シリーズの第4作であり、完結編だ。コロナ禍の2020年を舞台にして、しばらく休業を強いられていた佳代が再起動する姿を描く。今まで彼女がかかわってきた人たちの元を訪れ、そこでの彼らの現状を描きつつ、彼らがコロナによってどんな苦境にあり、そんな現状とどう向き合っているのかを久々に再会した佳代とのやり取りを通して描いていく。確かに完結篇らしい展開だが、登場人物が多すぎてその結果お話がどうしても中途半端になり、読んでいてもどかしい。そこには今までの作品と違い、新しい出会いがあまりない。どうしても前のお話の後日談に近い形になるからだ。
先の3作品の総決算であり、最後は新しい出発に至るのだが、なんだか歯切れが悪いのは、よくある完結編と同じで、そこまでで広げた風呂敷を無理やり収めようとしている印象が残るところだ。同窓会的なお話は、ファンサービスにはなるけど、新機軸にはならない。この小説が素敵だったという過去に記憶の再確認のためになら、読む必要はなかった気がした。
もちろん、小説自身はとても読みやすいし、読んでいて楽しい。5つのお話で、300ページに及ぶ作品だが、あっという間の出来事だった。そこでの佳代ちゃんの頑張りを目撃できるのはうれしい。アランとの再会から結婚に至る幕切れも完結篇ならではのサービスだろう。
いつだって、約束なしで、訪れて、偶然からさまざまな人たちとふれあい、友好を交わしていくというなんだか都合の良すぎるお話の展開は、まぁ、リアルとは言えるはずもないけど、そこは寅さん(もちろん『男はつらいよ』ですね)と同じでお約束だ。旅と食を中心にして、日本中を走り続けるキッチンカーという題材の面白さは、マンネリにはならないけど、さすがに最初の驚きはもうない。ここらで幕を引くというのも納得だ。でも、いや、だからこそ、ここで総集編を展開するのではなく、もっと攻めの姿勢を見せて欲しかった。リアルタイムの今、敢えて「コロナ禍」を中心に据え挑む以上、そこにもう少し違うドラマを展開できなかったものかと、惜しまれる。