山本正志監督の新作が公開された。相変わらずデンジャラスで混沌。表面的には静かな映画だが、内容はそうではない。お話自体もストレートではなく、右往左往する。その揺れ幅の大きさが彼らしい。興味の赴くままに、どんどん横滑りしていく。
新興宗教の話なのだが、あきらかに怪しい教団で、でも、そんなのに、人々はしっかり騙される。映画を見ながらこんなに簡単に人は騙されないのではないか、と思うけど、このアバウトさが実はリアル。
いいかげんな宗教団体でも、信者さえ信じたなら、真実になる。でも、そんな真実はいらない、というのが本音である。でも、彼らはそんなものにすら縋る。なんだかなぁ、であろう。でも、こんなものなのだ。
教祖は普通の女の子で、在日。彼女が故郷である済州島に行き、そこで、見たものを吸収して本物のシャーマンになろうとすると、いんちき宗教団体は瓦解していくことになる。そんなよくある皮肉な展開も、意図的であるのではなく、成り行きに見えるのが、山本監督の力か。行き当たりばったりの展開は実に刺激的。このいいかげんさにこそ、彼の活力がある。興味の赴くまま、どんどん横滑りしてもいい。どこにたどりつくのかすら、わからない2時間9分である。
ただ、この破天荒な映画を見ながらも思いのほか興奮しない自分に驚く。こんなむちゃくちゃな映画なのに、腹も立たないし、感動もしない。なんだか、へんに冷静なのだ。今、映画というものが世の中に溢れすぎてなんでもありになり、いろんな刺激に対して無感動になっているのかもしれない。それって、なんだかやばい。