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映画・演劇のレビュー

『導火線』

2011-12-29 09:20:16 | 映画
 ウイルソン・イップがドニー・イエンとコンビを組んで作った入魂の一作。昨年、一昨年と連打した(僕は今年に入ってようやく見たのだが)『イップマン』二部作(日本公開は今年だ!)の前に2人が作ったのがこの作品だ。本邦未公開作だった刑事アクションなのだが、ドニー人気で浮上した。ここで2人は、たわいもない刑事ものの枠内で、ある意味、肉体を使ったアクション映画の限界に挑んでいる。

 特に後半の怒濤の肉弾戦は凄まじい。ドニーがこの1作に賭けた熱意が痛いほど伝わってくる。話自体は単純で、オープニングは派手だが、その後は退屈するくらいだ。しかも、陳腐なお話で、まるで台本もなく撮影していた7、80年代の香港映画に戻ったような安っぽさである。それってこの作品が香港の中国返還直前を舞台にしていることも、影響しているのだろうか。ということは、これはわざとこういうふうに杜撰に見えるチープさを狙っているのか。刑事ものなのに、カンフー映画というアンバランスも、とてもじゃないが現代感覚ではない。昔懐かしい香港映画テイストに挑戦したということにしておこう。

 それにしてもドニー・イエンは凄い。これは彼だけを見るための映画だ。肉体と肉体とがぶつかり合い、骨が砕け肉が軋みような肉弾戦。ドニーにしかできないようなアクションのオンパレード。(若い頃のジャッキー・チェンに匹敵する)これを見ていると、これこそが香港映画の本領なのだと思わされる。本物のアクションを見せたかったのだろう。CG全盛の現代では見られなくなったアナログでシンプルな力強い映画は見ていてしっかり胸に沁みてくる。

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