14歳でデビューして今、17歳の高校生作家による最新刊を読み始めて、驚かされた。こんな才能がある。なんか、今という時代はもうなんでもありなのだな、と改めて思う。『蹴りたい背中』で綿矢りさがデビューした時の衝撃を軽々と遥かに超えてしまう。恐るべき作家の登場である。しかも、これがデビュー作ではなく、14歳で1冊目を出して、これでもう4冊目だというのだ。衝撃的である。
この肩の力の抜け方にショックを受けた。全く無理がないのだ。背伸びせず自由に書いて読みやすくて、楽しくて、上手い。(子どもが書いたな、という幼さはない)確かに17歳だと思わせるみずみずしさに溢れる。
ヒロインがとても魅力的で、彼女をずっと見つめていたいと思わせる。冒頭の『遠くへ行きたい』を読んだときには、「参った」と思った。こんな魅力的な少女を造形できたこと、さらには、とんでもない母親を中心にした彼女を囲む周囲の人たちの生き生きした姿、それが実に新鮮で魅力的だった。こんなにも破天荒なのに、嘘くさくない。
2話目のタイトルにもなっている『私を月に連れてって』は、主人公が彼女から2階の引きこもり青年に移ってしまって、少しがっかりしたけど、これもまた、実に上手いから納得の出来。それは彼女の母親の親友だった女性の話になる3話目の短編も同様。
この田中花実母子を中心にした世界を描く3話からなるオムニバスストーリーは、今を生きる僕たちがどうあるべきかを優しく教えてくれる。
追伸
あまりの面白さに彼女の処女作『さよなら、田中さん』と本作の前作となる『太陽はひとりぼっち』も一気読みしてしまった。読みやすいから一瞬で読める。いずれも田中花実を主人公にした連作で、さすがに最初の感動はなかったけど、14歳にして、これだけの作品をこんなにも自由に書けるなんて、やはり凄い。