前作『こうふく、みどりの』と2部作をなしている、ということだが、直接の関係性はない。装丁仕様が一卵性双生児のようになっているから、そう言えるわけで作者がそう位置付けなければ誰もそんなふうには思わない。
2039年と2009年。39歳という年齢。2つの時代の物語が交互に描かれていく。父親が誰なのかもわからない子供を妻が身籠る。自分は全てを許してその子を自分の子どもとして育てようと言う。それは妻への愛情ではない。ただ周囲の目を気にしていい人のフリをして生きてきた彼が妻の出産でもそのスタンスを崩さない、つもりだった。だが、そんないいひとの演技の化けの皮が剥がれてくる。彼は本当の自分の本性と向き合っていくこととなる。
アントニオ猪木のように生きる。全く顧みられなくなったプロレスの世界でチャンピオンとして生きる男。まるで異物が混入してきたように30年後の話が挟まれていく。
2つは最後に重なる。「女は穴だ」。そこから生まれ、そこに帰っていく。このあからさまなイメージを核としてこのとてもシンプルな小さな物語は綴られていく。たった160ページ。
路地裏にひっそりとあるリングのある居酒屋。というかここはジムだ。昼間はレスリングの練習をしているようだ。だが、夜はこうして飲み屋となる。大男のレスラーと小男のトレイナーが働いている。彼らが実は30年後のお話の主人公だったことは最後に明かされる。(そして生まれてくる子供との関連も、である)
彼女のいままでの小説とはタッチが違う。中年男性を主人公としていることも影響しているのか。いままでも漠然とした過去を舞台とすることが多かったが、今回は近未来だ。だが、なんだかわびしい話だ。
妻が旅したバリ島に行き、海で溺れることで自分が生まれてきたことを考える。それは妻の出産シーンとリンクする。妻はバリ島で現地の見知らぬ男に抱かれて子供を身籠った。その事実を彼は衝撃の中で受け止める。
このなんだか居心地のよくない小説は、なんだかいつまでもざわついたものを心に残す。
2039年と2009年。39歳という年齢。2つの時代の物語が交互に描かれていく。父親が誰なのかもわからない子供を妻が身籠る。自分は全てを許してその子を自分の子どもとして育てようと言う。それは妻への愛情ではない。ただ周囲の目を気にしていい人のフリをして生きてきた彼が妻の出産でもそのスタンスを崩さない、つもりだった。だが、そんないいひとの演技の化けの皮が剥がれてくる。彼は本当の自分の本性と向き合っていくこととなる。
アントニオ猪木のように生きる。全く顧みられなくなったプロレスの世界でチャンピオンとして生きる男。まるで異物が混入してきたように30年後の話が挟まれていく。
2つは最後に重なる。「女は穴だ」。そこから生まれ、そこに帰っていく。このあからさまなイメージを核としてこのとてもシンプルな小さな物語は綴られていく。たった160ページ。
路地裏にひっそりとあるリングのある居酒屋。というかここはジムだ。昼間はレスリングの練習をしているようだ。だが、夜はこうして飲み屋となる。大男のレスラーと小男のトレイナーが働いている。彼らが実は30年後のお話の主人公だったことは最後に明かされる。(そして生まれてくる子供との関連も、である)
彼女のいままでの小説とはタッチが違う。中年男性を主人公としていることも影響しているのか。いままでも漠然とした過去を舞台とすることが多かったが、今回は近未来だ。だが、なんだかわびしい話だ。
妻が旅したバリ島に行き、海で溺れることで自分が生まれてきたことを考える。それは妻の出産シーンとリンクする。妻はバリ島で現地の見知らぬ男に抱かれて子供を身籠った。その事実を彼は衝撃の中で受け止める。
このなんだか居心地のよくない小説は、なんだかいつまでもざわついたものを心に残す。