『佳代のキッチン』の原宏一の新作。このタイミングで出版されるのは、ちょっとあまりにタイムリー過ぎて出版の時期はかなり考えたのではないか、と思う。今年の2月に書き終えて、そのあとあんなことが起きた。
南米アマゾン川の「ポロロッカ」のように多摩川が逆流して洪水になり、町が流される、という噂を巡る7つの短編連作である。この作家らしいハートウォーミングなのだが、震災の直後のこの時期にこれはちょっとなぁ、と思う人もいるだろう。だが、作品はよく出来ているし、問題はないはずだ。それぞれのエピソードが上手くリンクしていき、噂を巡るそれぞれの動揺や、噂を通して、生じるドラマが見事に描かれていく。とても読みやすく、家族について、いろんな側面から、ちょっと考えさせられる。
全く根拠のない噂話が独り歩きして、地域の人たちに強い影響を与える。それぞれの現状の中で、それぞれが皆このままではダメで、もう一歩踏み出さなくては、と思っていた。そんな人たちが、この噂話を引き金にして自分たちのあり方と正面から向き合い答えを出していく。彼らにはきっかけが必要だったのだ。何かが肩を押してくれたなら生きられる。それがこの洪水という噂であり、そこから生じる危機感が彼らは後押しした。
きっかけがあれば可能になるいろんなことがある。それを7つのケースとして、この小説は描いてくれる。とても勇気の出る小説だ。たわいもない中間小説だ、と言えばそれまでなのだが、読み終えるとほっとした気分にさせられる。悪くはない。
南米アマゾン川の「ポロロッカ」のように多摩川が逆流して洪水になり、町が流される、という噂を巡る7つの短編連作である。この作家らしいハートウォーミングなのだが、震災の直後のこの時期にこれはちょっとなぁ、と思う人もいるだろう。だが、作品はよく出来ているし、問題はないはずだ。それぞれのエピソードが上手くリンクしていき、噂を巡るそれぞれの動揺や、噂を通して、生じるドラマが見事に描かれていく。とても読みやすく、家族について、いろんな側面から、ちょっと考えさせられる。
全く根拠のない噂話が独り歩きして、地域の人たちに強い影響を与える。それぞれの現状の中で、それぞれが皆このままではダメで、もう一歩踏み出さなくては、と思っていた。そんな人たちが、この噂話を引き金にして自分たちのあり方と正面から向き合い答えを出していく。彼らにはきっかけが必要だったのだ。何かが肩を押してくれたなら生きられる。それがこの洪水という噂であり、そこから生じる危機感が彼らは後押しした。
きっかけがあれば可能になるいろんなことがある。それを7つのケースとして、この小説は描いてくれる。とても勇気の出る小説だ。たわいもない中間小説だ、と言えばそれまでなのだが、読み終えるとほっとした気分にさせられる。悪くはない。