劇団四季はこの台本の上演権を今すぐ買えばどうだろうか。ミュージカルとして改変し、上演したなら、きっと大成功するはずだ。これなら和製ミュージカルで、世界に向けて発信することも可能だろう。ブロードウエイでのロングランも夢ではない。
冗談抜きで、とてもよく出来た作品だと思う。2時間以上の大作なのだが、その上演時間を飽きさせることはない。堂々たる作品である。脚本はこれが長編は初めてらしい松本高誌さん。見事だ。
殺人鬼である夫が崖から落ちて、ツギハギ(田中けいこ)の心に命が灯るシーンでクライマックスを迎える。作品自体はここで終わってしまうのだが、(ここまでで1時間30分くらいだ)ここから話はさらに40分以上続く。普通あり得ない。なのに、それがおもしろいのだ。ドラマが終わっても人生は続くように芝居は終わらない。驚きである。話が終わった後で、もうひとつ話を用意するというのではない。そこまでで描いたことをさらに掘り下げていき、感動のエンディングを迎える。これでもか、これでもかというふうには、なってないけど、ぐいぐい引っ張っていく。観客の胸に迫る。蛇足と言ってもいいようなラスト40分は、結果的に作品世界をさらに深化させることに成功する。1本の作品と、じっくりむきあい、端から端までしっかりなめ尽くすような気分にさせられる。この満腹感って、なかなか出せない。重厚で、きちんと状況を追いながら、無駄がなく、痒いところにまで手が届いている。そして、完璧。
飯野智津子さんの丁寧な演出と、役者たちの細心の演技。スタッフ・ワークが一体となることで成立した奇跡の芝居である。主人公の男を演じた南出謙吾さんがすばらしい。終始おどおどした表情で、周囲を見回す。彼の不安がこの芝居をリードする。何人もの女たちを殺して、そのパーツをつなぎ合わせて完璧な女性を作り上げた男、オカハン(牛丸裕司)。彼は自分が作った命のない女を妻にして、この村に流れてきた。そして今は妻と、彼が両親と婚約者を目の前で殺したため気がふれた女ミヨリ(宮田泰羽)の3人で、ここで穏やかに暮らしている。
男はこの村に流れてきた。彼は崖で出会った女ツギハギに導かれて不思議な体験をする。自分が書いた1冊の本を抱きしめて、崖の上で震えていた彼を、彼女は家に連れて帰る。ここで自分が書いた小説がそのまま現実となるという体験をするのだ。恐怖が現実になる。男とこの家族の出会い、この村の人々との諍い。そんな中で彼の生と死の恐怖のドラマが展開する。
これは『美女と野獣』や『オペラ座の怪人』に匹敵する和製ミュージカルが出来る可能性を十分に秘めた作品である。プラネットホールの最終公演となった作品がこんなにも凄い傑作だったことを嬉しく思う。
冗談抜きで、とてもよく出来た作品だと思う。2時間以上の大作なのだが、その上演時間を飽きさせることはない。堂々たる作品である。脚本はこれが長編は初めてらしい松本高誌さん。見事だ。
殺人鬼である夫が崖から落ちて、ツギハギ(田中けいこ)の心に命が灯るシーンでクライマックスを迎える。作品自体はここで終わってしまうのだが、(ここまでで1時間30分くらいだ)ここから話はさらに40分以上続く。普通あり得ない。なのに、それがおもしろいのだ。ドラマが終わっても人生は続くように芝居は終わらない。驚きである。話が終わった後で、もうひとつ話を用意するというのではない。そこまでで描いたことをさらに掘り下げていき、感動のエンディングを迎える。これでもか、これでもかというふうには、なってないけど、ぐいぐい引っ張っていく。観客の胸に迫る。蛇足と言ってもいいようなラスト40分は、結果的に作品世界をさらに深化させることに成功する。1本の作品と、じっくりむきあい、端から端までしっかりなめ尽くすような気分にさせられる。この満腹感って、なかなか出せない。重厚で、きちんと状況を追いながら、無駄がなく、痒いところにまで手が届いている。そして、完璧。
飯野智津子さんの丁寧な演出と、役者たちの細心の演技。スタッフ・ワークが一体となることで成立した奇跡の芝居である。主人公の男を演じた南出謙吾さんがすばらしい。終始おどおどした表情で、周囲を見回す。彼の不安がこの芝居をリードする。何人もの女たちを殺して、そのパーツをつなぎ合わせて完璧な女性を作り上げた男、オカハン(牛丸裕司)。彼は自分が作った命のない女を妻にして、この村に流れてきた。そして今は妻と、彼が両親と婚約者を目の前で殺したため気がふれた女ミヨリ(宮田泰羽)の3人で、ここで穏やかに暮らしている。
男はこの村に流れてきた。彼は崖で出会った女ツギハギに導かれて不思議な体験をする。自分が書いた1冊の本を抱きしめて、崖の上で震えていた彼を、彼女は家に連れて帰る。ここで自分が書いた小説がそのまま現実となるという体験をするのだ。恐怖が現実になる。男とこの家族の出会い、この村の人々との諍い。そんな中で彼の生と死の恐怖のドラマが展開する。
これは『美女と野獣』や『オペラ座の怪人』に匹敵する和製ミュージカルが出来る可能性を十分に秘めた作品である。プラネットホールの最終公演となった作品がこんなにも凄い傑作だったことを嬉しく思う。