吉田浩太監督の映画を3本連続で見た。たまたま見た『うそつきパラドクス』がなかなかチャーミングな作品だったので、他の作品も、と思い3本連続で見たのだが、3本ともテイストの違う作品でそれぞれ面白く見ることができた。3本とも昔ならポルノ映画に分類されるような作品なのだが、同じようにエロを扱いながらもこれがロマンポルノやピンク映画と一線を画するのは、セックスシーンは確かにあるけど、しかも、それが目的のエロ映画のはずなのに、なぜか、がつがつしていないし、ムリして裸のシーンを入れていないところにある。
上映時間は70分ほどで.10分に1回は濡れ場を挿入したなら後は何をしてもいい、という初期のロマンポルノのルールはここにはない。吉田監督は、まず、自分の作りたいものを作ろうとしている。そして、それは「性」をテーマにはしているけれど、見世物としてのそれを描くのではなく、自分の世界を実現することが第一義であるように見える。90分という通常の上映時間にも無理はない。3本は3本とも全く違うテイストで性を扱うのもいい。
そんな中でもやはり『うそつきパラドクス』は別格だ。とても気持ちよく見ていられた。大人向けの漫画が原作のようだけど、ある種のファンタジーのようなテイストで、「そんな都合のいい話はないだろ、」とは思うけど、「映画の中ならこういう夢物語はOKかも、」と自然に受け止められる、そんな上手さと緩さがここにはバランスよくあり、ラストまで一気に見ることが出来た。
理想と現実の間で、最後はきちんと現実を受け止めていくヒロインの姿が潔い。それは事件を扱う社会派のルックスを持ちもっとシリアスに現実と向き合う『恋の病』にも言えるし、見終わったときには不満の残る中途半端な映画になった『好きでもないくせに』にもいえることだ。この冷めた目が吉田浩太の姿勢なのだろう。そしてそこが彼の映画の魅力でもある。彼女たちの置かれたそれぞれのケース、その現実としっかり向き合い、その小さなドラマの中で生じる変化を通して,彼女たちがほんの少し前進していく。それはどこに行き着くのか、今はわからないけど、このささやかな世界のかたすみで生きる女たちをきちんとみつめていこうとしている。そんな誠実さが素敵だ。
今の時代には、こんな映画も作られているのだ。なんだかとても新鮮だった。ロマンポルノがなくなって、今ではピンク映画を見ることもないけど、もし見ることがあったなら、きっとそこには今も凄い映画があるのだろう。世の中は広い。