昨夜は名月で、きれいな満月を楽しめた。TVでは次は7年後とか言ってたけど、7年くらいならまだ生きているから見ることが可能だろう。
たまたまこの本を昨夜から読み始めた。2020年の夏のお話である。コロナ元年だ。今、すべてを奪われたあの年の物語を綴る小説が大挙して出版されている。僕たちはあの年感じたことは忘れてはならないだろう。先日の川上弘美に続いて今回は辻村深月。500ページに渡らんとする大作である。
3組の子供たちが主人公だ。別々の場所の3つの話が同時進行していく。茨城県の高校生亜沙。天文部員。渋谷の中学生真宙。サッカーが好きでジュニアチームに入っていたけど、中学生になり理科部に。五島列島の旅館の娘、円華。吹奏楽部だが、誘われて天文台に通う高校生。この3人の話がコロナ禍の2020年春から夏にかけて描かれる。もちろん彼らの周囲の仲間たちも。
別々の3つの話はやがて、天文活動を通じてつながる。夏のイベント、スターキャッチコンテストだ。3つの場所をつないで、コロナ禍の中、彼らの大切な夏が始まる。
こういう小説が僕たちは読みたかった。辻村深月さんは書きたかった。一緒になってあの年の夏を考える。最悪だったけど、あの夏を生き抜いたことを思い出す。僕にとっては教師として最後の夏だった。高校3年の担任をしていた。彼らの未来を守るために何ができるのか。いや、何もできてない歯痒さを感じる日々だったけど。
この作品の子どもたちが眩しい。もちろんサポートする大人たちも。みんながあの夏を走り抜けた。そんな記憶をたどる。
エピローグの翌年まで。まだコロナ2年の2021年だ。今もまだコロナは続く。だけど、彼らは自分たちの人生を生きる。誰もが唯一の中高生という大切な時代を生きる。コロナは関係ない。