど、しんどい。