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映画・演劇のレビュー

劇団往来『きょうの雨 明日の風』

2008-11-30 11:50:55 | 演劇
 藤沢周平の短編を3本アレンジして長編化した(脚本は吉永仁郎)作品。往来初の世話物時代劇らしい。なんと本格的に鬘をかぶった芝居でさすが往来さんです。やることが半端ではない。もちろんセットも本格的でこの舞台美術(坂本雅信)を見てるだけで満足できそうな作品だ。

 だが、見ていて芝居自体はあまり感心しない。それってちょっと困る。肝心要の部分が駄目では浮かばれない。演出の要冷蔵さんは役者だから個々の役者たちへの配慮はよく出来ているが、芝居全体の構成力がない。エピソードがただの細切れにしかならない。見ていてその単調さについていけなくなる。もっと畳かけるようなダイナミックさがなくては芝居としては成立しない。3つのお話を並行してみせるというのは台本の構成の問題だが、この台本を再構成するのが演出の腕の見せ所であろう。なのに、台本に忠実になぞっていくばかりだ。

 山田洋次が『たそがれ清兵衛』で同じように3本の別々の短編をアレンジして見せた手口の鮮やかさは、この芝居のチームもきっと参考にしたはずなのに、出来た芝居では、ただの串団子のような見せ方しかできなかったのは残念でならない。

 どこかにポイントを絞り込みそこをもう少しじっくり見せるべきだった。主人公を3等分して、オムニバススタイルでみせるだなんて全く芸がない。話自体も藤沢周平でなくてもオリジナルで十分書けそうなくらいにありきたりだ。静かなタッチで淡々と見せようとしたのは正解だったが、それだけでは退屈な芝居になってしまう。もう少し演出に仕掛けがなくてはつまらない。

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