こんなにも繊細な痛みを淡々と見せ続ける映画を、見続けることは、ある種の苦痛である。2時間7分。映画をずっと息を詰めて見る。4人の女性たちの姿を追い続けることになる。目を背けたくなるような痛みが、そっけなく描かれていく。
4人の物語は絡み合いそうで、絡み合わないまま終わる。里子と秋代はちひろと塔子とは出逢うことはない。主人公4人が出逢わないまま終わる映画なんてきっといままでなかったはずだ。オム . . . 本文を読む
10年ぶりに未知座の芝居を見る。かって、アングラテント芝居を精力的に作り続けてきた未知座の芝居を見に行くのはとても楽しかった。次は何をしてくれるのかと、ワクワクドキドキしながらテントに足を運ぶ。『さよならジャパン』と『日本少年』の2本連続上演は最後の輝きとして心に深く残っている。ギリギリのところで最大限のチャレンジをする。まさにテント芝居の王道を行く傑作だった。まあ昔話をしていてもしかたない。
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次から次へと災難が起こり、自分の家に帰れない男の話というのはハリウッド映画がコメディーとしてよく使う手なのだが、警察が邪魔して何度も署に舞い戻ることになるという不条理が面白い。しかも、彼らは実は警察ではなく帰宅阻止株式会社という人たちだったなんていう展開もおかしい。
しかし、このネタバレした後が少し納得いかない。帰宅阻止(株)の人たちの行動に何の意味も感じさせず、ただのドタバタに終始するのは . . . 本文を読む
ザムザが朝、目覚めると、お金になっていた。そして、世界中で人がお金になっていく。人は死んでお金を残す。残された家族のために。
この芝居の発想の面白さはそこに尽きる。こんなふうな現実を見せながら、その事件が世界をどう変えていくのか、そこをもう少しリアルに描いてほしかった。20億を手にした青年がその使い道として何を選ぶのか、というところに話を持って行くのは悪くないが、そういうミニマムな視点から話 . . . 本文を読む
大竹野が久々に家族の問題を取り上げている。作品自体は『サラサーテの盤』に続く文芸シリーズ(そんなものがあればだが)なのだが、色川武大のことが好き過ぎて、作品や作家との距離がうまく取りきれてない。彼がかなり苦しんで作ったことが、痛いほど伝わってくる芝居になっている。
原作に描かれた父と子の話を中心にしてうまくまとめれたならよかったのだが、彼はそれだけでは納得いかなかったのである。サブタイトルに . . . 本文を読む
ブルース・ウィリスがリチャード・ドナーと手を組んだポリスアクション。これはかなり期待できると思ったのだが、いまいち乗り切らなかった。中途半端な作り方をしているからだろう。派手なアクションというわけでもなく、ドキドキさせられるようなストーリーテリングがあるわけでもない。
『ダイハード』と『リーサルウエポン』が合体したような映画ではないのだ。もちろん丁寧に作られた小味ながらもしっかりした作品で、 . . . 本文を読む
篠原哲雄監督によるファンタジー映画。すべてが夢のようであり、しかし彼の中では現実であったというスタイルは、かなり微妙で、乗り切れなかった人には、ただの夢オチじゃないかとしか思えないし、つまらないかもしれない。しかし、それを承知の上でこのあやうい映画は作られてある。
メトロという夢の電車に乗って、夢のように時間を旅する。戦中、戦後を生き抜いてきた父と母の人生を、今の現実に疲れた中年男である主人 . . . 本文を読む
去年の3月、プサンに行った時、ちょうどこの映画が上映中だった。劇場のポスターを一目見て、とても気に入ってしまい、見たいと思った。女の子が緊張した面持ちで目をまんまるにして立っている。その横には、ぽっちゃりした男の子が手を振る。二人の背後に並ぶ大人たちはみんな笑顔で手を振っているという集合写真のようなポスターである。(日本版も最終版は同じポスターを使っている。)
あれから1年と7ヶ月、よ . . . 本文を読む
とても真面目で、誠実なお芝居である。作者である逢沢ヒロオさんの人柄が滲み出たような作品になっている。作品が作者に似るのは良くあることだろうがここまでそのままなんて、微笑ましすぎる。もちろん、僕は彼の事をよく知っている訳ではない。なのにそこまで言うのは、ほんとは失礼かもしれないが、そう言いたくなる作品なのである。そして、そこがこの作品の魅力であると同時に限界でもある。
ラストシーンは、初老にな . . . 本文を読む
これは驚愕のつまらなさだ。ここまでくだらない映画を、今という時代に作ってしまうというあまりの無神経にただ、ただ驚くしかあるまい。
鈴木則文監督が天国から帰ってきて、70年代のプログラムピクチャーの添え物映画を三日ほどで撮って還ったような映画なのである。安っぽさとばかばかしさが限界を超えて同居している。リアリティのかけらもないのは承知の上だが、それにしても笑えない映画って何だ?
まず、あ . . . 本文を読む
長澤雅彦監督をメインにした6人の監督が作り上げたオムニバス作品。「夜ピク」のためのナビゲート映画であると同時にこれはこれでもうひとつの「夜のピクニック」として仕上がっている。
特に「夜ピク」のメーンキャストではない高校生たちにスポットを当てたエピソードがいい。映画の中では隠れてしまったたくさんの高校生が、あの歩行祭にはそれぞれの想いを抱いて歩いていたのだという当たり前のことを改めて教えてくれ . . . 本文を読む