「3時間20分はあんまりな長さだ。冗長で、完全に自分の世界に酔っている」だなんて言ってもいい。だが、そんな周囲の雑音に戒田竜治さんは全く耳を貸さない。(はずだ)彼はわが道を行く。何よりもまず、この自分の世界を愛しく思っている。それでいいのだ。独りよがりすれすれで作られたこの作品は、何かと異論もあるだろうが、1本筋の通った気持ちのいい作品だと思う。まずそのことを言っておこう。
この芝居はこれまで二度、上演されてきた。それだけ愛着のある素材なのだ。今回上演にあたりかなり大幅な改稿がなされている。その結果、とてもストレートで見やすい作品となった。なのに、上演時間の方は長くなっている。それは彼が思う存分この世界を堪能しようとするからだ。
作品に対する戒田さんのこだわりがこの再々演によって、ひとつの結果を出せたのはよかったと思う。だが、観客にはあまり優しくはない作品になった。全体のバランスは悪いし「ストレートで見やすい」とは言ったが、必ずしもわかりやすいわけではない。
この田舎町に舞い戻ってきた長女(サリngROCK)と、ここに留まった次女(河上由佳)。2人を中心に4姉妹の物語が描かれていく。
サリngROCKが残念だがあまり役にはまっていない。なんだか別の芝居からこの芝居の中に迷い込んできたみたいな違和感がある。とても居心地悪そうにしているのが気になった。彼女と河上さんの対決と和解が作品の核になっているのに、そこが全くしっくりいかない。だがそんな居心地の悪さはこの作品の魅力でもある。考えればこれはあらゆる意味で居心地の悪い話だ、とも言える。
トンネルの奥にある居酒屋、という設定がいい。工事が凍結されたまま放置されたこの場所はこの町自体を象徴するような場所だ。どん詰まりの場所であるそこには毎夜のようにみんなが集まり酔いつぶれている。ここに集う面々のキャラクターがひとりひとり丁寧に描かれてあり、前半はそんな彼らの群像劇のような作りとなっている。
三女(諏訪いつみ)がここを取り仕切っている。彼女を中心にしたこの前半はおもしろいのだが、芝居はそこから話を広げて行くのではなく、後半は四姉妹の話へとシフトチェンジしていく。それが話を絞り込んでいく、というわけでもなく焦点がずれていく、って感じなのだ。だがこの構成も悪くはない。記憶障害になり頭の中はずっと子供のまま同じ一日を永遠に繰り返す四女(重田恵)の話も含めてあくまでもこれはこの四姉妹の話である。四姉妹の作る宇宙が作品を支配する。
ほんというとこれは2時間以内にコンパクトにまとめることも充分出来たはずだが、戒田さんはそんな事はしない。思いのたけを余すところなく、この1本に詰め込んだ。その結果この上演時間になったのだ。そんなわがままをよしとしよう。中途半端に妥協するより、きちんと遣り残すことなく遣り切った潔さを買う。
終盤、彼らがトンネルの中に閉じ込められる。(でも彼らはパニックにはならない。その冷静さがいい。)連続変死事件も曖昧なままだ。いくつもの事態に対して明確な答えは提示されないまま芝居は終わる。大きく広げた風呂敷を上手く畳む出なく、ある意味放棄したまま強引に4姉妹の話として収斂させるのだ。これはあくまでもこの四姉妹の物語だ。それをこの町を通して描いたのだ。世界と4人が等価になっている。この町自体が彼女たちの物語でもある。そんな構成がおもしろい。
この芝居はこれまで二度、上演されてきた。それだけ愛着のある素材なのだ。今回上演にあたりかなり大幅な改稿がなされている。その結果、とてもストレートで見やすい作品となった。なのに、上演時間の方は長くなっている。それは彼が思う存分この世界を堪能しようとするからだ。
作品に対する戒田さんのこだわりがこの再々演によって、ひとつの結果を出せたのはよかったと思う。だが、観客にはあまり優しくはない作品になった。全体のバランスは悪いし「ストレートで見やすい」とは言ったが、必ずしもわかりやすいわけではない。
この田舎町に舞い戻ってきた長女(サリngROCK)と、ここに留まった次女(河上由佳)。2人を中心に4姉妹の物語が描かれていく。
サリngROCKが残念だがあまり役にはまっていない。なんだか別の芝居からこの芝居の中に迷い込んできたみたいな違和感がある。とても居心地悪そうにしているのが気になった。彼女と河上さんの対決と和解が作品の核になっているのに、そこが全くしっくりいかない。だがそんな居心地の悪さはこの作品の魅力でもある。考えればこれはあらゆる意味で居心地の悪い話だ、とも言える。
トンネルの奥にある居酒屋、という設定がいい。工事が凍結されたまま放置されたこの場所はこの町自体を象徴するような場所だ。どん詰まりの場所であるそこには毎夜のようにみんなが集まり酔いつぶれている。ここに集う面々のキャラクターがひとりひとり丁寧に描かれてあり、前半はそんな彼らの群像劇のような作りとなっている。
三女(諏訪いつみ)がここを取り仕切っている。彼女を中心にしたこの前半はおもしろいのだが、芝居はそこから話を広げて行くのではなく、後半は四姉妹の話へとシフトチェンジしていく。それが話を絞り込んでいく、というわけでもなく焦点がずれていく、って感じなのだ。だがこの構成も悪くはない。記憶障害になり頭の中はずっと子供のまま同じ一日を永遠に繰り返す四女(重田恵)の話も含めてあくまでもこれはこの四姉妹の話である。四姉妹の作る宇宙が作品を支配する。
ほんというとこれは2時間以内にコンパクトにまとめることも充分出来たはずだが、戒田さんはそんな事はしない。思いのたけを余すところなく、この1本に詰め込んだ。その結果この上演時間になったのだ。そんなわがままをよしとしよう。中途半端に妥協するより、きちんと遣り残すことなく遣り切った潔さを買う。
終盤、彼らがトンネルの中に閉じ込められる。(でも彼らはパニックにはならない。その冷静さがいい。)連続変死事件も曖昧なままだ。いくつもの事態に対して明確な答えは提示されないまま芝居は終わる。大きく広げた風呂敷を上手く畳む出なく、ある意味放棄したまま強引に4姉妹の話として収斂させるのだ。これはあくまでもこの四姉妹の物語だ。それをこの町を通して描いたのだ。世界と4人が等価になっている。この町自体が彼女たちの物語でもある。そんな構成がおもしろい。