11月公演に続いて今月も冨田倶楽部を見ることが出来た。彼らは今年の春からスタートして来春までの1年で10本(ほぼ毎月1本)の芝居を作り上演する、なんていう無謀なことに挑戦している。そんな冨田倶楽部の12月公演。
今回は堀江佑未の作品。演出クレジットはない、ということはみんなで相談して作っているのだろう。もちろん中心メンバーである升田さんと作者である堀江さんが(たぶん)リードしているのであろうが、台本を片手にみんなでワイワイいいながら楽しく作品作りをしている(はず)。そんな和気藹々とした気分が作品からも伝わってくる。
毎回ワンシチュエーション50分くらいのスケールで無理せず、さまざまなことにチャレンジしている(のだろう)。先月はショウダウンのナツメクニオの作品で林遊民も参戦した番外編だったが、今回はレギュラー陣による作品。基本は升田、堀江作品を交互に上演しているようだ。
前回はファンタジーだったけど、今回もまたある種のファンタジー作品だ。とあるバーを舞台にしたワンシチュエーション作品。冒頭のマスターが電話で呼び出されたことの意味があまりない。しかもラストまで彼は登場しない。だから不在の中、見習いバイトがひとりで店を切り盛りすることになる、という外枠になる設定もあまり上手く機能していないのはもったいない。
お話はここの常連だった男が半年ぶりにやって来るところから動き出す。ある事件のショックから彼は記憶を無くしている。親友は彼を思い出の場所であるここに連れて来ることで彼の記憶が戻ることを期待する。
お話は恋人を事故で亡くしたショックから彼女との記憶を忘れてしまった、というよくある設定。当然、ここで起きる奇跡によって記憶は戻るまでが描かれる。
不在のマスターの妻の話とここで起きる奇跡とをもっと明確に絡ませて描いた方がよかったのではないかと思う。妻の事故と半年前の事故、堀江さんが演じる占い師との関係も含めて、すべてのつながりがある種の奇跡として完結するというそんなまさかのドラマになっていたらよかった。絵に描いたようなハッピーエンドを楽しみたい。もっと好き放題してもいい。